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「令和4年・春の新宿御苑」(日比恆明)

【特別リポート】
「令和4年・春の新宿御苑」

日比恆明氏(弁理士)

2022年4月10日、新宿御苑に出掛け満開の八重桜を愛でてきました。

東京の桜の名所と言えば、何といっても上野公園です。春を知らせるテレビニュースでは、必ずと言っていいほどここの花見風景が取り上げられます。公園の道路の左右にはシートが敷かれ、会社の同僚や大学の同級生などのグループが陣取り、宴会をするのが毎年の恒例行事となっています。次に有名なのは千鳥ケ淵公園、隅田川公園、目黒川の沿道などが挙げられます。

これらの桜の名所に共通するのは、桜の種類が染井吉野なのです。3月下旬に開花することから、新入社員や新入生の歓迎会や転勤者の送別会の時期にピッタリと一致しています。また、染井吉野は開花から散るまでの期間が短く、パッと咲いてパッと散るため、宴会の予定が立てやすいことも考えられます。もし染井吉野の開花が1カ月も続いたらどうなるでしょうか。歓迎会や送別会をダラダラと続けることになりかねません。宴会を短期間で終了させることができるため、染井吉野の花見は便利なのです。


                   写真1

新宿御苑にも桜木は植えられているのですが、他の桜の名所に比べてあまりマスコミに取り上げられることはありません。その理由の第一は「入園料」がかかることです。他の名所は全て無料なのです。都内の桜の名所で入園料がかかるのは駒込の六義園だけではないかと思われます。

次の理由としては、「見栄えが悪い」ことでしょう。新宿御苑にも多数の桜木が植えられているのですが、敷地が広大であるため桜花が分散しています。上野公園などでは桜木が密集して植えられているため、淡い桃色の桜花が一面に広がっています。映像や写真の写りが良好で、春を演出するには絶好の風景となります。


                       写真2

                      写真3

こちらの写真は染井吉野の下で、暑さを避けて食事をしている人達です。桜花は全て散り葉桜となっていましたが、青葉の下で心地良い春風を受けて春を満喫されてました。
 
このように、日本では桜花の下でくつろぐ光景があちこちで見かけられ、平和そのものです。しかし、同じ時期にウクライナではロシアとの戦闘が続いていて、花見どころではありません。この戦闘は数年は続くのではないか、という意見もあり、泥沼化していくようです。

また、最近のロシアでは、「北海道はロシアの領土である」という過激な発言も出ており、日本もウクライナのように戦乱に巻き込まれる可能性も出てきました。この日本の平和はどのようにして維持されてきたか、を再考するべきでしょう。たまたま島国であったから侵略が無かっただけで、もしロシアと陸続きであったならウクライナの侵攻と同時に日本にも侵攻が始まっていたかもしれません。反戦、反核などと声だけ上げていたのでは平和は維持できません。多分、これからの日本人のイデオロギーも大きく変わってくるはずです。


                      写真4

このように園内のあちこちにはグループごとにシートを敷いて、家族や知人同士がくつろいでいましたが、実は入園するには難関がありました。今年の入園には制限があり、予約をしなければならないのです。予めスマートフォンやパソコン、往復葉書などで入園する日時を予約し、予約した時刻でなければ入園できません。これはコロナ感染を避けるため、一日の入場者数を制限したためです。予約は30分ごとに区切られ、予約した時刻になるまで入口で待機しなければなりません。入口には入園を待つ人達で混雑していました。


                      写真5

                      写真6

写真5は今年の園内の芝生を写したもので、広大な芝生は幼児の運動場となっていました。写真6は2017年のコロナ禍が発生する前の、写真5とほぼ同じ方向を写したものです。芝生には多くのグループが密着するようにシートを敷いて、春を楽しんでいました。通常はこのような光景が当たり前でした。この日に新宿御苑に入園できたのは1万7千人でした。コロナが発生する前の2019年3月31日では、7万4千人が入園したので、四分の一程度に減少しています。
 
さて、園内には各種のグループが入園していますが、過去の経験からすると入園するグループを多い順に説明すると次のようになります。

1、家族連れ。
このグループが一番多い。子供と共に入園するのですが、小学生の低学年以下の家族が殆どです。幼児を広い芝生で遊ばせることが目的と思われます。高学年の小学生になると、子供は自分の意思で行動することになるからでしょう。
2、恋人同士。
当然のように、天気の良い休日になると目立って多くなります。公園であれば誘い易いからでしょう。
3、若い女性同士。
 会社の仲間や学生同士で、2人から数人程度が集まってきます。弁当を持参してお喋りするには最適だからでしょう。
4、男性二人組。
 どういう訳か男性だけのグループは二人連ればかりです。三人組とか四人組の男性同士のグループはみかけません。
5、老人夫婦。
 子供も巣立ったので夫婦で出掛けられるのでしょう。
6、男性一人。
 意外にも一人で入園する男性は多く見かけられます。
 
このようにグループが分類されます。滅多に見かけられないのは、中高年の独身と思われる女性一人の入園です。いわゆる、お局さまと呼ばれる女性ですが、家族連れを嫉妬しているのではないかと思われます。


                     写真7

園内では、このようなポスターを持ち歩く警備員が見かけられました。コロナ感染を防止するため、他のグループとは間隔(2メートル)を置くように警告していました。こんな光景も新宿御苑が開園してから始めてのことかもしれません。また、園内では飲酒が禁止されていため、男性の警備員が巡回していて、飲酒しているグループを見つけると注意していました。


                      写真8

この日、中国服を着た二人連れを見かけました。いずれも中国人で日本で働いている人でした。漢服とよばれる中国服で、右側が明時代、左側が清時代のデザインだそうです。中国服と言えば、ワンピースの両側にスリットを入れた旗袍(チーパオ)、いわゆるチャイナドレス、を連想するのですが、これは漢服ではなく満服です。

旗袍は1920年代から上海で流行ってきた服装であり、古来からの漢族のものではありません。当時の上海の知識人は、「体の線がそのまま表れ、太股を露出する服装は下品である」と嘆いた、という記録があります。現在の中国では古来からの漢服を見直そうという運動があるようで、趣味で漢服を着る人が増えているそうです。
 
この漢服は通信販売で入手できるそうで、横浜の中華街ではレンタルもしているそうです。来日した中国人が、浅草付近でレンタルの和服を着て散策する光景は珍しくありません。それと同じように、中華街では日本人が漢服を着て散策するのが珍しくなくなるかもしれません。