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【講演録】雑賀 政徳氏「トリウム発電の可能性」

【講演録】清話会セミナー    東京◆2023年02月08日(水)

「トリウム発電の可能性」
     ~日本のエネルギー政策を大きく変えるかも知れない新技術~

      

 講師:雑賀 政徳 氏  (N.K.S㈱筆頭取締役副社長)

さいか屋商事㈱、S.S.Tホールディングス㈱オーナー。
日本トリウム発電商業化(協)TRC
2.主幹。全国一最強軍団(紀州水軍、鉄砲衆)と呼称される雑賀孫一1535年以来17代目。
鎌倉美術家協会前会員、横浜栄区芸術
家協会会員。
陶芸家名:賀文。
横須賀市市政
功労。

 

日本のプルトニウム保有量は世界で第4位
 糟谷先生のお話にあったように、化石燃料は日本のエネルギーの76・3%を占めています。ただ、残念なことに、コストの安い化石燃料、石油、石炭、ガス、LNGは、今後使えなくな
っていきます。なぜかというのは、ご存じのように、COP27が昨年エジプトのカイロで、COP26は一昨年イギリスで、COP25がスペインのマドリードで4年前に行われました。そこ
で日本はBad Country、最悪だと言われたわけです。


 世界に低開発国は100ほどありますが、先進国は10ヶ国ぐらいしかありません。日本は先進国なのに、温室効果ガスを0%にするのは2050年と発表しました。福島の大事故が起き
て原子力を全部止めましたので、到底日本は、ヨーロッパのように2030年にCO2をゼロにするということはできません。ですから、2050年と言ったことが世界中で、日本はどうしよ
うもないという評価をされたのです。

 そして、日本の原子力は今、3・9%です。全国に53基の原発がありますが、動いているのは4基です。原発の炉は40年もつと言われていますが、今、岸田総理が60年にしようと言って
います。福島の事件で十数年も止まり使っていないのだから、その10年分を足して60年にしようと、小学生のような足し算で決めているのです。そして、原発は40年もつといっても、あの
すごい炉を計画的に2年経ったら自動的に1ヶ月ぐらいかけて止めています。
 主力の材料は、ウラン238とウラン235。それをチップにして原子炉の炉心に入れるのですが、その前に2年経って止めた原子炉を開けて、中にある材料を全部捨てます。最高でも
500キロ、最大だと1トンぐらい入っています。
 そこで500キロのウラン238と235が2年間でどれだけ燃えたのかというと、原子力というのは効率が悪く、500キロの5%、25キロが燃えて、あとの485キロは放射性廃棄物になります。その中に、どこにも捨てられない最悪のプルトニウムがあるわけです。

 今まで日本は40年間ずっと原発を稼働させていましたから、ほとんどは、その原発の地下にあるという話です。一部は青森の六ケ所村の再生工場、一部は、未来の電気を起こそうと考えて
いた福井のもんじゅの地下です。外国でもこれは再開発できませんので、砂漠やどこか山の中の地下に埋めたりしているのです。
 今、放射性廃棄物はどのぐらいあるか想像がつきません。ただ、プルトニウムだけは計算してみると今47トン日本にあります。その量は世界で4位。アメリカ、ロシア、フランス、日本
です。こんな小さな国で47トンも持っているのです。これは想像がつかないほどの危険です。
 世界に600基の原子力発電所があって、プルトニウムは500トンあります。ただ、ここで言えるのは、中国でもロシアでもアメリカでも、プルトニウムはICBMや核弾頭が造れるから宝物なわけです。ところが、日本は平和主義で絶対に使いませんから、この47トンをどうしようということになります。

