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【清話会会員企業インタビュー】和心システム㈱(増田辰弘)

増田辰弘が訪ねる【清話会会員企業インタビュー】第27回
システム開発業界の持つ3つの課題を克服し成長路線を進む
お客様と共に“和の心”でシステム開発を進める
和心システム㈱

■独自の人材確保、育成戦略

 金融、公共、人事給与などの業務システム開発とインフラ構築を行う和心システム㈱(本社:東京都港区、横山光社長)は1985年の創業で、IT業界ではいわば老舗企業に入る。
 
 40年近くシステム開発とインフラ構築に携わり成長して来たということは、変化の大変激しい競争社会の荒波に耐えて来たということでもある。と言うのも、この業界は日本の数ある産業界のなかでも厳しい業界の一つであるからだ。

 その第1は人手不足問題である。

 なにしろ供給力は少子高齢社会でそう増えて行かないのに需要はどんどん増えて来る。どうしても良い人材は大手企業に流れる。そのため同社は、発想を変えて大学の法学部や文学部などの文系の新卒学生を採用し、システム開発者に育成することをベースにしている。IT未経験者でもまずは入社してもらうことを基本としている。

 それと、就活情報サイトを使ってもどうしても資金をかけられる大企業に比べると目立たないため効果的でない。逆に、こつこつと都内・地方の大学を回るクラシックな方式を取っている。最近そんな企業は少なくなっているので、この方法によって大学の就職課との関係を構築し、学生にアプローチしている。採用した社員は半年程度の時間をかけて研修しシステム開発者デビューとなる。

 この人材育成には同社なりのいくつかの工夫がある。まず、社員研修のシステムの多様化だ。採用した社員の研修は基本的にIT技術の基礎から始める。社員により飲み込みの早い社員もいれば遅い社員もいる。大器晩成型で入社時は目立たなくてもやがて思いがけない開発能力を発揮する社員もいる。そのため同社ではケースに応じた多様な人材育成を心がけている。

 こんな創意工夫をしながら何とか年間5人程度の社員を確保している。横山社長、「今後は中国人、ベトナム人などの外国人社員の採用も本格的に考えねばなりません。(現在は100人の社員のうち3人の外国人社員がいる)。また、男女の比率は男性社員が80人、女性が20人ですが、これも次第に女性エンジニアを増やす方向で努力して
います」と語る。

■ユーザーとの安定的取引で課題を解決

 第2はシステム開発における業務受託の構造問題である。

 同社の仕事は、例えば大手電気メーカーなどが手掛ける金融、公共、人事給与などのシステム開発やインフラ構築案件を技術支援する仕事である。技術的には高度な仕事であるが、力関係で言えば、発注企業と受託企業の関係いわゆる下請け関係にある。

 自動車部品をつくる街工場、これはどうみても親企業の自動車メーカーからいじめられそうな存在に見えるから、これを守ろうとする動きが入る。下請けGメンが動き、過度な買い叩きはないのか、支払いの遅延はないのか、十分とは言えないまでも絶えず目配りはされている。そのため、製造業においては人件費や光熱費などの価格転嫁はかなりの企業で実施されている。

 ところが、このシステム開発などの受託業務は仕事が高度で発注企業も受託企業もレベルが高い。一見、下請け課題のような問題は発生しないように見える。ここに大きな落とし穴がある。仕事の構造は基本的には町工場と変わらない下請け構造問題が横たわっている。そして、目立たないがゆえに見過ごされやすく、システム開発の受託で下請けGメンが動いたという話はあまり聞かない。それゆえシステム開発の仕事は会社や社員がとても消耗しやすい経営環境にある。

 最近で言えば、岸田政権の定額減税である。同社もある大手電気メーカーの人事・給与システムの運用・保守に携わっているため影響を受けた。物価上昇分をカバーするという定額減税は社員にとってはそれなりに良いことだが、会社の経理部門などでは対応業務の負荷が増え、また人事給与システムを提供している会社では対応に追われた。

 それも今回は、扶養家族の数や納税額による分散給付、減税額が満たない場合の税金の「調整給付」という還付支給などかなり複雑である。このシステム変更にかかる作業量がどの程度なのか。作業支援を行っている多くの企業ではどの程度の売上となるのか、発注企業とシステム開発会社との交渉が行なわれている。

 和心システム㈱については、人事給与システムを提供している大手電気メーカーとの契約期間が長く、人間関係がスムーズでよく意思疎通を行っているため、この問題についても計画的に処理できているが、こんな問題が常に横たわっているのが現実である。

■技術向上委員会が
 長期の技術本部

 第3はシステム開発の技術の変化が激しいことである。

 同社はこのシステム開発の仕事を始めてから40年になる。この間の技術の変化はめざましい。昔は多く使われていた言語が廃れて新しく開発されたものに置き換わっており、開発手法も顧客の要望に素早く柔軟に対応できるよう変化しているほか、プログラムコードを人間が書かなくてもよいローコード・ノーコード技術やRPAも発達した。

 このような環境下で、常にユーザーの開発要求に応えるべく最新技術に目を向け社内環境を整備し、変化する新たな要請に応えて来た賜物である。こう述べるといかにも簡単そうだが、先にも述べたように大手企業のようなきちんとしたシステム開発の専門教育を受けた人材確保ができず、基本は文系の人材を採用し、一人前のプログラマーに育成するやり方でこなして来たのだから大したものである。

 同社ではIT系国家資格や特定の製品に関する民間資格などを取得すると手当を出している。現在、同社の資格保有率は9割以上とかなり高いが、これも強制しているわけではない。また、同社の仕事は業務の性格上、ユーザーである企業の中で仕事をする場合が多い。だから、新橋の本社には勤務している社員が何人もいない。この課題をどう処理するかも社員の技術力アップの視点から言えば大切である。

