【新型コロナ時代を生き抜く人事評価】
第12回「成績評価制度(7)~フィードバック面接の仕方」
蒔田照幸氏((株)賃金人事コンサルティングオフィス代表取締役)
成績評語決定の第一の目的は賞与原資を貢献度に応じて社員に配分するためである。だが成績評語にはそこから昇給評語を導き出すという大切な役割があるし、さらには昇格昇進にも大きく関係してくる。しかしここで忘れてならないのは成績評価によって社員の能力開発を図るという大きな役割である。
面接者を誰にするかという点で新しい提案をしてみたい。これまで標準的なやり方としては、面接者は直属上司の課長ということになっているが、会社によっては、面接者は課長と部長のふたりにしてみたらどうだろう。主たる面接者は課長で、その横に部長が座るといった具合だ。むろん、これまでのやり方が間違っていたという訳ではないが、次のような問題点も出てきたのも事実だ。
いくら事前に課長が部長と調整して部門や全社レベルのことが分かっていると言っても、果たしてどこまで分かっているんだろうという社員の疑問を完全には払拭できなかったという点である。このような疑問が出され、それを解決するために部長を同席させるのが必ずしも正しいやり方とは思えないが、会社によってはこれで効果を出しているのも事実である。どんな会社かと言えば、衣料品の専門店、居酒屋、ファミレスなど社員の年齢層が若い企業で、簡単に言ってしまえば、評価者の店長も管理職とは言うには少し未熟だという人たちである。歴史ある製造業などは、見るからに課長といった感じの人が多く、このような場合は、今までどおり、課長ひとりの面接で問題ないだろう。
面接は、課長が進め、部長は適宜必要に応じて話をするという方式が良い。また充実した面接にするには、何と言ってもその中身だ。以前、ちょくちょく部下と仕事の話をするワンオンワンの重要性を述べたが、その半期ごとの総まとめという位置づけである。ワンオンワンをやっておけば、事実が共有され、よく話題に出される上司と部下の意見の食い違いといった問題も起こらない。
実際の面接では、被面接者に、会社目標、部門目標、課目標そして自分自身の目標を復唱させるのがよい。暗唱させるのは難しいだろうから、紙に書いたものを読み上げさせるので十分である。だが単なる儀式にしてしまってはいけない。会社の根本理念が具体化されているのである。真面目に読む。こういったことが大切なのである。
面接の際に必ず準備しないといけないものは成績評価フィードバックシートである。シートの項目には、今期の重点課題(重点的に取り組む着眼点)、上司として援助すべきこと、今期の重点課題について(良かった点と改善すべき点)、今期優れていた点、来期は改善すべき点などが考えられる。
また折角の機会だから、シートに記載する必要はないが、将来の夢だとか、何に興味を持っているのだとか、困っていることはないかなどいろいろと訊いてみてはどうだろう。部下に困っていることはないのかと聞くのは大切な仕事だが、その他は雑談と言ってしまえば雑談である。だが、時には雑談も重要だ。雑談の効用と言ってもよい。上司だからと言って、部下の前では弱音を吐かないなぞというのは時代遅れである。失敗談も大いに結構である。
ところで趣味と一口に言っても、それで話を続けるのは結構難しいものだ。若い人たちが何に興味を持っているのか知ろうとする努力は素晴らしいが、ゆめゆめ部下全員と趣味の話ができるようになろうなんて考えないほうが良いだろう。「自分はそんなこと知らないから教えてよ」というスタンスでよいのだ。居酒屋で一杯やってその後カラオケで歌うおじさんたちの演歌には、若い人は気を遣って拍手をしてくれるだろうけれど、本当は興味を持っていないことを知っておいたほうがよい。
演歌と言えば思い出したことがある。若い女性のほうが興味を引く話かもしれない。こんなことがあった。若い女性が演歌を歌って思いがけない展開があったという話だ。ある会社の忘年会で若い女性社員がみんなの前で坂本冬美の歌を熱唱し、それが創業社長に気に入られ、秘書に抜擢、その後自社のみならず業界をも牽引する青年実業家の二代目社長のお嫁さんになったとか、これを幸せというのか、違うというのかは人それぞれだが…。おじさんたちの趣味を古いからと言って頭から否定してはいけないという話だ。
かく言う私も相撲なら栃錦や初代若乃花は無論、鏡里や千代の山もうっすら覚えているし、一昔前のプロレスや総合格闘技なら詳しく熱く語る自信がある。ちょっと脱線しました(苦笑)
今の時代、コミュニケーションが不足しているのは確かだ。コロナ禍でなおさらのことである。仕事中にも三密を避けてワンオンワンで語って頂きたい。そして面接のときにも、仕事中心に、でも雑談も交えながら、被面接者、課長、部長の三人で、あるいは被面接者と課長の二人で楽しく胸襟を開いて本音で語り合ったらどうだろうか。
でも、このコミュニケーションっていったい何だろう。考えれば考えるほど難しい。
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◆蒔田照幸((株)賃金人事コンサルティングオフィス代表取締役)
ミルボン、ユニクロ、九州共立大学、(医)金森和心会病院など約700社、人事コンサル歴35年、懇切丁寧な指導で定評がある。人事評価分野では、2018年に大学と提携しAI投影法を開発。京都府立大学卒。1949年三重県出身。
◎賃金人事コンサルティングオフィス
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