髭講師の研修日誌(114)
Wantsに応えたおかげさまの施しを楽しむ
澤田良雄((株)HOPE代表取締役)
◆人を動かすりーダーは「おかげさま」と評される人
持続的経営との言葉が飛び交う現在です。それにはトップの示す戦略展開である方針・目標を達成していく組織活動の有り様が問われます。従って、リーダー職が率いる組織には新たな躍動を喚起し、部下力を高め、強い組織活動の推進を楽しむことです。
それは、部下が活躍の喜びを享受し、当社で活躍する貢献力を実感し、安心感を継続的に持ち、将来にウキウキ感を醸しています。このウキウキ風土如何が問われる昨今です。
先日、H会議所主催セミナー「人を動かす職場リーダーの人物像」を担当しました。トップ・幹部・管理者クラスの受講者で日頃の活躍ぶりを確認し、さらなる活躍のヒントを学び合いました。H市は中仙道の宿場町として発展してきた土地柄であり、全盲の国学者で「群書類従」670冊を編集出版の塙保己一偉人の故郷でもあります。
昨今の話題ではイチゴ「あまりん」が日本一に選ばれ、又、ソールフード「ナピラ」(納豆・ピザ・ライスを重ねて焼き込んだ食べ物)が評判食となっています。さすが、学び力は高く、最終講の交流タイムでは、互いの活躍紹介も活発でした。
さて、人物像は・・。「おかげさまで」と評される人と結論づけました。それは、関わる人からのWANTS(欲する・期待する・・)を的確に掴み、最適な施しを成している人です。ですから、リーダークラスでは次の4つの人物像となります。
①第一線経営者=市場・顧客からのWANTSは、安心(品質・安全)信頼、喜び、潜在欲求の実現・・です。従って、社会に役立つ企業活動で、経営理念に基づく経営計画に基づく活躍による貢献で、「あなたの部署のおかげで企業業績もOKです。」との感謝が寄せられる人です。
②リーダー・コーデネーター・プレイング・マネージャー=第一線の職場集団のメンバーからのWANTSは、協働関係・楽しい環境・勝つチームです。その実現を可能にする人です。だからこそ「おかげで、当チームの一員として誇れます。」と感謝される人です。
③コーチャー・サポーター=部下のWANTSは、働きがい、報酬、将来に稼げる成長実感、憧れの上司、良き人間関係・・です。「実績を作り、認めて頂ける自分になれたのは、あなたの指導のおかげです。」と後世に渡っても感謝される人です。
④家族(親・子)=家族構成の人からのWANTSは、家族愛(夫婦・親子、兄弟姉妹・ご親戚)、経済的安心、健康、地域の友好関係です。「おかげで仲良く、心温かな生活ができています。あなたのおかげです。」と言葉の掛け合いのある家族の一員です。
いかがでしょうか。単に、私は頑張っている、やっていると言っても、自身の一方的思い入れで施していては、自己満足であり相手のお役に立てる施しではありません。技術の急速な進歩やIT化、グローバル化など企業活動は複雑化、高度化し、働き方改革等により、個々の価値観が多様化し、求人、定着への課題も多い昨今です。
ならば、どのような施し(活躍)を楽しむか?今回は、職場集団・部下に着目し、WANTSに応えたリーダー施しに着目してみましょう。
◆第一線集団で期待に応えた活躍の楽しみ
かつて話題となったWBC侍ジャパンの優勝のキーワードは、「必ず世界一になる。」この共有した目標に向けて、各自がそれぞれ秘めた「必ず貢献する」事を目標とし、最善なる努力を重ねてきました。そして、一緒になって過ごしたからこそ交わされた対面型のコミュニュケーション」による、人間味の一体感も深まりました。そして、監督の采配は目立つ活躍の選手だけでなく、控える選手への配慮した見事な采配でした。従って、各選手には、役割を果たす存在感あり、成長予感があり、そして、活躍による貢献の実感を得ていたと推察できます。
この事はまさに、企業での第一線の職場活動での共通項は多い。それは、組織の第一線部署で目指す目標を共有化し、その実現のためにメンバーが存在感、成長感、貢献の実感を得る現実を生み出すことだからです。理解できます。その事も踏まえて、職場メンバーの欲しに対応した活躍の楽しみ方は次の5項です。
①心の通った職場風土(良好なる対人関係を醸成)=生き生き・楽しい・明るい、ワクワクするこの活躍環境が第一です。具体的には、挨拶・会話の交わし合いに親和感のある職場です。リーダーの先手の挨拶、気軽な声がけ、朝礼の実施など・・の施しがあります。
②職場員の力の方向性の一致=「人としてなんのためにこの仕事をするか、それは社会にお役に立てる事」「そのために今何すべきか、その働きがいを得る」この活躍集団づくりです。それには経営理念・年度計画・目標の共有を踏まえて、強いチーム作りへの取り組みです。
