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高市政権と中韓について(真田幸光)

【真田幸光の経済、東アジア情報】
高市政権と中韓について

真田幸光(嘉悦大学副学長・教授)

 日本の高市首相率いる自民党が、2月8日に投開票の行われた衆議院選挙で465議席中316議席を獲得したことが中韓でも大々的に報じられています。
更に、中韓の関心事は、
「第二次世界大戦後、一つの政党が衆議院で憲法改正発議に必要な3分の2以上の議席を確保したのは初めてである。」
ということであります。

高市首相はこれまで憲法改正を通じて、
「戦争出来る普通の国」
への転換を何度も訴えてきた人物と中韓では捉えられています。
そして、今回の総選挙では、
「強い日本」
を掲げることで、移民対策に大きな関心を寄せている日本国民の心を上手に掴み、ポピュリズム的に動いた結果、戦後最大の圧勝を手にしたというのが中韓両国の共通した見方となっています。

 そして、特に今、移民の中でも圧倒的に目立つ、更に、
「台湾有事は日本の有事」
問題で対決状態となっている中国本土を念頭とした安全保障政策の公約の中心に掲げて高市首相は動いていたと見られています。
台湾有事に米国と共同で対応する可能性にも改めて言及したというのが中韓両国の見方です。

これに対して、中国本土は、
「レアアース輸出規制」
を実行に移すほど神経を尖らせました。

これに対して、日本もレアアースの開発や備蓄拡大で中国本土への依存度を更に引き下げる動きを示し、対抗姿勢を示しています。
更に、国家情報局と対日外国投資委員会の新設は中国本土のスパイや資本による浸透に積極的に対抗する狙いがあるだろうと中韓では見ています。
更に、防衛費をGDP(国内総生産)の2%以上に増やすことや原子力潜水艦の導入にも言及し、一気に国防力強化に出てくるとの見方、危惧が中韓両国にはありそうです。
中国本土の脅威に対抗する為、軍事力の増強を公約としたとの見方であります。

 高市首相は、
「造船業は危機の時に国を支える産業である。」
として建造量を今の2倍に増やす考えも示し、米国・トランプ政権の意向にも沿う動きを示し、
「造船大国・中韓」
は、
「眠れる獅子・日本の造船業の復活」
にも危惧を示しています。

米国は中国本土に対抗する為、韓国に軍艦建造の協力を求めていますが、高市首相も造船業を単なる産業ではなく同盟戦略など安全保障上の観点から取り組むべき分野と考え、韓国同様の動きを示し始めたと韓国もかなり神経を尖らし始めています。

 更に、
「日本の国土が中国本土製の太陽光パネルで覆われることに反対する」
として、これを理由に、懸案となっていた、原発の再稼働・拡大も公約として掲げたとの見方が中韓では出ています。

こうした状況に対して、米国紙であるワシントン・ポストは、
「高市首相は中国本土の習近平国家主席に正面から対抗し、日本人は高市首相を中心に結集している。」
とも報じたことは周知の通りであります。

これは今回の日本の選挙で最も注目すべき点の一つとして中韓は取り上げています。
 中国本土・外交部は2月9日、高市首相の衆議院選挙での勝利について、
「日本は軍国主義の前轍を踏むな」
とする警告を発しました。
更に、中国共産党系のメディアは同日、
「花に百日の紅無し」
とした上で、
「日中関係に新たな脅威を齎すだろう」
と露骨に警戒感を示してもいます。

習近平国家主席は権力を握った直後から反日を自らの政策に利用して、政権を運営してきたとも言えます。
今後は日本に対して貿易や観光分野での報復に留まらず、尖閣諸島の領有権を更に主張してくる可能性も考えられます。
韓国との竹島問題も同様ではないかとの危惧が韓国にもあります。
中国本土と日本の激しい対立はすでに予告されたようなものであるとの見方です。

 そして、
「これは韓国にとっては大きな挑戦である」
との見方が韓国では出ています。

先日、中国本土は西海に違法に設置した構造物のうち1基を暫定水域外に移動させ、日本は徴用された朝鮮人犠牲者の遺骨収容に協力していますが、これらは中国本土と日本が韓国を自分たちの側に付かせる為の動きとして韓国は認識している様子も見られます。

韓国としては、中国本土も日本もどちらも遠ざける訳にはいかないがどちらか一方につく訳にもいかないというのが韓国の認識であります。
米韓同盟を基軸に、以前から予告されていた、今の東アジアの激動を知恵深く乗り越えていかねばならないとの声が韓国からは出ています。

はてさて日本は?
既にこんなにたくさんの中国人を含む移民を受け入れている中、
「真の防衛」
を出来るのでありましょうか?

 筆者は憲法改正や防衛費増額をしても、この根本的な問題を解決しない限り、日本の自立的防衛体制は成り立たないと考えています。

 

真田幸光————————————————————
1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。84年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支店等を経て、1998年から愛知淑徳大学学部にて教鞭を執った。2024年10月より現職。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メンバー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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