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『単身リスク』(山田昌弘著)  評者:小島正憲

『単身リスク』  
山田昌弘著  朝日新書  2025年10月20日

副題 : 「“100年人生”をどう生きるか」 
帯の言葉 : 「“自己責任論”を超えて闘うー。そのリスク、本当にあなたの責任ですか?」

山田氏は、本書の結論として、かつて社会の“勝ち組”と呼ばれた人々には、一つのテンプレートが存在した。“富”“家族”“社会的成功”の三つを手に入れることがそれだ。だが、“人生100年時代”の幸せは、10人いれば10通りの、100人いれば100通りの幸せのバリエーションがある。万人に共通する幸せのテンプレートなど存在しない」「“私は幸せだった”と言えるかどうかを判断するのは、他でもない“単身者”としての自分自身である。

では、単身者として人生を全うするために必要なものは何かと問いを発し、
①安心して暮らすための“収入(資産)”、
②孤独に陥らないための“仲間(友人・パートナー・家族)”、
③生きる喜びや意味を与えてくれる“生きがい(趣味・仕事)”」
と答えている。

また、「決して豪華な老後でなくてもいいのだ。けれど日々の暮らしに困らず、誰かとつながりを持ち、自分の好きなことに小さな喜びを見いだせる。そんな未来を想像できる社会であれば、100歳まで生きるのも、決して恐れるべきことではなくなるだろう」「“人生100年時代”-。その長い人生を、つましくとも豊かに生きられる社会を、私たち自身の手で育てていこう。それこそが、本書の最大のメッセージである」と書き、本書を締めくくっている。

残念ながら、この山田氏のメッセージは平凡で綺麗ごとすぎて、私にはしっくり来なかった。

本書での参考個所を以下に記す。

・「人生100年時代」では、人生の後半に差しかかる段階で、再び「自分とは何か」を問い直す必要があるのではないだろうか。

・今を生きる高齢者は、まさに「人生100年時代」に向けての過渡期を生きている。これまで「人生100年時代」を覚悟して生きてきた先人たちはいない。つまり前例もなければ、ロールモデルもいない。世界中を見渡しても、「人生100年社会」を実践してきた国家は存在しないのだ。むしろ日本こそが、世界に先駆けて超高齢社会、超長寿社会牽引していると言えるだろう。願わくは30年後、「日本のような悲惨な社会になってはいけない」と他国から反面教師にされるのは避けたいものだ。できるなら「日本ように高齢者が豊かに幸せに生きられる社会を目指そう」と羨ましがられるようなモデルケースになりたいものだ。

・あらゆる「リスク」を家族が担ってきた仕組みは、これからは機能しなくなるはずだ。「家族」にしがみついても、明るい未来はやってこない。これまでの常識、価値観、世の中の仕組み、自分の思い込み、それらを一度「リセット」する必要がある。いわば、新たに生まれ変わる「リボーン」のススメ。それが高齢者と呼ばれる60代以降に大切なことだと思っている。

・これまで同じコースを歩んできた同年代が大きく分かれるのが、60代半ば。人生第一のターニングポイントが思春期の20歳前後なら、第二のターニングポイント、第二の「自分探し」の時期が65歳前後なのではなかろうか。

・親世代とはまったく異なる「老後生活」を生きていく私たちに必要なのは、65歳からの人生を「第二の人生」とする「リボーン」(生まれ変わる)の意識を持つことだ。

今、「家族じまい」というサービスも生まれている。高齢の親とかかわりたくない中年の子が、お金を払って親との関りを断ってもらうというサービスである。

・家族にすべてを委ねる社会の在り方は、すでに限界を迎えている。今こそ、家族に依存しない、より現実的で柔軟な社会保障の仕組みを再構築する必要がある。

生まれてくる家庭を選べないのと同様に、人は生まれてくる時代も選べない。

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清話会 評者: 小島正憲氏 (㈱小島衣料オーナー )
1947年生まれ。 同志社大学卒業後、小島衣料入社。 80年小島衣料代表取締役就任。2003年中小企業家同友会上海倶楽部副代表に就任。現代兵法経営研究会主宰。06年 中国吉林省琿春市・敦化 市「経済顧問」に就任。香港美朋有限公司董事長、中小企業家同友会上海倶楽部代表、中国黒龍江省牡丹江市「経済顧問」等を経ながら現職。中国政府 外国人専門家賞「友誼賞」、中部ニュービジネス協議会「アントレプレナー賞」受賞等国内外の表彰多数。