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新人に寄り添う兄貴社員の活躍の楽しみ方(澤田良雄)

髭講師の研修日誌(106)

新人に寄り添う兄貴社員の活躍の楽しみ方

澤田良雄((株)HOPE代表取締役)

◆選ばれた役割に寄り添いの心意気

「絶対怪我させないことを期して指導します」「忙しい日々になりますが、こちらから声がけして、安心感を持たせます」「自分の失敗も話し、緊張を解きます」「愛を持って指導します。それは、わからないところはわかるまで指導する覚悟です」「指導者側の立場だけで批判せず、新人の立場に立って物事を考えます」「新人から、相談されるような信頼される先輩として接します」「新人から頼られるB・Sになると共に職場での人財(いなくて困る社員)となります」「新人の指導に精一杯取り組み、その影響で職場全体で行うよう周囲に働きかけます」・・・。拍手。拍手。

これは、「ありがとうの気持ちを社名にしました」というS社でのB・S活動研修の最終講での「B・S活動の今後に心すること」のテーマでまとめ上げた発表内容です。 S社は物流・機工・構内操業支援を融合的に事業展開する大手企業であり、企業理念は「人を大切にする事」とし、人材育成を本格的に推進している企業です。対象者は、第一線で活躍する2年~10年社員であり、任され、責任持って活躍する日々です。従って、この時期にB・S(兄・姉役)に選ばれ、新たな期待を加えた活躍は並大抵でないだろうと推察できます。

 そこで、その活動の気概を共有化する事項として「選ばれた自分」こんな嬉しいことはない。職場は力のある人のところに仕事が集まる。それだけの能力と人望が認められた証である。従って、自分に誇りを持って、期待に応えた活躍を楽しみを、自ら招き入れた機会である。だからこそ、自己の持ち味を生かした取り組みで、さすがの存在を高めたら良い。」と確認しました。だからこそ、そこには、本気・本腰での入れ込みが、やる気・元気を喚起し、根気よく施しを楽しむと「おかげさまで」との感謝の言葉が贈られる。それは、さらなる人気を得ることです。と、この二つの本と、5つ気の気概が新人への寄り添う指導と支援の楽しみと確認しての研修としました。それは。S社の3原則である「公言実行」「自問自答」「感謝」に即しての実践だからです。

