【特別リポート】
「2025年大阪万博開催決定に思う」
安田紘一郎(清話会関西支局長)
大阪2025年度万国博覧会(万博)開催が決定した。内容は次の通りである。
◎開催期間:2025年5月3日~11月3日(185日間)
◎開催場所:大阪 夢洲(ゆめしま)
◎テーマ :いのち輝く未来社会のデザイン
◎サブテーマ: 多様で心身ともに健康な生き方、持続可能な社会・経済システム
◎入場者想定 約2,800万人
振り返れば2016年12月に吉村洋史大阪市長、つづいて2017年12月に松井一郎大阪府知事の講演会を清話会で開催し、お二人の万博誘致にかける夢をお聴きした。
実際には蓋を開けるまで判らない状況で、各国の開催地投票の本心が読めず、一時はあきらめムードも漂う中、大阪開催が決まり両氏もひとまずはホッとされ、また、これからの開催に向けて成功へのステップを模索されていることだろう。
まずは両氏に心からお祝いを申し上げたい。
だが万博には多少心配な面もある。
まずは交通手段である。
185日間で2,800万人は1日で16万人弱の入場者、現時点でのアクセス予定を考えても、多数の参加者を呼び込む交通手段が無く、今予定の新線の地下鉄、京阪線はいずれも大阪駅や新大阪に直結してなく、不便である。早急に玄関の大阪駅から直接乗り換えなしで万博会場に行く交通手段を作るべきである。
今年は明治維新150年、あの150年前、僅か5、6年で鉄道を開通した(新橋~横浜や大阪駅)維新の先人の知恵と努力を学ばなければならない。
しかし大きな夢もある、開催場所の夢洲は大阪湾の人工島で、大阪府・市がカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致も目指している場所でもある。関西では、短期間に大きな経済効果をもたらす万博と、恒常的に運営されるIRがともに夢洲へ実現すれば、相乗効果により大阪湾岸地域の開発や活性化に大きな弾みがつくことが期待されている。
報道によれば、早速、25年万博の大阪開催が決まった日、大阪進出を検討している海外の大手IR運営事業者も祝福のコメントを発表したように、観光発展に非常に意義あることになろう。当然、大阪府・市は、万博開催に向けて前年の2024年、政府による経済波及効果はインバウンド(訪日外国人客)の増大が続き、大阪での2025年万博では約2兆円弱の経済効果を見込めると予想した。
それで予測される万博効果は2025年の開催期間は5~11月の半年間で経済効果は一過性だが、これに対しIRは、カジノに加え国際会議や展示会の会場、大型ホテル、劇場などエンターテインメント施設などが将来数十年間にわたって継続運営され、万博以後の経済効果も計算できるため、2020年東京五輪後の日本経済の考えられる落ち込みをカバーし、またそれ以上の景気経済の活性化が期待できるだろう。
これから起こり得る難しい問題もある。
松井知事、吉村市長に頭の痛い、万博とIRとの並行作業では相当の反対意見が出ることは間違いない。万博反対派、IR反対派、双方開催反対派の万博反対運動も活発になる。
両氏には多くの意見を取り入れ、うまく調整し粘り強く“未来社会のデザイン”を示してほしい。
今回の誘致成功の大きな起因は、松井知事が清話会講演会で語った「官民一体となっての取組みと国民の機運醸成」が誘致のカギと話されたことに尽きると思う。
これを大阪に置き換えてみると「府市一体となっての取組みと府民の機運醸成」になる。
大阪開催の映像が流れ松井知事と吉村市長が喜び合う画面を目にして、ようやく大阪にも春が来た感じだ。私には万博開催決定と同じ価値観で喜ぶ両氏の映像を凝視した。
永年、大阪府と大阪市がいがみ合い利害やメンツを主張し続け互いに歩みよらず、ことごとく対立した府・市が、2008年の橋下徹知事誕生から10年、やっとたどり着いた府市合体の強みを発揮した結果と見るのは私だけだろうか。
今後、大阪都構想問題が再燃することも予測されるが、今回の万博誘致で府・市が一緒に闘い成功したことを踏まえ、大阪府議会・大阪市議会には充分前向きな議論をして欲しいと思う。また、われわれ大阪府民も目先の問題や地名問題などに拘らず“小異をすて大同につく”覚悟を求められていることを肝に銘じるべきだ。