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安心を生む説明力の磨き合い、その極意を確認してみる(澤田良雄)

髭講師の研修日誌(104)
安心を生む説明力の磨き合い、その極意を確認してみる

澤田良雄( (株)HOPE代表取締役)

◆見学者案内で「安心できる」評価を広める楽しみ

 先日、各種工具トップメーカーN社グループ企業の「説明力向上話し方教室を」全社員対象として4クラス編成で実施しました。特に、説明力の重点は、トップの存在感ある事業経営の根幹を成す「全てのステークホルダーと共に発展するためにモノづくりを通して「安心」をお届けします」の方針に貢献できる研修です。

従って、日常の業務での新たな価値を生み出す提案、協力関係づくりの説明力は勿論、社外の方々にも、「安心を生む、活躍ぶりを紹介する」その機会での説明力の向上に着目しました。その機会とは、ステークホルダーの一環となる見学者および地域の方々、業務遂行上での協力関係社等関わる人との交流場面での対応にも生きるスキルアップ研修としました。

◆説明力を磨き合う体感研修

 従って、現在自身なりに実践している説明力の基本スキルの確認・診断をし、単にわかっている、自分なりにやっている段階から真に「筋道立てて、わかりやすく、感じよく説明する」の話力で、「この人の考えはいける」との安心感、「この人たちが造っているのだから安心」との現実を生み出す磨き合い研修です。

この研修策は 演習から掴み出す体感学として、まず、セルフプレゼンテーションで「説明内容を十分モノにしている強みは自信とゆとりある説明者となる」を確認し、即、相手の自己紹介の内容を生かした他己紹介に挑戦、そこには、正しく理解していない、間違ったらとの不安ある話しぶりとなります。だからこそ、見学者および、社内外での説明時には「伝える内容を自分のモノにする絶対必要条件」を確認しました。

さらに、説明の成果は質問を受ける状況が発生すること。それは、関心を持ち、当時者意識を持った人から、より詳しく、正しく理解する意図の証と確認し、いかに、質問者に感謝し、単純明快なる応答スキル演習は「お題拝借1分間スピーチ」です。これは、封筒に入ったお題カードに基づき即スピーチする緊張感高まる演習です。受講者の「やれるか不安、易しいお題を・・」との当初の表情が演習後、「1分間それなりの話ができた」この実感のほっとした表情が嬉しい。

なぜできたか、それは、「話せる力を潜在能力として持っているからです」と確認し、「話が苦手、自分はできない・・」こんな自分を粗末する事を吹っ切る気構えの転換です。そして、仕上げの演習は、自身の職務紹介を3分間プレゼンテーションとし、他メンバーから、見学者および他部門の立場としてのコメントの施しです。

◆説明内容はストリーに基づく筋道作りが肝心

この説明の前提は、当社、事業部、製品を紹介し、自身の仕事の役割、具体的に仕事の遂行内容を紹介し、「最高品質の製品の作り出を成し、安心してご利用いただけます。」と結びつける内容としました。この実施には、研修担当部門からの日常の見学者への当社紹介プレゼンテーションおよび案内各所の説明内容の動画を提供いただいた。

改めて、当社の理解、所属部署、そして、造り出す製品の社会的存在感、担当職務をストリーとして再認識する絶好の機会となったことは言うまでもありません。実は,T社常務工場長の今研修への意図でもあります。正に、見学者、社外の人との交流の場でも「当社を説明する」この見識は欠かせません。さらに、日常の活躍でも、建設的意見交換・改善提案の説明など多様な場面も本題に入る前提はこのストリーに根ざした説明の基本力です。

演習には、筋道例を提供し、演習時の話しぶりを診断し、わかりやすさを高める工夫、好感度の善し悪しを診断し、適宜OKポイント、そして、さらなる努力ポイントを現実を共通の教材として指導を重ねました。ここでは、以下、説明力を生かした見学者に向けた話し方について着目し、お役立ての日誌とします。

◆ご見学者案内を楽しむ話し方の心得              

N社同様、地域貢献活動として、企業見学を提供している企業も多い。深掘りポンプトップメーカーのO社では近隣の学校と提携されていまし、筆者も先般会議所主催での醤油トップメーカーK社、・化粧品メーカーF社を見学しました。正にコロナ禍での直に観る、直に社員との交流が無きときから、昨今は、この直にとのキーワードは嬉しい事です。

 従って、見学者に当社を知っていただき、当社製品の「安心を実感していただく」と共に地域社会へのお役立てのご見学者に対して、第一線で活躍する自身が知識、経験を生かし、直接知っていただける機会は喜びです。それは、当社の存在を示す一役を担える活躍がいの一つだからです。