そこで今回は、昨今の新人定着に関する話題は多いことから、その具体的育成の一助として記してみることにしました。

◆新人へ安心を育む寄り添いでの施しとは・・・

さて、各社の新人へ指導支援制度は、新人指導員制度、メンター制度等様々ありますが期待される活躍は大方次の6点です。

1.仕事の基本を完璧に身に付ける指導、支援

2.対人関係への不安を払拭し、職場環境になじみ、各自との親和感を高める

3.不安、心配事を抱え込まないよう気配りのコミュニケーションを図る

4.自律した生活スタイル(健康、遅刻なき、急遽な休みなし、疲労回復)を習慣化するよう適宜、相談、指導の施しをする

5.働きがいを享受できるように喜びの実感を演出、提供する

6.職場の上司、先輩、人事スタフと連携し、定着に心する

 などの役割期待であり、全社・職場を挙げての新人の定着策である事は言うまでもありません。そこで、

◆寄り添いの実践の楽しみ方

 ならば、拝命後、どのような心構えを持って活動していくか、その新人への思い入れ、気配りの寄り添いの実践の楽しみ方は、どうすべきなのだろうか次の6点を確認しました。

①自分の知っていること、経験は惜しみなく与える

②求められれば、いつでも、どこでも率直に意見交換する

③新人の個性、良いところを認め、他の人へも紹介していく

④時にはため口での会話をするが、他の先輩、上司時にはきちんした言葉で話す指導など妙に新人を甘やかすことは控える

⑤言うことによく耳を傾けて、話すことを楽しませる

⑥問題、不安、悩み事には察してこちらから声がけする

ことなどがあります。だからこそ、新人からの反応として

①親切に教えてくれて、やる気が出る

②褒められたり、ねぎらってくれたりすることが嬉しい

③朝の挨拶どきニコニコ声がけしてくれるとほっとする

④指導された仕事がうまくいったときは嬉しい

⑤他の人(B&S以外の職場の人)からほめられたときは、感謝です

⑥話をじっくり聞いてくれたときには安心感が出た

などの内容が指導レポートに記される楽しみとなるのです。

◆よく出される人間関係が云々・・の対策は

さて、退職の理由として、取り沙汰される理由に「人間関係云々・・・」とあります。実に、学生から企業人への脱皮が成されていない未熟性が気になります。それは、筆者の新人の覚悟は「する事と、人は選べない」学生時代の、仲良しグループで好きなことを、好きなように出来ることは無いとの新人指導への事実があるからです。

 改めて、「対人関係関係力とは、他者を理解し、自分も理解してもらい、互いに協力関係を創り出せる力」のことを言います。ですから、仕事ができる事にプラスして、人間味の豊かさも欠かせません。それは、温かみ、思いやり、を兼ね備えていることです。従って、より添いの新人育成では、脱皮させていく人物的影響力が問われます。それは、「このような人になりたい」との憧れの人であり、自然感化させていく力となるからです。そこで、自身の人間味の良さを次の8項目を自問自答してみましょう。

①明朗な人(明るい・物事を肯定的に見て楽しい人・他人の自尊心を守る)

②誠実な人(言行一致で嘘がない・正直、善意で安心・奉仕の精神に富む)

③信頼できる人(頼りになる・約束したことを途中で投げ出さない)

④寛容性のある人(他人のマイナス面も許せる、愛情深い・度量が広く善意にこだわる)

⑤熱意のある人(使命感に燃えている・忍耐強い・倫理観に基づき勇気がある)

⑥頼りがいを感じさせる人(人格、品格を感じさせる・深さ・温かみを感じさせる)

⑦共感性のある人(他人の立場にたてる・優しさを感じる・他人の痛みがわかる)

⑧調和感覚のある人(物事を広い視点で視る・固執的な考え方でなく柔軟性がある)

ということです。とかく、「先輩が・・・」と不安視される人は・暗い、劣等過剰、軽薄、自己中、支配過剰・・ということになります。実は、

  • 指導する新人は選べないのが現実です。ならば、ウマが合わない、気が合わない、いやな、嫌いなタイプと思ったときにはどう良き関係を創るかその寄り添いは、
  • 長所発見法=これは、人は十人十色、長所もあれば短所もある、単なる印象や思いこみで嫌いと決めると、短所ばかりが目につく。短所も見方を変えれば長所です。そこで長所に目を転じて、まずは、新人の良さを書き出してみると良いのです。

◆指導時の楽しみ方

 こういう先輩だから、指導されることは安心感を持たれます。ならば指導の施し方はどうするか、ここに着目してみると、まず、

①指導内容は次の5つの柱があります

1)知識の修得

 当社社員としての基礎知識・担当の仕事内容(目的と成すことの知識・・・)

