世界に2つの「7つ星ホテル」
ジ・エンパイア・ホテル
世界には“自称”7つ星ホテルが2つある。1つはドバイにあるブルジュ・アル・アラブ。もう1つが、ブルネイのジ・エンパイア・ホテル&カントリークラブだ。
前者は、時期にもよるが1泊15万円ほどのようだ。一方、後者はせいぜい3万円弱とリーズナブルな価格で豪華な空間とホスピタリティを味わえる。今回の旅行会は、4泊すべてジ・エンパイア・ホテル&カントリークラブに泊まることにした。
かつて王族の所有物で迎賓館として使用していただけあって所々に大理石や金箔を施し、高い天井と広大な敷地、広い部屋、優雅な朝食ビュッフェ、ジャック・ニクラウス・シグネチャーのゴルフコース、海辺の風景、スタッフによる快適なおもてなしを楽しめる。ここに泊まるためだけでもブルネイに行く価値はあると思えるほどだが、厳格なイスラム教国のため、ホテルにはバーやお酒を飲む施設がない。自分の部屋の中であれば、事前に申請して350ml缶12本まで、720ml瓶2本までは持ち込める。
アルコール好きにとっては、その点だけが辛いところだ。
ブルネイの食料事情と
ローカルフード
三重県ほどの広さに約43万人、ボルネオ島のマレーシア領内に存在するブルネイは、食料自給率が極めて低い。駐日ブルネイ大使館や政府系スタッフとのミーティングでも、「食料自給率と農業従事者の人口比率」を尋ねたが、明確な数字が挙がらなかった。地続きのマレーシア(サラワク地区)やインドネシア、シンガポール、香港等から農産物や加工品等が入ってくるのが当たり前なのかもしれない。
「ブルネイは、観光を今後の重要な産業と位置付けているが、それには“ローカル”な食、産物が大事なのではないか」と質問してみる。すると、「針のない蜂のハチミツ(Stingless Bee Honey)はローカルな食材として推進している」とのこと。テンブロン地区(森林豊かな国立公園)にこの蜂は生息しているが、体が小さく、ハチミツも多く取れないので値段が高い。味は、甘いというより酸味が強く、ただ健康食品としては注目されているという。
ハラル産業のASEANにおけるハブを目指すブルネイは、農業生産量も今後は増やしていきたい意向とのことだ。
ブルネイ料理「アンブーヤット」
活気ある市場の情景
ブルネイでいただいた料理は総じてマレー系料理と中華系料理だ。レストランでもお酒を飲めないので、夕食も1時間以内に食べ終わってしまう。
「代表的なブルネイ料理は?」と問うと、「アンブーヤット」という答えが必ず返ってくる。サゴヤシというヤシの実のでんぷんをお湯で練って、竹の箸で水あめのように巻き付けソースに絡めて食べる。ソースはマンゴーや醤油ベースなど種々あるが、最もポピュラーだというドリアンソースをいただいた。ドリアンの匂いがけっこう強烈だった。
今回、朝の市場とナイトマーケットを訪れた。どちらも活気にあふれており、庶民の台所の様相だ。朝の市場では野菜、果物、穀類、干し魚等の食材が豊富に並ぶ。夜のほうは食材とともに目の前で調理したものを食べるイートインコーナーが多くなる。値段は安く500円もあればお腹いっぱいになりそうだ。
親が出店しているのだろう、市場では子供たちを多く見かけた。カメラを向けるとどの子も微笑んで応えてくれる。汲々としていないお国柄が伺える気がした。
旧モスクと新モスク
水上集落を訪ねる
イスラムの祝日である金曜日は、礼拝のため正午から午後2時まで、ほぼすべてのお店や公共機関が閉まる。また木曜日と金曜日は、イスラム教徒以外はモスクの中に入れない。私たちは火曜日に旧モスク内部を見学させてもらった。広い静謐な空間が礼拝のときは人で埋め尽くされる。
金曜日、礼拝の終わる時間に新モスクを訪れると、大勢の人がモスクから出てくるところだった。「Welcome to Brunei!(ブルネイにようこそ!)」と声をかけてくれる人がいた。外観を20分くらいかけて回るうち、駐車場に沢山並んでいた自動車は空っぽになっていた。
カンポンアイールという世界最大の水上集落を訪れた。水上と言っても土台は地中に埋まっており浮いているわけではない。暑さを避けるため暮らし始めたらしく、水上モスクもあれば消防署もある。訪問したお宅は立派で、観光客向けの仕様になっていた。
ブルネイは経済が豊かなせいか、総じて人々は穏やかで親切、犯罪も極めて少ない。そこがこの国の最大の魅力ではないか、と感じた今回の旅だった。