【特別リポート】
「令和4年 元旦の靖国神社」
日比恆明氏(弁理士)
明けましてお目出とう御座います。
昨年は一昨年と同様に、コロナで始まりコロナで終わった一年でした。しかも、一昨年よりも感染者数、死亡者数が増加し、大変な年でした。
感染を防止するため、自衛隊を動員して多人数にワクチンを接種しました。にもかかわらず、昨年8月には第5波があり、感染拡大を予防するため政府は緊急事態の宣言して飲食店、映画館などに営業自粛を求めました。この自粛により、11月以降は感染者数を大幅に減少させる成果を得て、ひとまず安心しました。
しかし、年末になって営業自粛が緩和されると感染者数は反発するように増加し、このままでは近い内に第6波があるのではないかと予想されます。
さらに悪いことに、昨年末にはコロナの異種株であるオミクロン株が発見され、感染拡大に輪をかけることになりました。オミクロン株は従来からのデルタ株(インド株)に比べ感染力が強いそうなので、第6波ではどれだけ感染者数が増えるか戦々恐々の情勢です。
オミクロン株は従来の異種株に比べ、感染しても重症化することは薄いとされています。しかし、コロナ株であることには変わりなく、感染しないことに越したことはありません。私は昨年6月にコロナワクチンを2回接種しておりますが、早くブースター接種して感染予防に万全の対策をしたいのが目下の望みです。
また、昨年は一年遅れで東京オリンピックが開催されましたが、コロナ拡散を防ぐために無観客で開催されました。気の抜けたビールのような大会となり、国内では全く盛り上がりませんでした。今年こそはコロナを撲滅し、平凡でもいいからマスクをしない生活を送りたいと願っています。
写真1
写真2
今年も午前9時頃には靖国神社に到着しました。
写真1は、その時の中門鳥居前の光景です。参拝者はパラパラであり、さほど混み合っていません。
この日の朝の天気は快晴でしたが風が冷たく、日陰では寒さが強く感じられました。このため、参拝者の出足は悪かったのですが、時間が経過すると徐々に増加し、午前11時過ぎには写真2のような行列となりました。ただ、写真2からは待機している参拝者が多いように見えますが、密集を避けるために1メートルの間隔を空けているため実際には見た目よりも少ない人数でした。
今年の靖国神社の正月三が日の参拝者数は5万9千人と集計されました。昨年は4万3千人であったことに比べるとやや増えています。しかし、一昨年の令和2年では11万人であったことに比べると参拝者数は全く回復しておりません(靖国神社発表)。他の神社での参拝者数の増加率(昨年比)では、太宰府天満宮が7倍、伏見稲荷神社が3.5倍、明治神宮が2倍となっていて、靖国神社は苦戦しています。
写真3
神社の創立150年となる令和2年(2020年)には、記念行事として休憩所などの施設の整備が行われました。目立った施設の改築が終わったので、次いで昨年8月からは社務所を取り壊して改築することになりました。改築のため、旧社務所の廻りには目隠しの仮設パネルが立てられていました。
旧社務所は昭和57年(1982年)5月に竣工していることから39年経過してからので改築ということになります。旧社務所の建物は頑丈な造りであったので、まだまだ使用できたのでは、と思われたのですが。仮設パネルには、改築期間中に事務を執る仮社務所の場所を示す案内板が掲げられていました。
写真4
靖国神社の裏側には相撲場が設えてあり、その手前には「啓照館」と呼ばれる建物があります。ここにはもともと木造の相撲力士の支度部屋の建物が建てられていました。毎年春になると奉納相撲が興行され、その際に力士がここで着替えし、出場のために待機していました。小さな建物でしたが、外国大使などの来賓のために観覧席も設けられていました。その建物は老朽化のため平成22年(2010年)に鉄筋コンクリート造りに改築され、支度部屋の他に研修などに利用される「啓照館」となりました。
その建物が社務所の改築期間中は仮社務所として利用されることになりました。すると、仮社務所は奉納相撲の興行の時も使用されるので、力士達はどこで着替えするのか疑問になりました。
写真5
この「啓照館」だけでは仮社務所には手狭であるため、駐車場にはプレハブの事務所が仮設されていました。「啓照館」は来客などの対応のために使用されるようですが、こちらでは事務仕事などに使用されるのではないかと思われます。
写真6
旧社務所の廻りを囲っている仮設パネルには、前回の竣工時の大きな写真が掲げられていました。今回の改築は大林組が請け負ったのですが、前回の改築でも大林組が請け負っていました。この竣工記念の写真は大林組が保存していたようです。
写真7
毎年、正月には神社による福引、甘酒、振る舞い酒の奉仕が行われていましたが、昨年はコロナのため全て中止となりました。今年は甘酒と振る舞い酒の奉仕は復活しましたが福引は復活しませんでした。福引は参拝の時の楽しみの一つであったので、残念なことでした。
参道の北側には露店が出店していました。総数は40数軒程度で、100軒以上が出店していた最盛期に比べると少々寂しいものです。それでも飲食物を売る露店が並んでいると初詣の気分を高揚させるものです。
写真8
写真9
写真10
写真11
写真12
各露店にはLEDのランプが吊り下げられていて、店内を煌々と照らしていました。露店組合が共同購入したのか組合で商品を指定したのか不明ですが、各露店は同じ種類のランプが使用されていました。このランプの電源はどこから供給されているのか不思議に思い露店の裏側に廻ってみると、写真9のように裏からコードが引き出されていました。
さらにそのコードを辿っていくと、途中で立木に掛けながら電灯線のようにさらに奥の方に延びていました。各露店につなげられた全てのコードは一か所に纏められていました。外苑の木立の中には目立たないように配電盤が設置され、全てのコードの終端は写真12のように配電盤に接続されていました。この配電盤が全露店の電力供給の源となっているようです。
以前は各露店がエンジンで作動する携帯発電機を持ち込み、露店ごとが独自に発電していました。このため、露店がランプを灯すと裏側からはエンジンの動作音が聞こえてきたものでした。
昨今はこのような集中給電システムにより携帯発電機を使用しなくとも良くなったようです。集中給電システムは環境衛生に考慮して、携帯発電による排気ガスの発生を抑えるためと思われます。もしくは、エネルギーロス(自家発電は発電効率が悪い)による地球温暖化を防止するため、露店組合が一致して地球温暖化の対策を立てたからなのかもしれません。
集中給電システムはケーブルを配線するのが面倒ですが、省エネ、温暖化対策には有益な給電方法です。露店の経営者達にもSDGsのために努力している姿勢が見られるようです。
写真13
参道の横の外苑には休息用のテーブルと椅子が設えてあり、無料で利用できます。このテーブルと椅子は昨年2月頃に設置されたようですが、以前は金属製の枠に木材を丸出しとした構造の無骨なものでした(写真14を参照のこと)。
しかし、今年になってテーブルには白いテーブルクロスが掛けられて清潔感のある光景となっていました。木々が並ぶ外苑の中にポツポツと白いテーブルが並べられた光景は落ち着いた雰囲気をかもし出していました。ただし、テーブルクロスは木綿ではなく、耐久性の面からビニール製でした。
なお、このテーブルでの飲食は可能ですが、酒類の持ち込みは禁止されています。ここで露店で購入した酒、ビールを飲むことはできません。家族連れが弁当などを持ち込んで楽しむために設置されたもので、極めて健全な場所なのです。