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中国本土の対日・対台湾外交姿勢について(真田幸光)

【真田幸光の経済、東アジア情報】
「中国本土の対日・対台湾外交姿勢について」

真田幸光(嘉悦大学副学長・教授)

中国本土政府はここに来て、対日外交姿勢の融和化を進めている。
中国本土の日本取り込みの「飴と鞭」戦略の展開の中での「飴」であろうか。

尖閣諸島周辺の海域で中国本土が管轄権の既成事実化を狙って設置したと見られていたブイについて、中国本土政府・外交部は2月11日、これを移動したと発表している。
ブイは日本の排他的経済水域(EEZ)内に置かれ、2023年7月の発見以来、日本側が撤去を求めていたものであるが、これがやっと撤去されたものである。

また、中国本土政府が政治問題化してきた東京電力福島第一原発の処理水放出問題に関して、これに反対する国内の市民団体主催のオンライン署名を巡り、署名への参加を呼びかけるSNSの発信の中に、中国本土側の世論工作の疑いが強い投稿があることが海外調査機関の分析で分かったとされている。

SNS運営事業者が、
「中国本土国家による世論工作目的」
と認定したアカウントと投稿パターンが共通していたものである。
専門家は、
「日本の政策への反対署名を増やし、国内の分断を助長させる狙いではないか」
と指摘するものも出てきている。
 
対日「飴と鞭」外交戦略が展開されていると言えよう。

一方、台湾周辺の空域に進入した中国本土軍機の数は昨年5月に台湾で、台湾独立傾向が強いとされる民進党の頼清徳政権が発足して以来、1日平均で前政権時代の約2.1倍に増えたと台湾政府・国防部は分析し、発表している。

中国本土側が「独立工作者」として特に敵視している頼総統に対し、軍事的な威圧を強化している実態がデータで裏付けられたと台湾政府は主張している。

中国本土の外交姿勢は極めてしたたかであり、ちょっと譲歩してきても豹変する危険性は十分にある。
その政策の真意、目的をしっかりと見極めていく必要がある。

[台湾]
台湾の新北市では都市再開発のペースが加速している。
台湾政府・内政部の統計によると、新北市は2024年に1,124件の住宅取り壊し許可証を発行しており、過去最高を記録した。
その上で、都市再開発の推進が加速していることも示されている。

不動産業者は、都市再開発によりMRT(鉄道)駅周辺の古い住宅の取引実績が好調で、一部の地域では住宅価格が2倍に上昇したとしている。
しかし、住宅価格が上昇するにつれ、住宅購入者の中にはより大きな課題に直面する人もあり、ここに中国人の不動産購入が増える危険性はないのかとの議論も出てきている。

[中国]
世界では、中国本土の海軍力強化がしばしば注目され、議論ともなっている。
こうした中、今般、中国本土海軍は豪州近海の公海上で実弾演習を実施した。
これにより、民間の旅客機がルート変更を迫られるなど波紋は広がっているが中国本土政府は、
「国際法に沿う対応であった。」
と涼しい顔である。

 

真田幸光————————————————————
1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。84年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支店等を経て、1998年から愛知淑徳大学学部にて教鞭を執った。2024年10月より現職。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メンバー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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