ならばその話し方の心得はどんなことだろうか。それは次の5点です。

①見学者の立場に立った説明者の5つのパワー

  <1>当社・職場・担当業務に関する理解を十分に持ち合わせている当社社員としての見識・専門力パワー

  <2>人格・品格など好感力を兼ね備えたヒューマンパワー

  <3>ご見学者の立場に立って事柄を考えられるリサーチパワー

  <4>わかりやすく話のできるプレゼンパワー

  <5>場の変化に(人・見学条件等)に柔軟に対応できる創造パワー

 以上のパワーが相乗的に発揮されて、ご見学者に来て良かったとの満足感を得ていただき、会社の広報力となります。

①ハロー効果が生きるお迎え、出会いの話し方

 見学者は期待と興味を抱いて来社されます。その期待に応える第一歩の決め手は「第一印象」です。第一印象がよいとこれがハロー効果となり、以後こちらからの働きかけは全て良く受け取ってもらえます。 当社に関心をお持ちいただき、お出でいただけた感謝の念で「さわやかな笑顔」「明るい声」での「一歩近づいた元気な挨拶」でお迎えし、自己紹介を兼ねた挨拶は、丁寧なお辞儀、名前をきちんと紹介し記憶に残します。それは、見学者は説明者に対して親近感を持っています。職場内見学時の説明者としては「紹介されました、この仕事を担当しています○○です」そして、「どうぞよろしくお願いたします」と協力をお願いして、「どうぞこちらへ・・」と手をかざして示し、さっそうと、しかも、見学者のスピードに併せて、距離が開かないよう気配りして、誘導します。

②地域性と親近感への配慮

 地元の方々の見学者には、「日頃お世話になっています」のキーワードを心して案内します。そこには親近性を持った交流が生まれます。節度のある話し方の中にも見学者の持つ親近性、例えば「私たちは、地元にこの会社があることは誇りですので、できることでの協力、関わりをしています」との心の声に対応したいものです。そのためには、創業時からの当社と地域の関わり、現状の地域の変化、関わりなど知っておくことが大切です。そして、

 案内中に、このような話題が出てきたときには、「お世話になりました(ます)」「ありがとうございました(ます)」など感謝やねぎらいの言葉を添えていく配慮もします。言葉づかいも土地柄にあった言葉を活用するのも良いでしょう。そして、見学者にわかりやすく、感じのよい話し方の実践は、

◆見学者への配慮した説明10のコツ

①ご見学目的と説明の対応心得:見学者は、目的あっての見学です。ですから、業界の話し、当社の成り立ちと地域の関係、製品と身近な利用状況、技術的、一般常識、製造方法、価格の成り立ち、自社製品説明の基本内容をどう加工しておくか、あらかじめ準備しておくことも必要です。この努力が案内者に対する評価に繋がります。そして、社員の特性としての出身校、住まい地域、名声を得ている社員名・・・・などもあります。しかし、いくら説明内容を用意しても、話し方に配慮しませんと、わかりにくい、聞こえない、話す姿が不愉快、暗い、覇気がない、等と不評をかう事になります。そこで、

②表情は「笑顔は人と人の心の架け橋」この心得が話し手の表情の基本となります。但し、話す内容によっては、真面目さ、真剣さ、時には、悲しさなどが自然に表情に出て来るものです。そこに人間の味があります。 

③態度:話しをするときに言葉は一応理性を通して現れますがが、態度にはとかく理性よりも感情が現れてしまいます。見学者にどういう気持を持っているかによって、自然と態度に現れるのです。「ご来社いただきありがとうございます。」この謝念に基づく言動が好感を生みます

言葉:3つの調和に留意することです。

  1)相手の理解レベルに対応した言葉を使う。これは専門語(技術、業界・社内語、横文字等)をどう見学者の理解レベルに落とし込むかです。学生(小・中・高・大)、職業、職種(専門分野に近い、関係なし)等見学者の特性に合った表現言葉に工夫が必要です。

  2)心に調和する事です。ひと言でいえば敬語的言葉の活用。基本はあくまで見学者は お客様です。お客様意識を感謝の念で持てば、不快感を持たせることはありません。年齢が若い方や、協力会社、業者の方々にも配慮が必要です。

 3)お願いするときのひと言の工夫はクッション言葉の活用です

   こうしてくださいと指示命令は御法度です。このときにはクッション言葉の 「恐れ入りますが」「申し訳ございませんが」「もしよろしければ」「お手数をおかけいたしますが」「お差し支えなければ」「大変勝手を申し上げて恐縮ですが」を生かします。 それに、依頼事項には「かしこまりました」「少々お待ち下さい」など見学者への心づかいの言葉です。

⑤話題の工夫:説明内容によっては、見学者の身近な話題を活用することです。例えば、大きさでも、東京ドームの何個分に値しますとか、見学者の特性や条件などを事前に調べて話題の工夫を楽しむことです

⑥物の活用:製品の実物や、機械の部分など「見せる」「さわらせる」「聞かせる」「体験  させる」など言葉で説明してもなかなか共通理解が難しい事柄は、物を用意して、体験的に理解を促進する工夫です。もちろん案内箇所に用意されている説明用グッズを組みあわせます。