プルトニウムを燃やせて原発よりはるかに小さく低コスト
 そこで、トリウム発電です。トリウム溶融塩炉と言います。材料はトリウム、フッ素、塩素。トリウムというのは、レアアースの製錬工程で発生する不純物です。レアアースの産地の中国
で、5年ぐらい前までトリウムはタダでしたので運搬料だけもらって、実験に使っていました。今は中国もトリウムは将来の資源だろうと目覚めてしまい、お金を取るようになりました。
 私たちの大先輩で、30年以上この研究をしている東京大学、TTS㈱初代社長の古川和男先生は、すでに10年前には、トリウム発電は何でも燃やせるのだから、プルトニウムも燃やせる
と言っていました。その時は、誰もがそんなばかな……と思っていたわけです。
 しかし、2019年にノルウェーのハルデン研究所の炉を借りて、そこでまずトリウム発電をし、その中に、塩素、トリウム、フッ素を入れ、最後にプルトニウムを10キロ入れたのです。
それでスイッチ入れて中性子をぶつけたら、なんとプルトニウムが一緒に燃えてしまったのです。
 1回じゃ駄目だというので2、3回繰り返し、動画も撮り、すべて論文にして、今、世界特許を申請しています。全然問題なく合格すると思います。そこまで来ているのに、どうして日本
政府は動いてくれないのでしょうか。

 2025年には、トリウム溶融塩炉を商品化しようと決めました(日本トリウム発電商業化㈿ТRC2)。アメリカは親しい友人ですが、「核」プルトニウムだけは別です。日本はプルトニウム早く消せよということで、カナダやカザフスタン、ノルウェーなどが味方に付いてくれました。全部外国です。国会議員でも理解を示している方々は12名いらっしゃいますので、いつでも手を挙げてくれたら作ることができます。ポンプはどこで、配管はどこで、炉はどこでと、部品メーカー東洋炭素・帝国電機製作所・三菱マテリアル・助川電気工業は手を挙げて下さっております。
 次に、原発は1基作るのに1000億円~1500億円かかります。中の炉心を500キロにするか1トンにするか、100万キロワットか200万キロワットとかでも値段が変わるわ
けですが、私どものトリウム発電20万キロワットにかかる費用は、原発のだいたい20 分の1です。
 そこで、トリウムがなぜ今こんなに注目を集めているかというと、トリウム発電はプルトニウムを燃やすことができるということです。2019年に実験にて消滅しました。
 次に、小型なのです。MSRMoltenSalt Reactor(溶融塩原子炉)といって、5×3×2mです。考えられないでしょう。原子炉なんて、一つのビルを全部入れても小さく感じるくらいですが、われわれのMSRは50㎡くらいの部屋だけで2基作れるぐらいの大きさです。2年前、陸上自衛隊から問合せがあったのは、何があっても2万キロか3万キロできる自家発電機を作れるか、ということでした。可能だと答えていますので、もしかしたら自衛隊からの動きが早いかもしれません。

 そして、原発は送電線で延々と電気を送って来ます。送電線で音が鳴っているのをご存じですか? ウーンと音がしていて、電気が減りながら到着するのです。しかしわれわれの機械は、作る場所によって送電線は1キロぐらいで済みますし、ここに作れば送電線は要らないというわけです。
 今、うちの社長が言うには、こんなにいじめられるなら、トリウム発電ではなく、プルトニウム消滅機と改名しようかと言っています。日本だけでなく世界のプルトニウムをなくしてく
れるし、小型MSRで3万kw/h発電するとコスト3円、売価10円です。
 そして大事なのは、中国による台湾海峡有事の危険性。日本はLNG、石炭・石油を年間何十億トンとこの海峡を通って運んでいますから、それが止まるということを想像してみて下さ
い。
 われわれは、MSRですが、三菱や東芝が真似をして、SMR (Small Molten Reactor :小型原子炉)というのを作ります。原子炉を小さくする。そうすれば、何らかの被害にあって
も小さくて済むという小学生レベルの考え方です。われわれとは全然違います。
 しかし、日本という国は非常に封建的です。先日、タイ国からタイ政府幹部や大手企業の方々が10人以上来日して、説明すると、その後タイでやってみようかという話になりつつあり
ます。タイは今、タイ湾から天然ガスが出るので、10年間ぐらいは大丈夫なのですが、原子力は国民が許さない。となると、それに代わるものが欲しいというので、3年ぐらい実験しなが
ら作ってみようかという案が出ています。現状、タイ王国副首相兼保健大臣に当方関係者がお会いしております。
 日本でやらなければ、タイが出した20億円は、当然ながら全部タイに行ってしまいます。だから、そう考えると何があっても日本でやらなければ駄目だと思っているのです。
 現状をご理解いただき、トリウム発電研究開発はTTS㈱、普及・実現化はN.K.S ㈱パートナー企業として賛同下さい。