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「何のために」この想いの実現が双方の喜びを創る(澤田良雄) [ 第126回 ]

髭講師の研修日誌 (第126回)
「何のために」
この想いの実現が双方の喜びを創る

澤田良雄((株)HOPE代表取締役)

◆皆さんの喜ぶ笑顔が大好き

この言葉は、室内に掲げた額縁に描かれた言葉です。それは、中堅和食レストラン店に関わる関係企業経営者の研修グループ会長の長谷川氏から頂いたものです。

作品は氏の直筆で、笑顔の文字は人の笑顔を絵にしています。氏の事業は、レストンに不可欠な食材の卸を営み、どんな時にも、お店に必要な食材を、必要なだけ、必要な時に納品する経営手腕で信頼を高めて発展してきています。特に野菜の調達は、自然影響により不作に見舞われることも時としてあるが、全国に入荷先を確保し、お店側から「助かります。ありがとうございます」との喜びの声がいただけるよう企業努力を惜しみません。

実は、記された言葉は氏経営企業の経営理念です。「なぜこの言葉を…?」と問うたときの説明は、「20年前の創業に際し「何のためにこの事業をするのか」について、熟慮を重ねた時、「儲ける」「いい暮らしをしたい」「家族をより幸せにしたい」「褒められたい」「社会に役立ちたい」…と自民自答した結果、「お取り引きさんの困リ事として、野菜が入らない、料理どうする等々の事態に心配ないようにしてあげようと決めた」と。それは食を楽しみとしていた人の、「えっ、この食材今日食べられるの、良かった、との笑顔が浮かんだからです」とのことです。

研修グループのセミナー講師として数回出講し、メンバーの(店舗改装、設計、工事、他食材卸業、イタリアンレストラン店、店舗ユニホーム洗濯業、税理士…)の方々との談話でも「喜び、笑顔づくりの」考えを生かしている事例の紹介をお聴きし、各自相応の発展を成しています。

この、事実を活用して、筆者が創業塾での講義では、創業の想い「なぜ創業するのか」をしっかりと肝に据えるお役だてとして、この長谷川氏からの額縁を持参し、塾受講者へ紹介します。結構、このお役だてが生きるのです。めでたく創業し、2年、3年、5年と成功している事例に接触すると筆者の表情がほころびます。

その一例企業にハム・ソーセージを自作し、販売している店舗「umami」があります。経営者は,かつて大手ハム会社の製造現場役職者の武藤氏であり、店舗内に設備を整えて自製、製造現場を見える化し、顧客の目をひく工夫が良い。商品もオリジナル商品の白色ソーセージ、ハート型ハムなどの顧客の声を生かして開発しています。

店舗主任は社交性豊かな奥様の担当です。大手メーカー、販売店は多くある中で、着実に顧客を生み,「あのお店は、はやっているね」との評判が顧客の広がりとなっています。現在では,お中元、お歳暮、さらには贈答品として、市内外に販路を拡大しています。

先日も伺いし、現状を聞きますと、市内のイベントで出店依頼が増えました。それに、小学校給食の献立に一校採用されました。との笑顔でのやりとりを楽しみました。折良く、筆者の用立てでの知人に宅配での贈答をお願いし、先方から、「美味しいね」御礼の連絡が入りました。この「美味しいねと喜んでいただく商品づくり」が「UMAMI」店の創業の何のためにの想いです。

「何のために…」この企業理念・社是・方針には、「この商品・製品を通じて、安心を提供する」「社会にお役に立つ」「健康向上」「利他主義」「食の楽しみ」「旅の楽しみ」「安全」「感謝を社名にしました」…に類した想い、覚悟があります。いずれにしても、喜びの実感を共有化し笑顔の交換を目指しているのです。

◆身近な活躍実践も同様です

さて、何のためにとは、決して経営云々に限ることではありません。筆者が支援、指導の話力向上の軸は、なのために話す、それは、「自身が持ち得る能力である技術、知識、情報、特技、考え、人脈、人間味…を相手のためにお役立てのために伝える働き掛けです。

決して単なる話し上手や一方的に言葉を放つことではありません。従って、話すことは相手の言動を変えることです。身近なたとえでは「岡本さんの『朝の挨拶に奥様の名前をまず声がけし、おはよう』と言う実践の話を聴き、自分もやろうと思いました。実際はなかなか、名前を言えずでしたが、それができた時に、『あれ』って妻が不思議な表情に加えて、微笑みが一瞬ありました。その後は…コミュニケーションが良くなりました。ありがとうございました」この現実が実現するのです。  

今までなかった言動を成す。これは、変わることです。この変わりようによって相手に与える影響が変わり、互いの関係が変わっていくのです。

如何でしょうか。身近な現実に直視してみれば、

  • 各自の担当業務での何のために、なぜこうする
  • 家庭生活、夫婦間・親子でのやりとり、協力関係での有り様では
  • 自由時間の過ごし方でのテレビ、読書、趣味、会食・学び合いの活動では
  • 仕事以外の社会活動でのボランテイア、学び会、地域活動、役割担当では
  • 健康管理での運動方法、食品管理、定期診断…では

