「コロナうつ」、「コロナブルー」という言葉ができている、このご時世。未だに収束がみえないコロナパンデミックは、労働市場にも大きな影響を与えている。コロナ禍で多くの会社員は解雇されるのではないかと怯えながら2年を過ごしてきた。
私たち人間は仕事をしながら経済生活をして暮らしている。仕事への不安は生活の不安になり、メンタルの問題にもつながりかねない。ここで筆者は「仕事は諦めても、人生は諦めないで!」という気持ちで生きる方法を模索したいと思う。
まず、足元の労働市場について総務省の「労働力調査」から確認してみよう。
図1.直近の完全失業率
図2.コロナ後の休業者数
総務省が2021年11月に発表した最新版「完全失業率」は2.8%(前月:2.7%)。前月と比べて0.1%低いくらいで、直近3か月で大きな変化もなく、失業率の上昇は限定的にとどまっている。2020年の平均値と同じ程度で、大きくは変わっていない状況が続いている。その理由として非労働力化の進展、休業者の急増、労働時間の大幅削減が失業率の上昇を抑えた。産業別には、宿泊・飲食サービス業の就業者が大幅に減少し、雇用形態別には、パート・アルバイト、派遣社員などの非正規雇用が女性を中心に大きく減少している。
雇用の悪化は人々の健康を大幅に低下させる。失業による、不安な生活は精神の不安につながる。同じように、賃金をはじめ労働条件の低下や非正規雇用なども生活の不安を高める要因だ。今まで失業が健康に与えている影響について先進国を中心に多く研究されていた。
失業すると所得が減るので貧困な暮らしを強いられ、貧困な暮らしは社会的な孤立となり、益々自信をなくし、失業が長期化することさえある。こういうネガティブなことが悪循環することによって、メンタルも崩れてしまい命の危険にさらされる可能性もある。失業期間が長くなるほど精神健康は悪化される訳である。
次は、失業と自殺率の関係性についてみてみよう。
図3.失業率と自殺死亡率の推移
出所:警察庁「自殺統計」、総務省「国勢調査」および総務省「人口推計」より厚生労働省自殺対策推進室作成、総務省「労働力調査」
上記の図からは、失業率が急上昇する1998年以降や2003年頃は自殺死亡率が高まっていることが観察できる。
自殺が増加する原因は、自殺者の動機の内訳をみると、健康問題の増加や経済・生活問題の増加によるところが大きい。自殺者の増加人数のうち、37%が健康問題、30%が経済・生活問題によるものだ。健康問題については、失業したことによってメンタルヘルスが壊れ、 うつ病などになり、それが自殺につながる可能性が考えられる。
日本では完全失業率が1%ポイント上昇すると、男性は10万人あたり約25人の自殺者増加につながるという。特に女性については、25~44歳への影響が極めて高く、10万人あたり52人の増加につながる。(参考文献;Chen, Choi and Sawada (2009)の論文を参考にした茂木洋之氏のコラム)
人にとって大事な仕事がうまくいかなかったり、離職が長くなったり、正規・非正規の雇用問題といった様々な問題が私たちの健康に甚大な影響を与えているのだ。
次回は、仕事に関する価値観の変化と対策について考えたい。