髭講師の研修日誌(第124回)
継続の学びは知可楽なり
澤田良雄((株)HOPE代表取締役)
□40年続く主宰する話し方教室
「開講の挨拶を今回は伊藤さんお願いいたします」はい。「続いて会長挨拶は千頭和さん、どうぞ」はい。伊藤さんの開講挨拶は、時候の寒さを生かした言葉を入れ、この寒さを超えて、皆さんで熱い心持ちで学び合いましょう。と繋げたことは良き工夫ですね。」「千頭和さんの話ぶりはゆったり感が出てきましたね。この心持ちが、お辞儀がきちんとなされ、伊藤さんの話も組み入れました。皆に語りけるこの間合いもいいですね」・・。この場面は、筆者の主宰している区の生涯学習活動の「話し方教室」のスタート時の場面です。
学び合いの目的は、「心豊かに生きる話し方、聴き方を磨き、生かす」とし40年の継続となります。受講者は月1回のこの学びの機会を楽しみにしています。学び合いは、毎回、研修テーマを決め、筆者が基調講義し、スピーチ演習と進みます。
「それでは、演習に入ります。口の運動を岡本さんお願いします」「はい。それでは私がリードします。あ・い・う・え・べえ・・。」と口の動かし方を自ら見せます。「べえ!!」は舌を出します。「それでは、唱和ください。3回いきましょう」次いで全員で唱和します。リーダー役の受講者は、人に協力得る役職者ですのでその対応の支援であり、メンバーは話す気構えを強く抱くスタートアップです。
□学び合いの継続は演習を楽しみ合います
「それでは、即題1分間スピーチからいきましょう」入会時には、先輩のこの演習への話しぶりに「凄い、自分にはムリ、この会は私には向かないと想いました。」しかし・・・こうすれば良いのだ・・今回はうまくいった・・自分もできる・・今度はどんなテーマかな・・あのテーマだったこう話せるかな・・等と小さな自信が重なる現実です。継続は力なり。やればできる可能性を秘めたる自分あり。この実感です。
広げていく話しかたは、会社で、地域・友人・家族の会合でうまくいきましたとの受講者の報告の現実は嬉しい。そして、自由大スピーチ診断です。ここでは、用意してきたスピーチ、また、この場で話そうと思い立ったテーマでのスピーチを3分程度(時間は各自が決め申告する)の演習です。まず心へ事項を確認します。
1)筋道立てて= テーマに対する「こう思う」と自身の考えをズバリ→「なぜならば」とそれはなぜかと根拠・理由などを説明する→「ですからこう思うのです」と考え方とリンクするこれが単純明快な筋道→広げる「皆さんの生活、仕事、人生などにも・・」と関係づける
2)わかりやすく=適切な説明・ことばづかい。もの・資料の活用
3)感じよく=話す姿勢、表情、目線、上から目線の話ぶりは御法度
4)印象深く=強調ポイントはゆっくり、繰り返し、ゼスチャー、一言の言葉
5)簡潔に=3点あります、まず、次に、
6)ゆとりある振る舞いで=皆をみて、語りかける、です。ますで間をとる
となります。
この確認を施し、各自のスピーチに入ります。終了後、
①本人のどうだったかの感想を紹介します。準備段階の想定と実際の場対応の是非、更にこうすれば良かったとの気づき
②他の人(二人)の診断を一言願います。仲間としての目線で話ぶりや、内容への自身の考えとリンクしての感想を端的に出します
③筆者の診断で締めます、ポイントは基本事項に準じて、話の筋道、内容のわかりやすさ、話し方の感じの良さ、話す声、語調、話すときの全身の活用、目配り、話している最中の心のゆとりなどをチェックです。加えて、仲間の聴き方の継続的変化に着目します。従って、本人、仲間の感想をリンクさせ是々非々を明言し、褒めと今後への向上への改善ポイントを施します。勿論、当会での学びの重ねに考慮します。大事にする事は、誰が一番良かったかの審査でなく、各自の進化如何に着目です。
