◆ 舘田一博(東邦大学 医学部 微生物・感染症学講座 教授)
1985年長崎大学医学部卒業。同年長崎大学医学部第二内科入局。99年米国ミシガン大学呼吸器内科留学(~2001年3月)。05年東邦大学医学部微生物・感染症学講座 准教授。11年同講座 教授に就任。東邦大学医療センター大森病院 感染管理部部長。日本感染症学会理事理事長(2017-21)等、多数の要職を兼任。
■医療現場で効果的な対策が打てるようになってきた
新型コロナの今後の見通しですが、よく分かりません。ですが、1年半、経験の中で分かる部分も出てきました。その部分を皆様方と共有させていただき、一緒に方向性を少しでも描くことができればと思います。
中国の新聞の表紙に、武漢の海鮮市場で原因不明の肺炎が流行しているということが、去年の1月1日の『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』に報じられました。そのときは、こんなに大きな感染、パンデミックになるのかということは、なかなか予想が難しかったのではないか思います。私たち感染症を専門としている者にとっても、ある意味、中国からのその第一報で、色々な情報が入ってきていましたから、なかなか正確にそのリスクを評価することができなかったというのは、ある意味、反省として今でも思っています。
あっという間に世界中に広がってしまったわけですが、2億人を超える感染者が出て、450万人以上の方がお亡くなりになりました。しかもまだ終息が見えない状況になっています。1日あたりの感染者数が今でも60万人以上で、1日で1万人以上の方がお亡くなりになっているという状況が続いている。特に後半はデルタ株、その広がりとまん延ということになります。
日本はようやく第5波のピークを越えたかなというところです。しかし、そのまま下がっていくのか、高止まりでなってしまうのか、あるいはすぐにリバウンドするのか、なかなか見えない。特に9月になって学校が始まって、人の動きがまた戻ってきた。そういった状況の中で、人流が増えて、濃厚接触、リスクが高まっていくことを当然考えておかなければいけないところです。
大事なのは死亡者数です。第3波、第4波における死亡者数は多かった。日本の感染者数はもう150万人を超えて、残念ながら1万6000人を超える方がお亡くなりになっています。急激な感染者数の増加が、まさにデルタ株による脅威ということになります。一方で死亡率は、大体1・8%ぐらいで推移したのが、直近で1・19まで下がってきています。
感染者数の爆発的な増加があるけれども、今のところ死亡者数もそれに従って大きく増えてはいない。世界の死亡率は今でも2・1%で変わりませんから、これは何を意味しているのか。恐らく色々な要因がありますけれども、日本はこの1年半の中で、この感染症に対して医療の現場で、効果的な対策が取れるようになってきた。まだ特効薬は限られていますけれども、それでも死亡を抑える、重症化を抑えるようなことができるようになってきた。もちろんワクチンの効果もここに反映されてきているんだろうと思います。