③各自の役割の当事者意識と相互協力 =職責に応じた貢献実績を作るためへの施しです。それには、「なぜ、この仕事を担当頂くか」「あなただからこそ期待できる点はこの点であり、あなたなら必ずできうる」と直話する。併せて、と他のメンバーからの素直に協力を仰ぐこと。勿論自身の協力実践も楽しむことであり、各自が「できた」との笑顔の達成感を交わし合うのが当チームなりと説くことです。
④提案・知恵の発掘と実現=こうしたら良いとの提案は、歓迎です。各自の持ちうる知識、体験から産み出される考案があってこそ、より強みを構築できます。そのための引き出し、活動(改善提案・小集団)を推進もあります。実は、社員が提案、意見、会議での発言が実現した時は大きな喜びであり、将来の稼ぐ力のアピールとなります。ボトムアップこの実践が成せる上司の器が問われる昨今です。「あの提案があってこそ、現状の良き条件になりました(商品・効率化、サービスによる顧客の評判・・)あなたのおかげです。」メンバーにこの言葉を多くかけたいものです。
⑤失敗せよそれは成長のチャンスと挑戦心を鼓舞する=筆者が長年研修に関わっている建設機材メーカーS社では、人財の3条件として。創造(新たな価値を提案、推進できる人財))・挑戦(失敗を恐れず果敢に行動する人財)・共生(多様な価値観を尊重し、共に高め合える人財)と掲げています。研修の際、この条件を基として、自ら個性を生かし込んだ活躍を成すようサポートしています。特に、挑戦に対する上司の部下を鼓舞する働きかけとして、任せる,思い切ってとのキーワードです。それには、現存能力では不足分を承知での働きかけです。肝心なことは、上司の器如何が問われることです。
◆憧れ上司の施す、部下の実績づくりの育成
新たな貢献実績を形成するうえで大事な事は、新たなまなびによる新たな方法を考え出す能力です。従って、部下育成は不可欠な施し条件です。確認して診ましょう。
①上司の新たな方針・目標の達成には部下育成が不可欠です
部下の憧れの上司は、実績を持ちうる人です。当然専門力もあり、人間力も豊かです。だからこそ、指導を受け、自分も実績を作り貢献していく楽しみを抱きます。その実績づくりは各自が最適能力の最大発揮を促進し、加えて、さらなる育成を施す事にあります。
もし、リーダーの想い、または目標の未達成であったならば、それは部下育成の不足なのです。なぜなら、部下自身の目標が未達成達成だからです。なぜ部下が目標達成できないのであろうか。それは、新たな目標は現有能力では不足分があります。前期目標の達成は、各自の能力を最適最大に活用しての結果です。その能力は前期目標達成に向けて不足能力を補填できたからです。
従って、OjTに加えて、社内外の各種研修機会の活用及び、自己啓発による学びが新たな方法を産み出す基となり、変えていく現実を創り上げて行きます。
新年度も間近です。新たな目標達成の向けてのスタートです。その目標の実現には、さらなる能力の蓄積、潜在能力の最大活用による一段高い業務遂行力での取り組み促進することです。目標達成に向けて変えていくパワーは育成如何です。「新たな貢献実績ができました指導のおかげです」と成長意欲の実現と相まっての喜びです。
②部下を育てる施しの基本11則
それでは、日常の指導・支援の施し心得を確認してみますと次の11ポイントです。
1)部下成長が企業成長なりの信念。それは、部下の成長欲求への対応です
2)育成の目標設定(多能化・専門知識、技術の新、広げ・深耕)を集団・個別に 設計し対象者と共有します
3)個々の適性能力の把握による兼任、担当替えの実施によるキャリアップの支援、 本人との取り組みへの調整
4)指示事項の基本完璧から任せる、潜在能力あり、やればできると信じた職務へ 取り組ませ
5)目標達成に向けた計画、実践状況に関心を示し、適宜ショート指導の施し
6)報告時に、その事実を認め、事実形成までのプロセスの努力を認め、承認欲求 の満足度を高揚する。併せてその後の良き活躍に向けての指導を施す
7)指導のフオローを怠らず、良き結果になったら褒め、未熟な事実は叱り、その 原因を確認し、本人と共有化して再指導を施す
8)教えからサポートのスタンスへ。それは能力の認めに応じて、「どう思う」「どうしたらよいかね」との問い掛けで、本人の考えを浮き彫りにし、その是々 非々を確認、上司のキャリアによる示唆が生きる。
9)社内外の実施する研修機会を育成目標に向けて活用する。忙しいから受講させる。その穴埋めは、後輩の実学学習であり、本人の学びによる活躍変化は必ずチームに貢献できる
10)自己啓発への支援。自ら学ぶ楽しさを助長する。それは上司の体験からの提 案、社内の助成制度の活用、資格、検定受検への支援など
