【真田幸光の経済、東アジア情報】
「米中を軸とする世界情勢について」
真田幸光(愛知淑徳大学教授)
世界情勢は引き続き混沌としていると筆者は見ている。
混沌が続いていると言うよりも、混沌が深まっているとの認識を強めている。
特に、米中の痛手は深いかもしれない。
先日の米国・サンフランシスコでのAPECに関連して、米中首脳会談が開催されたことはご高尚の通りである。
そしてこの際、米中が互いに歩み寄っている姿が垣間見られたとも思われる。
筆者は、米中は共に弱っていると見ている。
だからこそ、米中の一旦休戦、はあり得ると見ている。
但し、米国は中国本土の軍事的拡張は許さないとしており、もし、米国が対中譲歩するとすれば、それは経済制裁の緩和にあると思われる。
こうした米中、そして、米中に影響を与えるロシアの現状を簡単に纏めてみた。
先ず中国本土は今、かなり厳しい状況にあると筆者は見ている。
習近平政権はこうした難しい事態を以前からしっかりと予測、不動産バブルを政策的にも抑制していたが、地方の共産党トップなどの実力者と、今問題となっている恒大集団グループやカントリーガーデングループなどの大手不動産ディベロッパーが共に儲かるからと、我欲に走り、習近平政権の指示の下、資金貸与をしてくれない中国本土系金融機関に代わり、外資系金融機関から資金を借りた、そして、その外資系金融機関に今、事実上の経営破綻状態を背景として、債務取立てを迫られ、債務不履行事態が顕在化、結果、不良債権問題も顕在化しつつあり、中国本土全体の金融システム不安が取り沙汰されている。
こうした中では、当然に中国本土人民は消費に走らず、経済は停滞したままである。
また、このような経済不安を背景に、反習近平勢力も蠢きはじめ、事態は政局にも及ぶかもしれない。
こうした政局の揺らぎに合わせて、習近平政権は先日、他界した李克強前首相の葬儀などに対する厳しい警戒姿勢を示し、これに対して、中国本土人民の中からは、李克強氏は暗殺されたとの話まで出てきている。
中国本土政府は李克強死去の弔問に来た庶民にまで厳しい規制を加えたし、何よりも中国本土では今、賃金未払いや年金に対する不安や不満が底辺にはあり、静かに社会不安リスクは拡大しているかもしれない。
そして、米国はこれを機に中国本土の弱体化、特に軍事的弱体化を図る、それを念頭に日米韓軍事連携を進めているとも見られている。
一方、イスラエル事態については、シナリオライターはロシアのプーチン大統領と見る向きが出ている。
つまり、第二次世界大戦後の1948年のイスラエル建国の経緯に世界の耳目を集めさせ、英米こそが、力による現状変更をした国である、と声高に言い、ロシアのウクライナ侵攻に対して、欧米日本が言う、
「ロシアによる力による現状変更は許さない」
と言う論理を崩しに来ている。
中国本土を含め、意外にも、こうした論理に同調する世界の声は多いとも見られている。
英米の威信低下の中、英米を嫌う国が出てきていると言うことでもあろう。
一方、こうした中露に対して、米国でもパワーバランスが崩れているように見られている。
特に米軍制服組の中に、バイデン政権と距離を置く者も出て来ているとの情報もある。
また、世界的なインフレが、中東情勢を受けて再燃、これによって、米国の政策金利を引き上げざるを得なくなるような状況となると、現在、高金利となっても借り入れられてきた資金に返済不能事態が発生、2007年当時のようなサブ・プライムローン問題に類似した事態が発生、この後、リーマンショックに似た事態まで発生するリスクも囁かれている。
このように、米国も、政治にも経済にも不安の種がある。
こうしたことからすると、バイデン米国に日本が依存しすぎると痛い目に遭うかもしれない。
但し、米国に上述したような不安状況が顕在化しなければ、即ち、先ずは世界的なインフレも再燃せず、国際金融情勢に落ち着きが戻れば、米国・バイデン政権は来年の大統領選挙を睨み、早期に政策金利を引き下げてくる可能性がある、そうなれば、円・米ドル為替も、少なくとも130円前後にまで円高にもじってくるとの見方も出てきている。
予測しにくい、難しい世界情勢となっている。
真田幸光————————————————————
1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。1984年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支 店等を経て、2002年より、愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション学部教授。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メン バー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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