 そこで、本社に技術向上委員会を設置し、新しい技術情報の共有や資格取得に向けた勉強会の開催などを行っている。

 また同社では各地に散らばっている社員を時折集めて交流させる機会を積極的に設けている。事業計画説明会、新入社員歓迎会、忘年会、ブロック別の小さな交流会など様々な形で、できるだけ若手社員の企画で交流を進めている。難しいのは、現代は体育会系のように号令をかけていっせいに動かすやり方が適当ではないことだ。

 このシステム開発の世界は大変難しい。例えば、今AIの話題が世の中を突風のように駆け巡っている。このAIが現在の業務にどんな影響を与えるのか。またどのように活用すべきなのか。新しい技術の波に呑み込まれるか、逆に波に乗り活用するかでは大きな違いである。

 いずれにせよ、これまで述べて来たシステム開発業界に横たわる3つの課題をいかに取り組み解決するかは今後の経営上の大きな課題であり、これをクリアした企業だけが次の成長路線に踏み出すことができる。同社も様々な工夫を重ねつつこれまで課題に取り組んできたことは大きい。しかし、この3つの課題は今後もっと深く、もっときつくなる。最先端の業界であることは置いていかれる確率もそれだけ高くなると言うことであり、これまで以上の新機軸が求められる。

■主たる顧客のシステム開発
からユーザーのすそ野を拡げる

 和心システム㈱は、1985年 に横山光社長の父である横山義雄氏が創業した会社である。その後、会社設立初期から社員であった飯干徳勝氏が2代目社長となり、彼は3代目ということになる。初代の横山社長は大手システム開発会社に勤務していたが、独立したものである。同社の仕事は会社の業務用システムの開発とそのインフ ラ構築をメインとしたシステムインテグレータで、大企業や金融業者のシステム部門に技術支援として社員を派遣することが主業である。

 最初は、創業者が大手システム開発会社から独立した時に持っていた金融システムのノウハウを活かし大手電気メーカーF社とN社の仕事をメインとしてこなしながら、その後いろいろな分野に進出してきた。これまでに築き上げた人脈を生かして横展開していく手 法である。

 現在の主な支援業務は、金融分野では年金システムや保険システ ム、社会公共分野では官公庁のシステム、物流分野では海上輸送システム、その他としては人事・給 与システム、販売管理システムなど幅広に行っている。また最近は公立病院や、警察本部など入札に参加して公共システムにも参入し仕事のすそ野を更に拡げ、ここ数年は業務システムの土台となるインフラの構築も手掛けるようになった。

■自社製品の開発、販売に乗り出す

 これまでの仕事は、ユーザーからの依頼を受けた業務用システムの開発とインフラ構築である。しかし、現在同社は介護福祉事業者とのアライアンスにより自社製品の開発を手がけている。

 一つはクラウドで行うグループ ホームなどの「介護施設労務管理システム」である。ケアマネジャーやヘルパーは入浴サービスや生活支援などの様々な介護サービスを行うが、そのほかにその勤務状況や介護実績を報告するという事務作業がある。これが意外にも大変なのである。

 このシステムは、タイトルを「介護労務革命」と銘打っているようにタブレットやスマートフォンの活用でケアマネジャーやヘルパーの勤務状況、介護実績をリアルタイムで管理する仕組みである。本来の業務である彼らの介護以外の事務の作業量の負担を大幅に削減させるものである。しかもこのシステムにより、ホームヘルパーの訪問調整などが簡単にできて来る。

 もうひとつの商品が「リハビリ(機能訓練)支援システム リハリーダー」である。リハビリで大変なのはその作業に本人のモチベーションが上がらないことである。このシステムは画期的でクラウドを使いタブレットひとつで顔を洗う、ひげを剃るなど、本人が達成したい目標を定め、達成するために必要なリハビリ運動プログラムの仕方が出て来る。

 長期目標を設定すると、その目 標を達成するために必要な作業が分析され、それに応じたリハビリ 運動が細かく出てくる。このシステムに従ってリハビリスタッフがデイサービスなどで機能訓練を行えば良い訳である。

 リハビリは本人が改善意欲を保ち続ける必要が ある。本人のモチベーションが失われてしまうとなかなか効果的なリハビリは出来にくい。これを飛躍的に改善するサービスである。この2つの介護福祉ソリューションはまさに画期的とも言える商品である。

 どの業種でもそうだがどんなに 高度な内容の仕事でもどこかから受託したものはリス クは確かに少ないのかも知れないが、多くの場合利益率は低く、社員のモチベーションはそれほどには上がらない。一方、このような自社製品はリスクが多く、また市場把握力や販売力が求められるが、社会貢献度は高く、社員のモチベーションは上がる。

 この大きな山を越えた時に会社は変わる。良い人材や情報が集まり、組織に活力が出て来る。今回の横山社長の登場はまさにその好循環経営への分岐点である。和心システム㈱が第2の創業で新しい世界に踏み出すならばこれは面白いことになること請け合いである。

 


増田 辰弘
〈ますだ・たつひろ〉
1947 年島根県出身。法政大学法学部卒業後、神奈川県庁で中小企業のアジア進出の支援業務を行う。産能大学経営学部教授、法政大学大学院客員教授、法政大学経営革新フォーラム事務局長、東海学園大学大学院非常勤講師等を経てアジアビジネス探索者として活躍。第1 次アジア投資ブーム以降、現在までの30 年間で取材企業数は1,600 社超。都内で経営者向け「アジアビジネス探索セミナー」を開催。著書多数。