⑦デジタル機器を活用:大勢対象ではパワーポイントで創った画像・動画をプロジェクターの活用です。綺麗ですし、動きもあるし、データーもグラフ化で理解を高めます。また、現場での説明でも、見せられない、見えにくい、今は稼働していない現在に、あらかじめ動画編集したタブロイド類の活用も効果的です。

ゼスチャーの活用:身体の活用を効果的に思い切って使ってみます。たとえば、  「どうぞあちらをご覧下さいませ」の案内場面でも単に言葉だけでなく、手をかざして目 線を添え、そして、見学者に目線で確認します。また、実際にやってみせることも効果的 です。また、カタログ、画面描写の活用時には、「こちらのここをご覧ください」と説明箇所を示し、注目していただく誘導が必要です。

⑨理解を確かめながら話します:うなずき、相づち等の反応に気を配ります。時には「いかがでしょうか」と問いかけを活用し、興味が持続しているかどうかを観察します。

⑩レポート作成への支援:見学目的を確認して、目的に対応した説明箇所の強調ポイントを明確にします。その工夫は、学校、世間での身近な話題、地域の情報等可能な限り用意し、当社の製品、商品、サービス、そして、設備、仕事への取り組み姿勢など説明時に理解を助長する話題として活用します。

◆ご質問への対応

質問はそれだけ関心を示してくれた証です。歓迎・感謝し、より理解を深める機会として対応します。その極意を10ポイント示してみます。

①質問者の意図、及び内容を十分理解します。

②質問の主旨に対応し、明瞭、簡潔に、要領よく適確に答えます。

③質問の主旨がわかりにくいときには問い直して、正しく理解します。

④質問の途中で話の遮りや、早合点に注意、最後まで聴きます。 

⑤中途半端な答えは慎み、「後ほど確認してお答えします」と約束します。

⑥答えるときには親近感を持ち、豊かな表情、理解を高める工夫を加えます。

⑦相手の理解レベルにあった言葉使い、そして話題の配慮をします。

⑧質問者の見かけでの先入観は極力持たないようにします。

⑨質問しやすい雰囲気を創ることも時には仕掛けます。

⑩時には批判者もいます。

「ご意見・ご忠告ありがとうございます。今後に生かさせ ていただきます。」と丁重に対応すします。決して、感情高ぶりの否定や、持論での論戦には入らないよう自律します。

◆お見送りの挨拶は余韻を残す

 この瞬間が案内の喜びの瞬間です。見学中の評価がここに現れるからです。見学者からの「ありがとうございました。」「よくわかりました、楽しかったです。」「また来たいですね、友人に紹介します。」「さすが○○社ですね、安心しました。」「お世話になった方によろしく。」と言われますと、「良かった!」と満面の笑みで「ありがとうございます。「ご協力いただきありがとうございました。」「ぜひ、また・・ご紹介下さいませ。」と丁寧にお辞儀を添えます。 案内途中で、特にご協力いただいた方には、その旨、お礼言葉をかけます。そして、

お見送りは、見えなくなるまでその場に立ちつくします。見学者の方は案内者と出会いができたことを心のおみやげとしています。ですから、いつまでも余韻を楽しみます。

 以上、場面を想定しつつ、「この会社なら、この人たちが成すならば・・安心」との直に体感していただく説明に関わる話し方の諸条件を記してきました。日常の活躍場面に是非落とし込んで活用を念じます。

研修を終え、ふと想う。それは、コミュニケーション方法はデジタル機器の活用により、人に直に会わずとも、現物、現地を観ずともおおよその理解が可能になった。いや、ビジネス取引も成約し物品の購入や事は運ばれる。しかし、直に合って、直に観て、直にお聴きし、直に話して、直に食べて、直に着てみて、直に使ってみての対人、対面、体験によるコミュニケーションは、正しく理解し、安心を生むこの上ない方法であることを再確認した研修であった。

それは、頭(知識)心(心の持ちよう)行(実践)による学びによる言動の変わりが無くして研修の実効なしだからです。受講者が実践しての磨き合いは、既に学び込んだ頭心の行の実態を確認、診断し、スパイラルに頭心行が向上していく成長の喜びづくりです。

研修終了直後、私は話が苦手ですので、緊張しましたが、話ができる自分であるのかなーと実感しました」ありがとうございました」と笑顔で声がけいただく受講者とグータッチは講師冥利でした。多分、見学者に「安心できる会社」と評判を広める一役を担う活躍ぶりを楽しむであろうと想定している今、です。

 

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澤田 良雄

東京生まれ。中央大学卒業。現セイコーインスツルメンツ㈱に勤務。製造ライン、社員教育、総務マネージャーを歴任後、㈱井浦コミュニケーションセンター専 務理事を経て、ビジネス教育の(株)HOPEを設立。現在、企業教育コンサルタントとして、各企業、官公庁、行政、団体で社員研修講師として広く活躍。指導 キャリアを活かした独自開発の実践的、具体的、効果重視の講義、トレーニング法にて、情熱あふれる温かみと厳しさを兼ね備えた指導力が定評。
http://www.hope-s.com/