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「経済協力開発機構の世界経済見通し」(真田幸光)

真田幸光の経済、東アジア情報
「経済協力開発機構の世界経済見通し」

真田幸光氏(愛知淑徳大学教授)

例年、年末ともなると、国際機関は当該年と翌年の経済成長率見通しを発表する。

そうした中、ここでは、比較的客観的、科学的、中立的とされる国際機関の一つである「経済協力開発機構OECD」のEconomic Outlookを取り上げる。

以下は、OECDレポートの内容を骨子として、必要に応じて、筆者が簡単にコメントを加えたものである。
ご参考になれば、幸いである。

OECDは、米国は6.0%から5.6%に、中国本土は8.5%から8.1%に、日本は2.5%から1.8%に下方修正するなど、2021年の成長率見通しを下方修正している。
 
そしてOECDは、世界経済全体については、2021年には5.6%成長し、2022年は4.5%、2023年は3.2%成長すると予測した。
 
詳細を見ると、以下のようなコメントがなされており、筆者のコメントも加えて以下のようなご報告したい。

OECD、最新の経済見通しの中で、先ず、現在の高インフレが予想よりも長く続き、更に上昇することが主要なリスクと指摘している。
そして、世界経済の2021年の成長率は5.6%と予想し、2022年は4.5%、2023年は3.2%へ徐々に減速するとの見通しを示した。

2023年の予想を示すのは今回が初めてとなるが、全世界基準での経済成長率見通しとしてはやや低く、また2021年に関しては、前回予想の5.7%から小幅下方修正されるなど、景気回復の勢いが鈍化する可能性を示唆していると言えよう。
しかし、トレンドとしては、世界経済は回復しているとの認識の下、しかしまた一方で、企業は新型コロナウイルスの感染拡大後の反動需要に対応しきれず、供給網が目詰まりを起こし、インフレが高進するとの思わぬ副作用に悩まされている点も指摘されている。

また、OECDは、大半の政策当局者と同様、現在のインフレ高進は一時的で需要と生産が正常化すれば緩和すると見ており、筆者も、そうした見方には、原油価格が落ち着くなどの条件が整うということを前提にして、基本的に賛同している。

但し、OECDは、
「現在の高インフレが予想よりも長く続き、更に上昇し、主要国中銀が想定よりも早めに、より積極的な金融引き締めを迫られることが起こる可能性はあり、これは一つの主要なリスクとなり得る」
とも改めて、指摘している点を付記しておきたい。

要するにインフレによる混乱の不安を明確に予測することは現状難しいと見ているようであり、リスクは残ると見ているようである。

しかし、そのリスクが顕在化しなかったと想定すると、OECD加盟国全体のインフレ率は5%近くでピークを打ち、2023年までに3%程度に低下するとの見方を示しているのである。

更に、こうした背景を踏まえて、
「現在、主要各国の中央銀行が成し得る最善の策は、供給面の緊張が緩和するのを待ち、必要なら行動するというシグナルを発信することである。」
とも指摘し、行き過ぎた金融緩和や金利引き上げには注意を払うようにコメントしている点は注目され、特に、テーパリング、そして2022年には二度ほど政策金利を利上げするのではないかと見られている米国の金融当局がどのような反応を示すのか、注目したい。

国別にみると、以下のようになる。

OECDは今回、米国の成長率を、2021年が5.6%、2022年が3.7%、2023年を2.4%と予想し、2021年(6.0%)と2022年(3.9%)という予想を引き下げている。

中国本土については、2021年が8.1%、2022年と2023年は5.1%と予想し、従来予想の2021年8.5%、2022年の5.8%をやはり下方修正している。

ユーロ経済圏については、2021年が5.2%、2022年が4.3%、2023年は2.5%と予想し、従来予想の2021年5.3%、2022年は4.6%から下方修正されている。

そして、我が国、日本については、2021年が1.8%、2022年3.4%、2023年は1.1%と、2021年の予想は従来予想の2.5%から下方修正されたものの、2022年については2.1%から上方修正されている。

以上、前提条件付きの見通しであり、筆者からすると、
「緩い見通し」
とも思われるが、これを参考にして、今後の2022年以降の世界経済を予測していきたいと考えている。
 
そして、オミクロン株の今後の感染拡大状況と貧富の格差拡大問題は大きな変化を齎すものとして、留意をしていくべきであろう。

以上、ご参考まで、ご覧ください。

 

真田幸光————————————————————
清話会1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。1984年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支 店等を経て、2002年より、愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション学部教授。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メン バー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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