真田幸光氏の経済、東アジア情報
「中国本土との価値観の共有について」
真田幸光氏(愛知淑徳大学教授)
今、
「中国本土と価値観が共有できるのか?」
が世界の大きなキーワードとなっています。
経済発展著しく、潜在的な経済発展の余地はまだ残り、更に、一帯一路構想とAIIBのセット商品による実体経済での中国本土経済圏拡大を進める中国本土には、
「ビジネスチャンスは間違いなくある」
との視点から、
「中国本土と経済関係を維持したい」
と考える国、企業、ビジネスマンが多いことは間違いありません。
しかし、一方で、ビジネスの根幹を支える、
「信頼」
のベースとなる、
「価値観の共有」
に疑義が生じるとビジネスそのものが出来なくなっていく可能性があります。
そうした狭間で悩んでいる国は、日本や韓国だけではなく、ドイツやフランス、そしてEU諸国も同様です。
こうした中、今般、中国本土と欧州連合(EU)の首脳会談が、9月14日(現地時間)にオンライン会議形式で行われ、首脳同士の会話の中では、市場開放や人権問題が出たようです。
中国本土、EU双方が今年末までで終了することにした中国本土・EU間の包括的投資協定が重要議題でありましたが、会議に出席した欧州側首脳3人は、人権と貿易を前面に押し出し、中国本土の習近平国家主席に圧力を加え、習金平国家主席はこれに反発、結局、この日、双方の共同声明は出なかった形となりました。
この会議には習主席、シャルル・ミシェル欧州理事会議長、ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長、EU輪番議長国であるドイツのメルケル首相が出席して、議論がなされました。
会議は習主席をはじめとする出席者たちが両手を振って挨拶するなど、和気あいあいとしたムードで始まったと報告されていましたが、非公開会議が終わって、一部公開された発言を確認すると、相手に対する圧力や警告メッセージが込められていたと理解されています。
それほど会議の雰囲気は実際には厳しく、例えば、ミシェル議長は会議後の記者会見で、「欧州は貿易相手国(player)であって、貿易を行う場(playing field)ではない。
我々はより多くの公正性を望む」
とコメントしたと伝えられています。
投資・貿易に於いて、中国本土が公正な政策を展開していないという不満があると言うことでありましょう。
また、中国本土との貿易関係が緊密なドイツのメルケル首相も、
「中国本土が市場開放を意味する投資協定を本当に望んでいるのか明言して欲しい」
とコメントを加え、対等なビジネスパートナーとなる意思が中国本土にあるのか否かを尋ねたと報告されています。
EU側は更にまた、中国本土の人権問題も取り上げ、ミシェル議長は、
「習主席に香港の住民の安全、新疆ウイグル自治区やチベット少数民族の待遇に関する懸念を重ねて提起した」
ともコメントしています。
さて、今回の会議を受けて、中国本土が如何に動いてくるのか? 人民解放軍の反応も含めて、注視したいと思います。
真田幸光————————————————————
1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。1984年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支 店等を経て、2002年より、愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション学部教授。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メン バー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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