11)部下は上役の器以上に育たない。ならば、否応なしに示範によるまねる指導、自らのキャリアアップを欠かさない。憧れのいい人の存在感が育成効果を決める。
如何でしょうか。実は耳にする言葉に「指導しなければとわかっていても・・」があります。その要因は時間がない、費用が・・諸処ありますが、
1)自分がやらなければこの仕事はできないと思いこみ、部下に任せない
その〈結果〉属人的・雑務過多で日常業務に追われる状態が恒常化する。
2)教えるより自分がやった方が楽との指導苦手がある
その<結果>いつまでも忙しさから解放されない。部下自身が未熟さを感じられない。指導力は永久的に向上しないとの現実です。これでは、部下からのWANTSに応えた施し不足です。人材育成の必要性は、目標達成に向けてと共に、社員の求めるキャリアアップに対応するニーズ性もあります。それは、求人、定着課題への対策の一環です。
◆若手社員へのあれこれを超えての施し
先の研修での交流タイムで受講者の意見に最近の若手社員への対応に関するやりとりが交わされました。そこで、筆者のサポートは、
① 個別理解を深める
最近の若者傾向は・・とのマスメデアでの諸説があるが、それは架空の人物です。従って、その情報にすがるな、惑わされるな、いらぬ訳知りは本人を正しく理解する妨げになります。人は十人十色、更にひとり10色です(変わる)ですから、フイルターにはめてわかったつもりは避けたい。あくまで○○ ○○さん個人への正しい理解に基づき、期待に応えてくれる人材として信じることです。なぜなら、自身の想う通りでないときに、育成する無精を棚上げし、「やはり最近の若い人は・・」と都合う良い言い訳に役立てになるからです。
② 自分の価値基準と異なる事をいかす楽しみ
若手の能力は、上司にとっては学びもあリますし、業務上での生かしもあります。だからこそ、新たな戦力としてどう認め、生かすかが楽しみなのです。それは、自分にない異見・異能を取り入れる施しの心の広さ如何です。
③ 働き改革は楽することでなく、自己をより高めることと説く
特に、「休みは?給料は?残業は?の自己欲求がそのまま通る時代だとの錯覚を持っている社員もいますが」との意見も出されました。この意見は昨今よく耳にする見解です。ならばどうする。その対応の一例として「誰しも豊かな人生を目指すことは共通です。そのために職業を選び、会社を選ぶ。その選んだ初心を忘れないことです。」この確認をもとに、「現実を素直に受け入れ、そこに心身を注ぐ。それが、決め手の専門力を身につけ将来が約束される土壌、根っこの育てです。
勿論当社の企業人としての活躍条件は、入社時に承認しています。しかしながら、企業活動は常に変化に遭遇しますので、職場、担当者としての急なる事態への対応もあります。その際の可能な限りの協力は、社員として成すことです。それは犠牲感でなく経験値として自己のキャリア及び貢献実績の蓄積となります。理想と現実のギャップ、想わぬことの対応は自己成長の良き機会と陽転思考での取り組みは楽しいことです。それは、「あなたのおかげで」と感謝される存在感を得ることになるからです。
新春、新たなスタートの時期です。このときだからこそお役立てを楽しむ新たな活躍ぶりを画くことです。それには、関わる人のWANTSを掴み、その期待、欲する的に当てた施しを楽しむことです。闇雲に独りよがりの頑張りでは勿体ない。
部下は上役を選べない。しかしながら、社員・部下から「当社だからこそ・○○リーダーのメンバーだからこそ、仕事を楽しみ、より高いレベルでの貢献実績を重ねています。」と語る社員のなんと美しい笑顔であろうか。実はリーダーの欲する活躍甲斐はここにあります。
もうすぐ新たな活躍の関係となります。
それはリーダー、部下相互に「よろしくお願いたします」と笑顔交わす言葉でキックオフし、「相互に貢献の交わし合いによる」その実りを「おかげさまで・・」と握手を交わすゴールを目指します。その、実現に向けての施しぶりを今回は記してきました。確認の一助になれば幸いです。
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◇澤田 良雄
東京生まれ。中央大学卒業。現セイコーインスツルメンツ㈱に勤務。製造ライン、社員教育、総務マネージャーを歴任後、㈱井浦コミュニケーションセンター専 務理事を経て、ビジネス教育の(株)HOPEを設立。現在、企業教育コンサルタントとして、各企業、官公庁、行政、団体で社員研修講師として広く活躍。指導 キャリアを活かした独自開発の実践的、具体的、効果重視の講義、トレーニング法にて、情熱あふれる温かみと厳しさを兼ね備えた指導力が定評。
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