[ 特集カテゴリー ] ,

「令和2年 元旦の靖国神社」(日比 恆明)

【特別リポート】
「令和2年 元旦の靖国神社」

日比 恆明氏(弁理士)

明けましてお目出とう御座います。

昨年後半での大きな出来事は、米中貿易戦争の継続と日韓貿易戦争の勃発でした。米中の紛争の原因は中国の覇権阻止であり、日韓の原因は徴用工の問題でした。

各国の首脳、大統領が会談を行っていますが、いつも空振りで成果はありません。おまけに北朝鮮ではミサイルを発射するのが常態となっていて、ニュースを聞いても驚かず、慣れっこになってしまいました。世界情勢はこのような膠着状態が永遠に続くのではないかと思われます。

さらに、香港では巨大なデモが続発し、何時になれば収束するのか予想できません。また、国内では台風15、19、21号が連続して襲来し、全国のあちこちで大きな被害を受けました。百年に一度の自然災害、と称しているのですが、このような巨大災害も常態化して慣れっこになるかもしれません。
 
私事ですが、昨年10月に韓国ソウル市に出掛けてきました。日韓貿易戦争で韓国の社会がどのような影響を受けたのか確かめるためでした。しかし、一介の観光客が表面をなぞっただけでは影響による社会変化を探ることはできませんでした。

私が訪韓するのは40年ぶりで、その間の発展は目ざましいものがありました。40年前は殆どが砂利道で、駅前には新聞を売る少年がたむろしていたのですが、それらは全く見かけられませんでした。高速道路がどこまでも張りめぐらされ、高層マンションが立ち並び、ある面から考えると日本よりも進歩しているのではないかと思われました。

ただ、物価は日本とほぼ同じであるのに対して、給与は3割程度低いので庶民の生活は大変かと思われました。気のせいか、働いている人達は皆せわしないようでした。


        写真1


        写真2


        写真3
 
今年も元旦には靖国神社に初詣しました。朝方は曇り空で気温3度と寒かったのですが、午前10時頃になると雲が一掃されて快晴となりました。気温は11度となって気持ちの良い天候となりました。境内では何時もと同じ正月の風景であり、変わったことはありません。宗教施設なので、大きな変化を期待するのは場違いでしょう。

いつものように獅子舞が出ていました。この獅子は神社直営で、学生によるバイトでした。獅子の口で頭を噛んでもらうと厄払いとなり、一年の無病息災のご利益があるのだそうです。

正月三が日の能舞台では奉納芸能が演じれていました。写真3では落語を奉納しているのですが、素人の演者かと思ったら落語芸術協会から派遣された立派な二つ目でした。

奉納芸能では、古武道、日本舞踊、三味線、詩吟などの各種の芸能が演じられるのですが、それぞれはプロかセミプロによって行われているようです。神社側がどのような基準で演者を選抜しているのか不明ですが、ある程度以上のレベルでなければ出演できないようです。カラオケで周囲から上手いと評価されるようなレベルであっては出演できないようです。演者が下手くそであったら寒い中で聴取する参拝者に失礼だからでしょう。

今年の正月の目玉は休憩所の改築でしょう。以前の木造の建物を取り壊し、銅屋根のガラス張りで新築し、昨年10月10日から営業を開始していました。床面積は3倍に広がったのではないでしょうか。創社150年を記念して改築されたもので、以前のような薄暗く、雑然とした環境からは比べ物にならないほど近代化されていました。テラスにはアルミ製のテーブルと椅子が並べられ、洒落たものです。

似たような休息所は明治神宮で既に設置されていて、もしかするとそれを真似したのかもしれません。いずれにせよ、境内にある施設は参拝者の若年化に沿って、モダンなものにしていく必要があるようです。


        写真4


        写真5


        写真6
 
写真4は改築された休憩所の全景で、建物は内部が3か所に区分されています。向かって右側はコーヒーと軽食を提供するカフェテリアで、渋谷区に本店がある「アティックプランニング」というカフェの専業者が運営しています(写真6)。メニューの数も多く、オムライス、パスタ、ハンバーグなどの料理が提供されていますが、値段が少々お高いのが欠点です。