2)技能・技術の修得

 まずは守(基本)となる仕事手順、方法、コツ、絶対安全、質の見極め、装置、設備の取り扱い、異常感知と連絡、必要物品の扱い方。体得する自己鍛錬・・・。

3)チームメンバーあり方 

 組織の仕組みと自身の立ち位置、責任感、意欲、先輩・上司への対応、周囲への協力、報告、連絡の重要性とその方法・・・。

4)人間性の向上

 人の関わりを創り深める言動、接客・規則の遵守、言葉遣い、倫理感、プラス思考、整理・整頓・清掃・・・。

5)社会性の向上

 職場生活、プライベート時間の過ごし方、余暇活用の生かし方、健康管理、(寮生活)友人関係お金の管理・・・。

などがあります。具体的的には業種、職種によって違いがあります。次に指導の施しでの寄り添いへ留意事項を確認してみますと、

②指導時には、「何のため」「なぜ」重要かを丁寧に説くことです

その実践例として次の9項目を確認してみます。

1)自分が習う立場で教育する。それは、わかりやすい言葉の活用、言葉だけで無く、現場、現物を活用、時には動画の活用も生かす

2)概念や仕組みが、どうして決められている「何故」「どうして」の説明を丁寧にする。

3)手順は「やって観せ、言って聞かせて(きちんと説明)、実際にやらせて、ほめて自信持たせる。もし不備な点は指摘し再指導とする

4)一方的にならず、適宜、理解程度を確かめ、質問を仕向ける。

5)そこには十分な話し合いをすることもあり、新人からの異見を聴くこともよい

6)失敗時には、自分の失敗体験を紹介し、以後の不安を払拭し、やれば出来るとの気概を喚起する

7)「決まりは守らせる」そのためにもその必要性を説き、自分が模範となる

8)訊いて来られやすい雰囲気を日頃から創り、いきなり来る、自分の仕事が

忙しい時こそ、快く迎える度量を意識する

9)教えたことがきちんとできればほめる。この小さな自信の重ねが、面白い、好きになる、やがて適正となる

 現実は、指導者も多忙の中での指導の施しです。だからこそ「忙しい中でも丁寧に指導いただけた」この指導が新人の学び力を高揚させ、つかみ取る、モノにする本気度を高めます。そして、正しい仕事のできる育成には、ハウツーでなく「何故どうして」のハウホワイの指導実践がミスを最小限のとどめ、無駄な時間防止になります。新人も10人十色です。昨今の現場からの声を基に、次にアドバイスを記してみます。

③こんな新人もいます。6タイプの指導例の楽しみ方は

1)指導者側の願望だけで批判せず、まずは徹底指導する=まず「マニュアル人間」、言われなければ出来ないタイプです。このタイプへの心へは、「こうすべき、このくらいは気がつくはず、出来るはずの勝手な思い込みは指導側の経験則による決めつけです。この願望は、自分とは違う、この新人の特性に即した事細かな指導に変えることです。このタイプは真面目で、言われたことはきちんとやるのです。

2)都合のよい持論には直接指導をする=このタイプは「自意識高い・未熟さを認めない・他責型・自分が敢えてやることない」というタイプです。AI活用による都合よい持論をかざす輩もいます。やっかいですが、仕方ないよと直接対決から逃げないで、一対一できちんと当社の社員として考え方を基に話し合うことです。

3)個性発揮せよ。その前に基本徹底の指導が肝心=これは「基本習得の努力軽視・自己中・耐性不足・受けねらい・企業人認識不足」のタイプです。対応は、 仕事の成長は守・破・離のステップが原則。基本も完全遂行出来ずして個性、個性と便宜的に言葉を使って言い訳させることは禁物です。地味な枠にはまる仕事の第一段階を大切にさせます。

4)指導の受け方を指導する

 その場が良ければ良い・被指導嫌い・リセット傾向(その場だけの対応で積み重ね無き)、まじめに聞くが、それは能面づら、反応示さず、メモとらず、その場対応だけで、次へのつなげや、積み重ねが乏しい。一見良き学びであるようだが、実は、早く終わることだけ願っているタイプです。ならばどうする「わかりました」のあと「ポイントを言いなさい」の問いかけをする。メモの癖付けで記憶は消えるが記録は消えないとの重要性を説き、わかりましたとは「正しく事を行うこと」の約束であり、それは実践する責任であることの周知徹底をすることです。

5)学ぶ楽しみの快話で親和感を高める

 このタイプは「対人関係が苦手・自分から話さない・上の人は解ってくれてない」という人もいます。心情的距離は、訊きに来る、報告、相談をしづらくします。会話を通じて心の距離を縮める施しが不可欠です。そして指導後の状況を気に掛け、よき点の現実には、褒め、ねぎらいのひと言のシャワーを掛けます。

④パワハラを気に掛けず、愛情ある叱り方のコツ

 叱るとは、教えたことが双方の善し悪しの評価軸になっていることです。従って、新人も、出来ていないことの自覚があり、いつか言われるとの受け入れ感はあるものです。従って、きちんと叱ってくれるから安心し、自身への真剣に育ててくれる指導者として受け止めるのです。従って、教えもしない、ただ勝手にあれこれ言う指導者では、論外です。パワハラ・・・という心配の言葉を耳にしますが。憧れの先輩であり、きちんと指導しての叱りは、例え多少の厳しい言葉であっても「パワハラされた」ではなくむしろ「きちんと叱ってくれる」との信頼度があると筆者は診ています。その施しのコツは次の7点です。

