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株式公開の功罪について(真田幸光)

【真田幸光の経済、東アジア情報】
株式公開の功罪について
真田幸光(嘉悦大学学長)

 筆者は最近の、
「株主を軸とした資本主義」
を行き過ぎたものと考えているのである。

株式会社をベースとした現在の世界経済の構造に反対する訳ではないが、
「株式会社」
をベースとして考える時、株主は、
「株式会社にとっての株主はStake Holderの一つ」
であって、全てではないことは言うまでもない。

そうした視点から、株式会社が株式公開(IPO)を行う際のメリットとディメリットを考えてみると、その主なメリットとしては、
「多額の資金調達が可能となる」
「社会的信用・知名度が向上する」
「優秀な人材の確保が可能となる」
「ストックオプションの付与などを前提としての従業員のモチベーション向上」
「創業者利益の創出が可能となる」
などとなろう。

一方で、
「上場準備・維持に掛かるコストが大きい」
「厳しい情報開示義務が付される」
「敵対的買収のリスクが生じる」
「経営の自由度低下が起こる」
といったディメリットがあり、こうしたディメリットの根源には、
「株主の存在」
が見え隠れする。

きちんと、企業理念を大切にして、
「社会の公器として企業」
をの価値を意識、これ前提に株主としての権利を株主が主張してくれれば、社会全体にとってもプラスとなろうが、
「株主としての経済的メリット」
を主たる背景として会社経営に物申す投資家となると、
「悪意のある株主となる」
という可能性も出てこよう。

そして今、世界的に見て、証券取引所にて、Corporate Governance Code(CGコード)がより株主に有利とする方向で変更が進んでいる中、企業経営に対しては、
「短期的な業績重視への圧力が増す、即ち、株主からの監視が厳しくなり、長期的な視点よりも短期的な成果を求められる傾向が強くなる。」
と言う傾向が増すことによって、
「社会の公器」
として活躍する企業が実際には減少していくことにもなろう。

「今だけ良ければ良い、金だけあれば良い、自分だけ良ければ良い」
という風潮が日本、否、世界的に強まる中、こうした人たちが株主として動き始めると、私たちのビジネス社会の牽引車である社会の公器としての株式会社=企業が痛むことになるのではないか。

筆者はこうしたことから、最近の、
「株主を軸とした資本主義」
を行き過ぎたものと考えているのである。

 

真田幸光————————————————————
1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。84年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支店等を経て、1998年から愛知淑徳大学学部にて教鞭を執った。2024年10月より嘉悦大学副学長、2026年4月より現職。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メンバー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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