時には内容構成の支援では、即座に筆者が、本人の伝えたい意図を生かして、話された内容を組み替え、改善したスピーチモデルを示範します。これは、本人のみでなく全体への教材的活用です。更に意図していることは、人間性の変化です。それは、入会前の本人の話し方への不満足さが、自身の人間性にも要因があるからです。なぜなら、いらぬ先読みの自己否定が強い等の内的要因であったり、他人の目に映る、嫌な人、自意識の高い人、自分勝手な人、威張っている人・・の話は聴きたくないが生の人間間の話しのやりとりだからです。「誰が話しているか」これが現場の話だからです。
学習の結びは、プレゼント交換と称して、仲間による、感想を各自にプレゼントします。それは、話された話題と考え方、そして自分の類似体験による対処策を紹介します。併せて、学び合いの経過から感じた成長ポイントを褒めます。
「それでは、今回の閉講の言葉を岡本さんお願いします」ここでもいきなりの指名で
今研修の内容の確認と、学び合いの実感を紹介して。研修の締めとします。これも日常での想わぬ機会への対応力となります。
□継続する成長の確認は年末でお役立てをします
各自の学び期間、持ちうる話力、人間味は一様ではありませんから、年頭の今年の抱負を基点として、年間どのようなスピーチをされ、その成長ポイントを如何様かを
筆者が各自に総評としてプレゼントします。2025.12月の一部紹介しますと、
◎千頭和さん=今年の言葉は「意識」でした。70才後半、先輩の魅せる姿に、自分も意識して行動をする。例えば後ろ姿・・・背筋を伸ばすなど。スピーチ例は
*雪の厳しい地方で育った。学校行く道の雪かきなど大変、だからこそ雪の対応での事故のニュースは心痛む。
*前を行く女性の裾が気になった、そのとき、落とし物をした。声がけしたら「良いんですよ」と言う」「?、落としたのか捨てたのか・・、ならば一言言ってあげようと思ったがこらえた。ポイ捨てならばきちんと注意すれば良い。これをしなかった自分は・・・。と反省があります。
*近隣の桜の老木が切られた。切り口から、逞しく花を三輪咲かせている。思わず、「この子は偉い」と声がけした。自分も今後どんな花を咲かせるかと心に呼びかけました。
*浅草が変わった。売っている物が外国人相手。着物も薄っぺらなもの。自分は和服の仕事をして来ているので日本文化がどんどんどんなくなっていくのはさびしい・・。
<総評 自身の体験の事実を話材として、自身の是々非々での考をきちんと主張する話に、千頭和説の信憑性を感じます。話ぶりもだいぶゆとりがあり、表情、セスチャーや、目配りも良くなりました。筋道づくりの大枠の構成はOKです。さらに課題の見出し付けにすっきり感を付けましょう。会長挨拶を毎回観ていて、どこでも通用するレベルになったことに拍手です。>
◎山下さん=今年は「真実・誠」。人の関わりでうそをつかない。まさに本人の男気の持つ表現です。従って、スピーチでも、自身の体験を、他の人にお役だてにと全身で語ってくれました。スピーチ例は、
*歯が抜けましたが。年嵩の自然現象です。自然、春の訪れは梅が咲きます。やがて桜が咲きます。花は蜜を持っています。ですから鳥が寄ってきます。鳥のお役に立っているのです。自分はしぼみの年ですが、何かのお役に立つことを心しています。
*投資には相場があります。大豆の相場の経験もあります。一億円儲けたときもありました。この難しさは売り、買いのチャンスをどう判断するかが勝負です。もう少し下がれば、もう少しあがれば・・。人間欲との戦いとも言えます。亀有の人でも、土地持ちの人が全てを無くしアポート暮らしになった人もいます。腹八分目、何事もほどほどに・・この教えは生きています。
*グランドゴルフの成績はすこぶる良い。先日も優勝。これが成績のカードです。それだけ練習にはげむ。毎日川川辺の場所で打ちの練習。左に球が飛ぶ、ならばこう調整して打とう。そして繰り返す。
<総評 いつも楽しく、はつらつとした姿は当会のシンボルです。豊かな人生体験からの、興味のある話、考え方は仲間にとっての良き学びです。話ぶりも、形がととのい、簡潔な話にまとめ込み、又聴き手に対応した工夫もあります。ゴルフの話には、聴き手の理解レベルに少し、丁寧に説明するとより、共感を確保できますね。>
