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「ウクライナ紛争と中国」(真田幸光)

【真田幸光の経済、東アジア情報】
「ウクライナ紛争と中国」

真田幸光氏(愛知淑徳大学教授)

国際金融市場の一部では、
「水面下で、米露が、ウクライナ紛争の一旦の収束に向けて議論を開始、復興支援の為の世銀グループの準備も始まっているとの見方の下、ウクライナ紛争の解決に向けた動きを期待している」
との声もあるが、期待はあくまでも期待であり、現実には、ウクライナ紛争がいつ、どのように収束していくかの明確な予測は立っていない。
 
米露は、弱気の姿勢を見せれば、収束に向けた交渉に悪影響を与えるとし、まだ戦闘は続ける、温かくなる春にはロシア・ウクライナ双方とも戦闘をより拡大するとしているが、一旦の収束を筆者としては、期待をしている。

さて、こうした中、米国のバイデン政権は、ウクライナ侵攻中のロシアに対して複数の中国本土国有企業が支援を行っている証拠を掴み、中国本土政府に懸念を伝えたと報告されている。

そして、米国政府は、
「中国本土企業による支援の背後には中国政府の存在が確認された場合、相応の措置を取る考えである」
としている。

米国はブリンケン国務長官が来月訪中する予定と既に発表していることから、この問題が更に表面化すれば、米中間の緊張のレベルは再び、更に高まる危険性もある。

米国政府はこれまで、中国本土企業がロシアを支援した証拠の一部を中国本土政府に提示し、中国本土政府がこうした活動を事前に認識していたかどうかを確認しようとしていると見られている。

一方、今回、中国本土国有企業はロシアに対して武器ではなく「殺傷力のない」物品を支援したが、その内容から米国やその同盟国によるこれまでの対露制裁に関して、明らかに違反するレベルではないとも言われているが、ロシアに供与されたと言われる物資が何であるかは不詳であり、我々の推測はここで止めなくてはならない。

しかし、米国マスコミ報道によると、米国政府は既に、中国本土政府に対して、
「中国本土企業による対露輸出、支援が今後も続く場合、これはロシアへの戦争物資の支援と解釈できると中国本土側に警告した」
と伝えられている。

そして、米国政府が中国本土による対露支援の動きを今回公表した理由については、
「中国本土とロシアが今後更に密着して活動しないよう釘を刺す意図がある」
との見方もあり、一方で、米中関係が大きく悪化しないよう、詳細発表を押さえているとの見方も出ている。

但し、米国マスコミの一部では、
「中国本土は武器製造や航空宇宙分野などに転用可能なハイテク部品や原材料などを支援した」
とし、
「欧米による対露制裁が続く中、中国本土企業はロシアに軍需品に転用可能な半導体部品、更に兵器製造に必要な酸化アルミニウムなどを大量に輸出している」
との具体的な内容の報道まで行っている。

尚、米国政府・商務省は昨年6月29日、Conec Electronic、World Jetta、Sinno Electronic
s、King-Paiなど中国本土企業5社をロシアの防衛産業を支援したとの理由で既に制裁対象としている点、付記しておきたい。
 
今後の動向を注視したい。

 

真田幸光————————————————————
清話会1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。1984年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支 店等を経て、2002年より、愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション学部教授。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メン バー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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