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「中台関係は新たなステージに入りつつある」(真田幸光)

真田幸光の経済、東アジア情報
「中台関係は新たなステージに入りつつある」

真田幸光氏(愛知淑徳大学教授)

アジアや米欧の防衛相・軍幹部らが一堂に会する「アジア安全保障会議」(通称シャングリラ会合)が6月10日、シンガポールで開幕した。
そして、日本の岸田首相が開幕に合わせて基調講演を行っている。

日本の首相による基調講演は2014年の安倍元首相氏以来8年ぶりとなった。
ウクライナ危機を踏まえて、
「力による一方的な現状変更」
をインド太平洋地域では絶対に許さないという決意を強調した。

日本の外交的リーダーシップが一定程度示された決意表明とも評価されている。
しかし一方で、中国本土の名指し批判を避けるなど、東南アジア諸国連合(アセアン)の中には、中国本土との関係を重視する国もあり、そうした国への配慮をした岸田首相の決意表明であったとのではないかとの厳しい見方も出ている点、付記しておきたい。

また、会議全体としては、北朝鮮の核・ミサイル開発や中国本土の覇権主義的な動き、台湾情勢といったインド太平洋地域全体が抱える当面の課題や、国際秩序を根幹から揺さぶったロシアによるウクライナ侵攻などについて、活発な議論が交わされる見通しとなっている。

そして、ウクライナのゼレンスキー大統領がオンラインで演説し、各国に支援や支持を訴えている。

◆[台湾]

台湾で中国本土政策を担当する大陸委員会は、天安門事件から33年となるのを受けて声明を発表し、中国共産党に対して、
「真摯に歴史の真相と向き合い、政治改革を進めた上で着実な民主化と市民社会の実現を目指すように」
呼び掛けている。

大陸委員会は、中国共産党が1989年に政治改革を求める学生と民衆を武力によって鎮圧し、現在まで過ちを省みず、言論の自由を抑圧し、人権を侵害している、特に最近はこうした統制色を強めていることに触れ、強い遺憾の意を示した。

その上で、
「中国共産党は一党独裁体制を固める為、言論の統制や自由の制限を強化し、近年は改善の余地がますます狭まり、台湾や国際社会の懸念が黙殺されている」
と強調した。

また、いわゆる「再教育施設」については、非合法に少数民族を監禁し、強制労働をさせているとした他、香港に関しては「一国二制度」への約束を破り、香港国家安全維持法(国安法)により香港人の民主主義と自由を弾圧し、人権の価値と国際的な約束を無視していると強く非難している。
 
中台関係は新たなステージに入りつつあると見ておきたい。

◆[中国]

中国本土で発生した天安門事件から33年も経った。
こうした中、中国本土では民主化は進まず、国家統制は強まり、
「習近平主席は皇帝になる道を整えているのであろうか?」
との批判も出てきているが習近平政権は、こうした批判に対しては、
「欧米との価値観の違いであり、中国本土は中国本土型の民主化を推進している」
と反論している。

米国の、中国本土に対する、
「中国本土は価値観の共有我的ない国である。」
との批判は今後も続くであろう。
こうした中、米国のオースティン国防長官は中国本土の魏鳳和国務委員兼国防相と月内にシンガポールで会談を行い、競争管理になどについて協議するとしている。

中国本土側がアジア安全保障会議(シャングリラ会合)に合わせ魏国防相とオースティン長官との会談を設定するよう正式に要請してきたとし、
「会談では地域的、世界的な問題を巡る競争管理が焦点になる」
との期待を示している。
 
国防当局トップ同士の対話でもあり、今後の動向をフォローしたい。

 

真田幸光————————————————————
清話会1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。1984年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支 店等を経て、2002年より、愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション学部教授。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メン バー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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