日本のメディアの記者からこんな取材を受けたことがある。「中国は最近、偽ブランド品を持つ人が減っているそうですね。所得水準が上がってきたためでしょうか?」。またこんな質問もよくある。「来日中国人のマナーが悪いのは、彼らは初めて海外に来て世界を知らないからで、時間がたてば自然に良くなっていきますよね?」。
中国最前線 松野 豊 [ 特集カテゴリー ] 中国最前線
日本のメディアの記者からこんな取材を受けたことがある。「中国は最近、偽ブランド品を持つ人が減っているそうですね。所得水準が上がってきたためでしょうか?」。またこんな質問もよくある。「来日中国人のマナーが悪いのは、彼らは初めて海外に来て世界を知らないからで、時間がたてば自然に良くなっていきますよね?」。
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中国は経済大国になり、企業も技術力・収益力を獲得し社会インフラも整備されてきたため、もう外国企業の支援を必要としなくなったという人がいる。しかしそれは間違いである。確かにこの十年で中国の世界に対する影響力は格段に向上した。しかしこの国は実は国内に大きな爆弾をかかえている。資産バブル化、地方政府などの不良資産問題、急速な少子高齢化、深刻な環境汚染さらに所得格差による社会の不安定化……問題をあげると枚挙にいとまがない。
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中国経済の減速化の原因のひとつに、資本投資効率の低下がある。政府のインフラ投資が沿岸部の大都市から内陸部に推移していく段階で、必然的に資本投資効率が落ちていくからだ。
また企業の資本投資効率の推移をROA(Return on Asset)という指標で評価してみると、中国の国有企業のROAは2012年からずっと低下してきており、現在の国有企業のROAは民間企業の1/3程度でしかない。経済成長のこれ以上の減速化を防止するためには、国有企業の資本投資効率を上げるか、民間企業がもっと積極的に設備投資を行うことが必要だろう。
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本年5月、中国で「一帯一路」構想に関する大規模な国際会議が開かれた。この経済圏構想は、2013年9月に習近平国家主席が中央アジア歴訪中に初めて提示したとされ、正式には2015年3月、国家発展改革委員会、外交部、商務部が連名で「シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロードの共同建設推進のビジョンと行動」として発布されている。
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中国では、ITサービス関連のベンチャーが多く立ち上がり、サービス業を中心とする第3次産業が経済成長全体の大きな牽引役となっている。中国の経済統計は、データがきちんと取れる第2次産業(製造業)が中心であるため、最近の第3次産業の発展は、統計データに充分に反映されていないのではないかと言われる。第3次産業の中身をよく把握することは、中国経済を理解する重要な鍵である。
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このところ中国政府の政策文書は、「供給側構造改革」という言葉がやたらと強調されている。2016年12月の中央経済工作会議と、17年3月の全人代(全国人民代表大会)における李克強首相の政府活動報告、どちらも主題は「供給側構造改革」であった。
「供給側構造改革」は改革という文字が入っているが、これはいわば産業政策に属するものである。これまでのように輸出や固定資産投資のような需要に頼る経済成長方式は不安定であるため、経済成長の潜在力を高める3要素、「労働」「資本」「生産性」の質を高めて新たな需要を生み出そうとする政策である。
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中国は大気、水質、土壌など、ほとんどの環境汚染問題に直面しているが、京津冀(けいしんき)地域(北京、天津、河北省を合わせた呼称)の大気汚染問題ほど注目されているものはないだろう。
なぜなら首都北京の大気汚染は、居住する国家のリーダー層がその被害を実感してしまうという意味で、一部の社会弱者が被害を受ける環境問題とは性格が違うからだ。
京津冀地域のPM2.5大気汚染は、2012年ごろに北京の米国大使館が敷地内での計測結果をインターネットで公開し始めて汚染実態が明るみに出た。その後中国全土で汚染が確認され始めたため、中国政府は13年に「大気汚染防止行動計画(「大気十条」)を発布し、重点地域の大気汚染被害の軽減化に着手。また16年には「大気汚染防止法」を15年振りに改定し、総量規制や公害犯罪の重罰化などで環境汚染への取り組みを強化している。