1)教え、その実践の事実を確かめてから叱る。発生時を基点に、時には本人からの言い分をよく聞いて、事実の善し悪しを確認するとよい

2)本人が周囲の人の気まずくなる場で無く、最適な場所を得て、相手の目を見て言葉をかけよう。そこに真剣さが伝わる

3)双方でミスの発生プロセスをたどり、指導内容との相違などの要因を確認して、本人に指摘し、反省から今後の解決に結びつける

4)他の人(以前の新人)と比較しない。自尊心が傷つき、自信をなくす。時に反発も出る

5)改善に努力を要するときには、丁寧な指導と時には協力することを告げる

6)叱ったとは気にかけ、しょげている時などの時には、直ぐフオローをする

7)改善され、ミスがなくなったときには惜しみない褒め言葉を掛ける

⑤シグナルから察するコミュニケーションを生かす

 「急にやめると言ってきて」との言葉をよく聞きます。しかし、それは、心中の心中による言動の変化を汲み取っていない証です。なぜなら、新人の心中の変化は、楽しさはそれなりの言動となり、逆に、定着への動揺、悩み的心中は行動によりシグナルを送っています。気にかけて観れば、挨拶、出勤時刻、歩きの後ろ姿、仕事への取り組み時の活力等の変化が一例です。その変化は「気づいて欲しいとのシグナル」です。従って、本人からのこのシグナル(兆候)に早期に気づき、尋ね、聴き、不安、いらぬ先読みの心配説の小さい芽を摘みとっていくと良いのです。この察しのコミュニケーションはメンタル不全を未然に防ぐ予防管理にもなりますし、突然やめますの事態は起こらないと断じます。勿論、本人の勝手論が災いすることも承知の上です。

但し、シグナルからの察した事態に指導者自身で全て解決に対応すべきことではありません。状況によっては、上司への報連相を生かす事により、現状を正しく理解頂き、適宜適切な支援を仰ぐことです。実は、上司がB・Sの推薦時には「君なら出来る。期待しいています。頑張ってください。何かあったときには私が責任持って、対応しますから・・の言葉の前提は「必ず、うまくいくよう自分がカバーする」との覚悟があるからです。これこそB・Sに寄り添った上司の働きかけなのです。

 なぜなら、新人は、職場としてどうしても必要な戦力としての採用だからです。だからこそ、職場ぐるみ、会社ぐるみで関わる人達の一体となった寄り添いの育みの取り組みが不可欠なのです。

 新人ももうすぐ半年経ちます。この時期、その成長ぶりを指導者と新人双方で「よき環境、良き関係、共に成長の喜び」を確認し合うことが「より逞しい一人前になる」

楽しみを実感する道筋です。S社の当研修も3年重ねて来ました。昨年、一昨年受講された各位のその後の活躍ぶりをお聞かせいただくことは実に嬉しく、今回も発表した内容を共有化して、各自の条件に落とし込んで施しを楽しまれていることでしょう。それは、新人から「おかげさまで」と生涯言葉がけを得る兄貴としての後輩への育みです。その姿を思い浮かべることは実に楽しいことです。

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澤田 良雄

東京生まれ。中央大学卒業。現セイコーインスツルメンツ㈱に勤務。製造ライン、社員教育、総務マネージャーを歴任後、㈱井浦コミュニケーションセンター専 務理事を経て、ビジネス教育の(株)HOPEを設立。現在、企業教育コンサルタントとして、各企業、官公庁、行政、団体で社員研修講師として広く活躍。指導 キャリアを活かした独自開発の実践的、具体的、効果重視の講義、トレーニング法にて、情熱あふれる温かみと厳しさを兼ね備えた指導力が定評。
http://www.hope-s.com/