如何でしょうか。現実は「何のために」の想いを確認し、関わる人との喜び合いが実現しているでしょうか。なぜなら、することが楽しく、いきいき、ありがとう、おかげさまでの心豊かな現実を享受できるからです。

◆おもてなしの心の汲み取りが第一です

ならば、何のためにの実践の心持ちはどのようなことでありましょうか。それは、相手にお役に立てることであるから、相手の心(期待)を汲み取れることが必要になります。その働きかけを敢えて、「おもてなしの心」と提言してみます。

周知のとおり、おもてなしとは、相手のして欲しいこと(不安改善)はどんなことかを察し、その対応として、自身ができる施しは何をしてあげるかを即断即決し、先手の実践を成すことです。

一例として、和洋菓子店三万石の新幹線駅前店では,背広でネクタイ、鞄をお持ちのお客様へのお品渡しでは「袋を二重にさせていただきました」とお渡しします。それは、遠方にお帰りになるお客様と判断し、お客様の不安事項を「重いな、袋が破れたら困るな」と察し、この心情の琴線・機微に触れる気配りの良さの施しの実践です。それは、良く聴く「気が利く」の極意です。従って、袋を二重にしてくださいと「言われてやるのは価値がない」。それは、相手の指示に作業的に対応するにすぎないだけだからです。

確認してみましょう。「何のために」それは、相手の欲する期待を汲み取り適確に先手で施すことです。それは、「見返りを求めず、相手を思いやり、心からの心配りで歓待するおもてなしの日本文化です」。具体的には、心からの配慮(見えない気遣い )相手が言葉にする前にニーズを察し、先回りをして行動する裏表無しの心遣い(まごころ)誠実な対応です。それには、準備の段階から始まります。また、個別対応で形式や正解がないと説かれています。

さて、業務上でのおもてなしの施しは、接客云々の限定ではありません。身近に目を転ずれば「こういう品物が欲しかった。よく造ってくれました」との新製品の提供もあります。それは、顧客の抱く不安解消、不便解消、不満解消等の「不の解決」に向けた先手の開発、アイデアの実現です。100均店に行って、「こんな便利なものがあったんだ」と思わずにこりとすることはありませんか?

また、書店での購入本を入れた袋止めのセロテープの貼りの先端を折ってあり、剥がすときにたやすく剥がすことができる工夫もあります。

更に、鹿児島県福山町の黒酢メーカー宇部醸造有限社からの送品の気配りにも学びがありました。と言いますのは、700ミリリットル瓶を注文した折り、その送品工夫は、絶対に瓶が割れない完璧な工夫で隙間無しに段ボール箱に詰め、そして段ボール箱は完全にテープで留めてあり完璧です。

さて、到着後取り出しです。段ボール箱を空けると6本の瓶は支障なく、一斎の隙間なく詰まっています。ならば、一本取り出そうとしてもそれはムリ、なぜなら指すら入らない隙間無しだからです。しかしながら、一本の瓶箱に、なんと紐を結び掛けてあります。このひもを引き上げますと難なく一本取り出せました。完璧な送品策、だからこそ、客様の困りごとが予測される。ならば、その状況にお役だての施しの紐付けです。

実に見事なおもてなしの施しです。「次の工程を考えて、事をなす」。筆者が時計メーカーで作業担当時の決め事が蘇ります。「何のために」は、自分さえ良ければではなく、関わる人のお役に立てる施しを楽しむことにあるといえます。

◆新人の育ては、4つの欲求を喜びに変える働きかけです

AIネイテイブ世代(学生時代の生成AIの普及を背景に、授業や課題解決で自然にAIを活用してきた世代)の新人の活躍もほぼ一ヶ月となります。何のために当社に入社したのか、何のためにこの職場の要望により採用したのか、ならば、担当の仕事は、何のためにあるのか…「だからあなたに期待します」「早く一人前になります。どうぞご指導お願いしします」。このように双方の意図が共有化され、順調なる育成が施されているでしょうか。

報道化される特別例は、足下では何ら関係なきことでしょう。確認してみましょう。何のために育てるのか。それは、前記した双方の「何のために」の想いが実態化されることです。それは良き職場×良き新人との喜び合いです。その育ての施し策に着目してみましょう。

  • 4つに欲求を汲み取る

何のために新人指導・支援をするか、それは、新人の持ちうる4つの欲求を喜びに転化する指導・支援です。4つの欲求とは何か。それは、金銭、生活の見える欲求は結果のあれこれはここでは別として、内的欲求として捉えてみますと、

