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「日米関係について」(真田幸光)

真田幸光の経済、東アジア情報
「日米関係について」

真田幸光氏(愛知淑徳大学教授)

米国のバイデン大統領と日本の菅首相が去る1月28日、日本時間の0時45分から30分間電話で首脳会談を行ったことはご高尚の通りです。

そしてこの会談直後、菅首相は官邸で待機していた記者団の取材に対して、
「日米同盟を一層強化することで合意した。
自由で開かれたインド・太平洋の実現に向け緊密に協力することでも一致した」
と説明しています。

また、これと同時に日米両国は北朝鮮による日本人拉致問題の解決や北朝鮮の非核化に向けても協力することにしたとも伝えられました。

更に、会談後、今年79歳となるバイデン大統領と73歳の菅首相は、互いを、
「ヨシ」「ジョー」
と呼ぶ合うことにした、即ち、緊密な関係を持つことにしようとしたとも伝えつつ、日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国による安保協力体となるクアッドの活動も強化するとしました。

いずれにしても、こうしたことから、1月20日に就任したバイデン大統領がアジアの国の首脳と電話会談を行うのは日本が初めてとなり、アジアの中で、米国が引き続き日本を重視していることを示したとも言われています。

一方で、今回の電話会談は異例にも日本時間の深夜に行われ、2017年にトランプ大統領が就任した直後、最初に行われた電話会談は日本時間の夜11時で、オバマ元大統領とは午前8時、ブッシュ元大統領とは午前9時に首脳会談が行われたのに比べて異例の時間だったことから、日本経済新聞は、
「米国大統領就任後、最初の会談が日本時間で深夜に行われるのは異例である。
菅首相はアジアで最初の電話協議という位置を確保し、強固な日米同盟関係をそんな点からも世界に発信したかったのだろう」
と分析、また、
「深夜の電話会談は両首脳の利害関係が一致した結果」
という見方も出ています。

新型コロナウイルス対策の失敗で支持率が30%台に低下している菅首相としては、バイデン大統領と、
「アジアの指導者として最初に電話会談を行った」
ということを国民に宣伝する必要があった、その為、バイデン大統領が最もやりやすい時間に合わせて会談を行うことを了解したのだろうという見方もあります。

バイデン大統領も自らの就任に合わせて中国本土の習近平・国家主席を牽制し警告のメッセージを送るため、早期に「米日同盟は健在」と誇示する必要があったとの声もあります。
習金平国家主席は世界経済フォーラム主催のダボスフォーラムに送ったメッセージの中で、事実上バイデン大統領を念頭に、
「新冷戦を助長するな!!」
と警告したり、習近平国家主席が韓国の文在寅大統領と電話による首脳会談を行ったことを意識した対応と言った見方も出ています。

そして、日本の共同通信は、
「今回の会談で日米両首脳は朝鮮半島情勢全般を意識し、日米関係についても協議した。」
と伝えています。

国際協調、同盟国重視の姿勢を見せる米国・バイデン新大統領は、まずは欧州列強との関係強化に優先順位を置いていると見ておくべきですが、対中露、就中、対中政策を意識した際には、今後も、
「日本を軸としたアジア戦略」
は続けていくものと見ておいて良いかと思います。

 

真田幸光————————————————————
清話会1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。1984年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支 店等を経て、2002年より、愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション学部教授。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メン バー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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