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真田幸光の東欧?! 見聞録(全3回) 後編「ハンガリー」

【真田幸光の経済、東アジア情報】
真田幸光の東欧?! 見聞録(全3回)
後編「ハンガリー」

真田幸光(愛知淑徳大学教授)

[ハンガリー]
翌日は、ティミショアラから、ハンガリーのガイドさんとバスに変わり、ルーマニアとハンガリーの原風景に触れながら、ハンガリーの首都ブダペストに向かいました。
行きゆく道は正に大平原、とうもろこしやひまわり畑でありました。
ルーマニアもハンガリーも共産主義時代は道のインフラが悪かったが最近整備されており、高速道路も出来たが、有料が原則であるそうです。

ハンガリーへの国旗越えは夏休みから働く場所、特にドイツに戻るトルコ人などの移動から、大変、混雑していました。
そこで我々は古い国境を通過、30分ほど時間セーブしましたガ入境には一時間半ほどかかりました。

近代の歴史を中心に、ハンガリー人の80%は一番嫌いな国はルーマニアと答えるそうです。
また、ラテン語系のルーマニアとウラルアルタイ語を話すハンガリーの言語の違いも両国を遠い存在にしているようです。
道すがら見ているとルーマニアもハンガリーも現地資本、ドイツフランス資本のショッピングモールが散見されました。
更にお墓もいくつか見かけましたが、土葬中心が今や火葬中心になってきているようで
す。

そして、人口170万人のブダペストに向かう途中ケチケメートに立ち寄りました。
落ち着いた中世の雰囲気をそのまま残した、食料品加工工場などがある立派な地方都市でした。

ハンガリーは、中央ヨーロッパの共和制国家であり、西にオーストリア、スロベニア、北にスロバキア、東にウクライナ、ルーマニア、南にセルビア、南西にクロアチアに囲まれた内陸国であります。
首都はきれいな都として有名なブダペストであります。
世界遺産のこの街は、街を北から南へ流れるドナウ川を挟んでブダ地区とペスト地区に分かれています。

ドナウクルーズがあり、ドイツのパッサウ、ウィーン、ブラチスラバなどを繋ぎ、ブダペストに至る航路は約一週間掛かるそうです。
また、テスコ (Tesco) というイギリスのウェリン・ガーデン・シティに本社を置く、多国籍小売企業であり、金融、電気通信、ガソリンスタンド、通信販売などにも手を広げている会社がありますが、ハンガリーにはかなり進出していました。

そして、大使館を訪問、説明を受けた後、その後、懇親会交流会を開催しました。
交流会には、小野大使、日系商社トップ、日本人経営者のお三方と意見交換致しました。

外務省などの情報は以下の通りであります。

人口は960万人、面積9.3万平方キロメートル、GDP1847億米ドル、一人当たりGDP18953米ドル、2023年GDP成長率マイナス0.9%物価上昇率17.6%、失業率4.1%、政体議員内閣制一院制上院199人。在留邦人1,993人、日系進出企業180社、スズキ、デンソー、TDK、イビデンなど。EU、NATO 加盟国と言う国であり、
ウラル起源の遊牧騎馬民族国家で、西暦1000年にキリスト教国家として建国される。カトリック教が65%、
音楽、グルメの国、コカイワイン、フォアグラ、ガリツア豚、リスト音楽院など有名、マジャールスズキも有名で、良好な対日感情を持つ国
豊かな温泉文化の国、ローマ、トルコの影響あり、現在温泉地約500箇所
人材、特に自然科学系人材が強い国自然科学系ノーベル賞受賞者は人口比率で世界一を自負している。
と言う特徴のある国である。

現在、2010年からのオルバーン政情は比較的安定的、但し、権威主義的、統制国家的傾向あり、批判も出ている。
経済はEU基金が入らず、やや鈍化傾向。それを外資、就中、中国資金でカバーしている。食品を中心にコストプッシュインフレは見られるが、外資による雇用機会は多く、社会的不満には至っていない。
中国本土に対するオルバーン政権の警戒感は低い。
EU加盟国なるも、対中、対露外交姿勢はEU基本的姿勢とは異なる。
キリスト教的価値観に基づく家族主義が特徴。
日本とは、155周年の外交関係を持ち、関係は友好的。
医学部系日本人留学生500人、リスト音楽院留学生20人
2度の世界大戦でいずれも敗戦国となり、国土は大幅に縮小、周辺国にハンガリー系の人を生み、その外国にいるハンガリー系の人を如何に支援するかが、ハンガリーの少数民族問題となっている。
外資誘致は積極的
法人税は9%
ドイツ三大自動車メーカーが全て工場を持つ。
ロシア産天然ガス利用中
東方開放政策推進中。
中国本土からの資金受け入れ、ブダペスト、ベオグラード高速道路建設、空港へのアクセスインフラ推進を計画。
また、ロシアの資本と技術で、原発建設推進中。尚、現在の原発比率は40%。
EV大国を目指しており、これを受けて、中国本土のBYD,CATLなども進出

「2012年はEUの景気後退に伴いマイナス1.4%のマイナス成長となったが、農業部門の回復やEU補助金の活用により2013年後半から景気が上向き、2014年はGDP成長率4.2%を記録した。
その後、個人消費は引き続き堅調であったものの、EU補助金の流入が減少したことから2015年はGDP成長率3.8%、2016年はGDP成長率2.1%と減速傾向になったが、2017年はEU補助金の流入が回復すると共に個人消費が引き続き堅調に推移し、4.3%のプラス成長を記録した。
2018年は5.4%、2019年は4.6%と、引き続き高い成長を記録、2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、対外貿易収支の落ち込みが主な要因となりマイナス5%のマイナス成長となったが、2021年には復調して7.1%の成長を記録した。
2022年はロシアによるウクライナ侵略や世界的なエネルギー価格高騰等の影響を受け、4.6%に留まった」
「外資製造業誘致による再工業化を推進する一方、将来を見据えR&D分野を中心に自国企業の育成・強化にも取り組んでいる。
銀行、エネルギー、メディア部門については、ハンガリー資本の割合は既に50%以上を上回っており、小売、情報通信、建材産業、鉄道車両製造部門でも、ハンガリー政府は同様の割合を目指すとしている」
「EU依存度が高く、EU向け輸出入の割合は約7~8割となっている」
「ハンガリー政府は、銀行税をはじめとする外資をターゲットとした各種業界税や私的年金国有化等、非伝統的な政策により、財政再建を図り、EUの過剰財政赤字是正手続の解除を実現した」
「エネルギーの輸入依存率は約54%(石油は86.9%、天然ガスは67.2%)と高く、輸入量のうち、石油の40.9%、天然ガスの95%をロシア産が占めている(2022年)。
 エネルギー別発電割合は、原子力が44.6%、天然ガスが25.2%となっている(2022年)」

カトリック65%、プロテスタント35%
旧ソ連時代にはハンガリーは、自動車生産はしていなかったが、スズキのハンガリー進出に始まり、自動車生産は拡大している。因みに、スズキはハンガリーの国民車とまで言われている。

最終日は、ブダペストの中央市場、英雄広場、国会議事堂、聖イシュトヴァーン大聖、セーチェーニ鎖橋、マーチャーシュ教会、漁夫の砦、ブダ王宮を見学、ブダペスト空港からイスタンブール経由羽田空港に戻りました。

【全三回の「東欧見聞録」編、了】

真田幸光————————————————————
1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。1984年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支 店等を経て、2002年より、愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション学部教授。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メン バー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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