        写真7
 
休憩所の真ん中は「SAKURA」という店名の土産店で(写真7)、桜に関連した商品が並べられていました。ここは神社直営の経営のようで、全国から集められた洒落たみやげ物が並べられ、一種のセレクトショップの形態でした。


       写真8
 
休憩所の左側は「靖国八千代食堂」という食堂で(写真8)、築地の海苔屋が経営主体でした。店内は明るく、給仕の女性達は和服を召されていて、清潔な感じでした。メニューには、蕎麦、卵丼、カツ丼などが掲載されていました。どうも、右側のカフェテリアでは洋食を主流とし、左側の食堂では和食を主流とし、メニューが重ならないように工夫しているようです。


        写真9
 
以前の休憩所で営業されていた食堂、みやげ物店は追い出されたようで、新しい休憩所には入居していません。彼らはどこに移動したかと思ったら仮設の店舗(写真9)で営業を続けていました。しかし、この店舗も神社のお情けで営業できているようなもので、いずれ時間が経過すれば立ち退かされるでしょう。神社の近代化のためには致し方ないことです。

今年の正月では、以前のように参道の両側に密集して屋台が並んではおらず片側だけでしたが、屋台の出店数は昨年の正月に比べると5割くらい多くなっていました。正月気分を盛り立てるには屋台がなければ始まらないからでしょう。各屋台では参拝者を勧誘するためにそれぞれ工夫をしていました。参拝者に馴染みの屋台があるわけではなく、一回コッキリしか利用しないからです。このため、屋台の経営者は参拝者の気を引くように、目立つ看板を立てていました。


        写真10


        写真11

写真10は「豚玉焼」の屋台で、要するに豚肉と卵を入れたお好み焼きのことです。手前の看板にはマツコデラックスの顔写真(写真11)に「あんたさぁ、一個くらい買いなさいょ」というキャッチコピーが書かれていました。「当店の豚玉焼を食べると、このように太ります」という意味であればブラックユーモアになります。しかし、許可無くマツコの写真を使用しているので肖像権の侵害です。


       写真12


       写真13
 
この屋台では「キャラクターキャンディー」の看板で、キティーちゃん、どらえもん、ピカチュウなどのマンガでお馴染みにキャラクターを飴にして販売していました。昔のシンコ細工のようなもので、竹の棒に付けた人形の飴です。小さく、可愛らしい飴なのですが、果して正規のライセンス受けているのが疑問です。無断使用であれば大問題のはずです。

        写真14


        写真15
 
こちらは昨年夏に全国で流行ったタピオカドリンクを販売する屋台です。原材料は安いため、この飲料を販売した店舗はぼろ儲けしたと言われています。この寒空で冷たいタピオカドリンクなどを注文する客がいるのか、と疑問に思ったら「ホット」の看板が出ていました(写真15)。温めたタピオカドリンクを売るのですが、熱したタピオカはどんな味がするのでしょうか。


        写真16

何時もはチラシを配る政治団体の人達で溢れているはずの九段坂では、「エホバの証人」の宗教を勧誘する信者が並んでいました。これだけの信者が並んでいるのは壮観です。最近、都内の新宿、渋谷などの盛り場ではこのようなスタイルで勧誘している光景を良く見かけるようになりました。どういう理由か不明ですが、この宗教の信者が着ている衣類はシャレていてスマートです。これに反して、或る新興宗教を勧誘する信者達の衣類は古ぼけて見すぼらしく、勧誘を受けた方が引いてしまいます。宗教を勧誘するなら外観を良くしなければ信頼されないでしょう。


        写真17


        写真18

今年も神社では福引き所を開設していました。例年、私が引くクジはいつも参加賞のティッシュですが、今年は4等のクジを引きました。商品は芋焼酎の一升瓶(写真18)でした。春から縁起の良いことで、今年一年は幸運に恵まれるのではないか、と期待しています。