谷口碩志の「会社は人から」第48回
「リーダーシップの3つの型」
谷口碩志氏 (クリエイトマネジメント協会代表取締役)
リーダーシップ研修と銘打って長年進めさせている研修会で、
「一言で言えば、リーダーシップはどういうことですか」
とよく質問を受けるときがあります。
私も会社を二つ持つ代表者として、リーダーシップを実際に取るとなると、個性が優先する時代です。
「人間は感情の動物である」のごとく、それぞれの社員の内在する心の綾を、どのように、理解し、感じ取り、対応していくか。
私自身も勉強しながら、実践しながら、リーダーシップには3つの型があることをリーダーシップ論として解説しています。
<強制的リーダーシップ>
部下あるいは集団が消極的・受動的で、指示命令を与えないと動かない組織であれば、すべての意思決定をリーダー自ら判断し、強制権を発揮し、作業の手順など全てリーダーが決定し、行わせる。
長所としては:
・短期的には仕事量の追求や高い生産性を得ることができ、仕事がはかどる。
・グループ全体が変化に対応しやすい。
・能力の落ちる者にも手順書にのっとり画一化されるため、それ相当の力を発揮させることができる。
短所としては:
・長期的には、指示命令するリーダーがいないと仕事が進まない。
・人間性の欠けるリーダーであれば、強制的であるので、不満が出てくる。
・やらされているため、仕事に対する意欲が持続できず、ヤルキを無くしてしまう。
・メンバー同士が心の結びつきが不足するため。相互に人間不信が芽生え、協調性が保ちにくい。リーダーの負担が大きい。
<放任的リーダーシップ>
部下あるいは集団に対してリーダーは関与しないで任せるという名のもとに放任する。部下は自由に行動することが可能になる。
長所としては:
・部下が、自ら仕事に取り組む事ができるので、うまく回ると仕事に満足感を持つことができる。
・仕事に責任感や、熱意を高める事ができヤルキに繋がる場合がある。個人としての能力を発揮することができる。
短所としては:
・組織としてのまとまりがなく、勝手気ままになり、調整や統制がとりにくい。
・帰属意識が低下し、組織力がなくなり、モラルも低くなり、仕事の量・質ともに低下するケースがある。
<参加的リーダーシップ>
リーダーの援助のもとでメンバー同士が討議して方針を決定する。決定の過程に部下を参画させるやり方で、民主型リーダーシップとも言える。作業の要領や手順は部下に委任せ、質問等には応じる。
長所としては:
・総合力として高い能力を発揮し、協調性は高められる。
・仕事に対する意欲や、責任感を持たせやすい。各人の業務能力を高めやすい。
短所としては:
・メンバーの調整に時間がかかり、緊急を要するときには問題が出る。
・メンバーの能力のない場合は、成果のあるコンセンサスが得られず生産性は低くなる。
こうして、リーダーシップの3つの型を分類してみますと、一見、参加型リーダーシップの型が有効なリーダーシップと思われるようですが、たとえば、職場自体が、未熟で不安定な集団の場合や、上記に記したように、緊急に意思決定を下さなければならないときは、専制的なリーダーシップで、業務を遂行しなければならない場合があります。
また、部下あるいは集団のレベルが高く、研究開発のような専門家集団の場合には、個人の能力に依存することが多く、ある程度自由な放任的なリーダーシップにより、成果を上げる場合もあります。
よって、リーダーは、常に自己向上を図り、実践、学習を重ね、相手の能力、レベル、置かれた状況など掌握する力を身に付け、部下を云々する前に、上記の三つの型を承知し、ケースバイケースで3つのリーダーシップ論から、臨機応変に リーダーシップを発揮し、組織に、個々に対応する能力を身に付けなければならないといえます。
やってみせて。
やってみせて、
言って聞かせて、
させてみて、
ほめてやらねば人は動かじ。
話し合い、
耳を傾け、
承認し、
任せてやらねば、人は育たず。
やっている、姿を感謝で見守って、
信頼せねば、人は実らず。
山本五十六(大日本帝国海軍 26・27代連合艦隊司令長官)
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谷口碩志 (たにぐち みつゆき)
昭和18年5月大阪市生まれ。昭和42年関西学院大学卒業後、3年間の商社勤めから経営コンサルタント会社へ転身。約9年間在籍、その間海外の企業実態調査のため欧米・中南米・アフリカ・共産圏・東南 •アジア諸国など40数回の渡航歴を数える。昭和53年、経営コンサル会社を創設、代表取締役に就任。
・クリエイトマネジメント協会 http://www.cmajapan.co.jp/
・谷口社長のブログはこちら http://blog.livedoor.jp/senba206/