◎伊藤さん=「挑戦」が本年の言葉です。まず俳句をやってみよう。スピーチ例は、
*バス旅行で伊豆箱根にいった。夫がいなくなってから動かねばダメと一人参加。初対面の人とどのような話がと気になったが、幸い小柄な方で年下の人だった。物価が高くなりどの店が安いか等談笑も楽しかった。当会での学びのお陰。良かった事は箱根神社の階段で転ばなければと心配したが転ばなかった。御朱印もいただいた。
*東急ストアーの入り口の階段に座りアイスクリームを食べている年配の人がいた。「どうしてここで」と尋ねると、「今まで座ることができたベンチを撤去されたから・・高齢者への配慮が足らないよとの抗議です」という。なるほど、人のためにお役立てる、それは決して無駄なことではない・・高齢者への心配りは大切です。
*世田谷は街並みが良い。老木が温存され、川の流れもきれい。まさにあこがれの町です。ここでの朗読の会心が震えるほどの素晴らしい会でした・・・。
<総評 「話すことが楽しくなりました。」この一言に拍手です。小さな挑戦心による話し方への改善の成果です。持ち前の見識の豊かさと、自身の主張をきちんと持ち合わせての力が生きてます。従って、どう聞いていただけるかの聞き手側にたっての話し方を当会で学び入れた証です。表情・目配りにほほえみに近い柔らか味が加わりました。この良さを、組み立て、見出し付のすっきり感を加えていくといいですね。>
岡本さん=「丁寧に生きる」が抱負。鰹節も丁寧に削るこの心持ちを大事にします。
*今、あ、い、う、え、お、を実践しています。それは、あーそう、い=いいね、う=うんそうだね、え=笑顔、お=終わりに感謝の言葉を生かすことです。
*熊野古道を夫婦で訪れた。三つの体験がありました。それは観光、そして、美味しかった、それにハプニングです。まず観光は、楽しむ道筋は何通りかがある。自分たちは7.5K㍍、おおよそ5時間の歩行。神社、石碑、石畳・・神秘、歴史、修行、こんなキーワードが体感できました。次に美味しかったのは夫の現地友人を訪ねて頂いた桃を川縁で洗って食べた・・これが思わず「美味しい!!」でした。そしてハプニングは、温泉宿で、温泉を楽しんだ折、夫の帰室が遅いことに危機感を感じ、「まさか・・」と思いつつ、浴場に行った。勿論男性用です。(笑い)なんと入り口近くのマサージ椅子で爆睡でした(笑い・・)あれこれ思い出多き旅でした。
*田端駅付近の映画館に行った。「大きな家」のタイトルで児童養護施設のドラマです。幼児教育を仕事とする自分ゆえ、感じる事が多々ありました。18歳で社会に出る。大学、スポーツ選手・・施設で自分を抑えていた現実から自己を素直に出せる環境でぜひ・・と念じました。
*孫に恵まれた。同居での育てですが、娘の子育てには口出しをしないと心に決めています。時代と共に育児策も違いがあるだろうし、困ったときの知恵を得る方法も周囲に多くなっている。本人からの相談事には丁寧に対応はします・・・
<総評 リラックスした話し手になりました。話の構成もだいぶ定型岡して来ており、語調、表情、ゼスチャーに自然体が見えています。さらのその場で得た情報を自分の話に組み入れることができてきました。このゆったり感、応用の柔軟性は日頃の立ち位置での話し手にはだいじです。今後も、思わぬ場面(即題のテーマ、話している時のちょっと弱ったなのこの瞬間・・)この時に慌てず、困っちゃたと見せずじっくりと心をためて、かわす工夫がでると良いですね。お口の体操、笑顔のリード役ありがとうございます。> ・・・以下割愛です。
如何でしょうか。当会での学びは2~10年、年齢は50歳から80才代ですが、千頭和さんは、現在でも和服の仕事に関わり、伊藤さんは、茶道の師範として、山下さんは自治体会長、ゴルフ関係団体選手、役員として、岡本さんは幼稚園経営副理事長として活躍しています。他仲間では、技術資格講習講師、食堂経営,IE関係企業勤務、部品メーカ役員、阿波踊り連キャップ、・・での活躍の場を持った人達です。
何れにしても、「人生100年時代」最近よく聞く言葉です。そこには、単に息しているだけの他人依存の時間の重ねでなく、それなりに、自身の持ちうる能力を施し、お役に立てる機会が増えた、心豊かな人生づくりを楽しむ時代といえます。まさに、「泣いて生まれて、笑顔で成長、決め手を施し、感謝で送られる」こんな100年といえます。そのお役立てには必ず、「ありがとうございました」「おかげ様で」との感謝の言葉がかけられます。その橋渡しをするスキルが話す事です。
ですから、単に用意した原稿を巧みに演じることではありません。話を聴いた人は、理解し納得し、自身でもやってみよう、つくってみようなどと新たな楽しみを持って、実践します。継続すればやがて、「良かった、できた。うれしい!」との新たな喜びを味わいます。その喜びは、話してくれた人に「あのとき教えて頂いたことをやってみましたらうまくいきました。ありがとうございました」と感謝の言葉を掛けてくれます。「お役に立て嬉しいです」これが心豊かに生きる実生活での話し方です。学び合いの仲間からのその事実が紹介されることは講師冥利です。
□相互の継続は知可楽なりの実感です
この訴求に思いをはして主宰したのが当話し方教室です。受講者は入れ替わりはあるものの10年、20年、30年と共に継続した学び合いは、筆者にとってはお役だての有り様を常に進化させ、受講者にとってはより高める話し方の向上を重ねる現実となります。
継続は力なりと言いますが、継続は知可楽なりです。知とは経験により新たな力を付ける知恵を産み、可は新たな可能性を育み、楽は楽しくする事と意味づけられるからです。昨日の我に今日の我勝つ、今はできない、しかし明日はできる、それは、小さな努力の重ねなり、ひとつの努力は紙の薄さに過ぎない、しかし重なれば一冊の本となる。ならば今できることの最高実践、明日の最高実践は新たな学びによりスパイラルに高まります。
□ミラノ五輪の活躍に拍手・感動・そこには諦めない
第25回冬季五輪ミラ・コルデイナ大会が閉幕しました。日本選手は金5個,銀27個,銅12個のメダルを獲得されました。メダリスト始め、全選手の活躍に拍手です。
職業柄インタビューの応答に着目すると、選手や指導者、家族の言葉には多くの学びがあります。たとえば、「最高の色のメダルを取るこの覚悟で戦いました」「やったー」「悔しい」「諦めない」「自分の持つ力が出せた喜び」「失敗があってもそこから立て直しの気概を強めた」「ペアー相手のためにと心を決めた」「団体競技ではチームワークが素晴らしかった」「7年間の長い間の信頼関係です」「皆の意見を出し合い次の投球をした」「今日の結果は、私の最高の力です。他の選手がそれより勝っていた現実です」「あの選手の努力は世界一です」「宇宙一です」「4才から親と共に力を付けてきました。長い期間続けてきて良かった」「楽しかったです」「笑顔」「引退する、育成者として次世代の色の最高のメダルを取る」「悔いはありません」「指導者、家族、関係者の方々、応援いただいた方々のおかげです」・・・があります。
ここでも確認できたことは、初心の思いの実現に向けて継続した研鑽と改善を重ねてきたことです。継続は知可楽なりの事実です。そこに心豊かな笑顔があります。
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◇澤田 良雄
東京生まれ。中央大学卒業。現セイコーインスツルメンツ㈱に勤務。製造ライン、社員教育、総務マネージャーを歴任後、㈱井浦コミュニケーションセンター専 務理事を経て、ビジネス教育の(株)HOPEを設立。現在、企業教育コンサルタントとして、各企業、官公庁、行政、団体で社員研修講師として広く活躍。指導 キャリアを活かした独自開発の実践的、具体的、効果重視の講義、トレーニング法にて、情熱あふれる温かみと厳しさを兼ね備えた指導力が定評。
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