◎認められたいと言う存在欲求

  • 成長したいという成長欲求
  • 役割を果たしたいと言う承認欲求
  • 好かれたいと言う親和欲求

です。勿論 各自の欲求程度は様々ですし、特段欲求もなく、なんとなく無難に日々が重なれば良いとか、自己中の言動が通らなければ、他責にする輩もいます。

◎指導・支援のお役だて9つの実践

そこで、次の支援指導の働きかけを楽しむことです。

1)指導段階では、やって見せ、言って聞かせて、させて診て、褒めてあげ、不備事項は励ます手順が良い。

2)「なぜ、どうしての」--奥行きを丁寧に指導する。そこから、新人の潜在能力がいき、新人の知恵が発揮されます。それこそ職場に新戦力を求めた意図です。

3)想い、決意の紹介内容に対して、現時点をから累積した変化をみて、その努力を評価する。そこには、想い、決意と関連づけての良さの説明が生き、理解と納得を得る

4)本人が、気がついて欲しい、見て欲しいとの欲求を察して、その点に着目してはっきりと褒める。それだけ努力を見てくれているとの喜びを高揚する。

5)褒め言葉には「ありがとう」「ごくろさま」の感謝、ねぎらい言葉も効果的である。認められた、お役に立てたとの喜びに通ずるからだ。地味なことでも継続している行動に目をかけ褒めていく。案外派手な行動に目が行きがちだが当たり前のことでもきちんと成すことは素晴らしいことである。教えたことに対して、行動変化が目についたら、すぐに認めの言葉をかけ、何がどうできたか、そのことはなぜ良いかを説く。

6)関わりのある人に紹介していく

7)気配りのひと言シャワーで成長の喜びを実感にする。例えば、挨拶一つでも「もう少し笑顔が加わると良いね」との指導は、本人なりに良いと思っていた表情の仕方を、笑顔ですることの要求であり、本人にとっては、馴れたことを変えるのは抵抗があり、動作を変えるには新たな苦労が伴います。だからこそ、指導されたことの実践継続していくうえで、「素直に取り組んでいる自分の態度を見てください」「これだけ良くなってきましたどうぞ評価してください」との欲求が芽生えて来ます。
 この心を汲み取っての気配りある「笑顔が良くなってきたね」「実践してくれてありがとう」とひと言掛けることが良い。このシャワーは心地よく「ちゃんと見てくれている」「自分もできる人となっている」との指導者への信頼が深まることは周知の通りであろう。
 ちなみに、認め、労いのこ言葉例として「頑張っているね」「よくできてきたね」「さすがですね」「ここまでできたね、素晴らしい」「期待に応えてくれてありがとう」さらに、「上司も褒めていましたよ。」「お客様が感じの良い社員ですね。と言っていましたよ」と第三者の評価を重ねていくのも嬉しいシャワーです。時には、朝礼時に全員に実践事実を紹介し、皆からの拍手のシャワーもよい。

8)教えた後を見て、課題があれば、なぜ、それが不足なのか、ならばどうするとの追指導を丁寧に説く。そして、あなたならできるとのエールを贈り、「困ったと思ったときには気軽に声がけを待ってますよ」と気に掛けている親和感の余韻の残しが良い。

9)過保護、叱れない関わりは、新人の先に向けたパワーづくりの支障。指導した双方の是々非々の物差しを軸に褒めもあり、叱りの施しも肝心。「あのときにきちんと叱っていただいたことが、現在の自分に成長させていただきました」との事例も多い。

以上です。必ず、指導、働きかけは「ありがとうございました」「おかげさまで」と、指導者・新人の関係を離れても人生のパートナーとしての将来、双方の言葉がけになることも現実。

如何でしょうか。「何のために」との実現に向けた双方の絡み合いが、新人良し、指導者(職場・企業)良しの育ての楽しさを実現されていくのです。

◆「今の実践力」なくして「何のためのお役だて」はない

先日、京都市内願隆寺の小早川住職さんの法話に学びました。部分紹介ですが、「明日ありと、思う心の仇桜、夜半に嵐の 吹かぬものかは」親鸞聖人が詠まれた和歌があります。今、美しく咲いている桜の花を明日も見られると安心していると、夜半に強い風が吹いて散ってしまうかも知れない」という意味合いです。この教えは、「明日自分の命があるとわからないだからこそ今、精一杯大事に生きること」と説かれています。それは、今という瞬間は二度とこない、後で後悔しても遅いとの教えです。」

と、話され、そして、言葉のプレゼントとして、「念」とは、今(現在)生きる人の智恵であり、一瞬の今を心に頂く生活者となると説きを頂きました。そして、「今」、「今」、「今」と三度参列者と共に唱和しました。なぜかすがすがしい一瞬でした。

小生の座右の銘は「一期一会」。掲げるもあのときにやっておけば良かった。この反省は多い。まさに、その都度、自身のできうる能力を相手にお役だてする絶好の機会を逸することは自分を粗末にすることに他ならないと言いつつもまだまだ…と法話での説きを物差しと自問自答しました。

今回「何のために」を再考し、何を、誰にどうすると考察して来ました。肝心要はこうして行こうと決めつつも、その実践無しでは、お役立てによる喜びを創造はできません。過去は取り返せない、未来は理想を掲げても不透明です。過去から学び、未来を想い描いて、「今、この仕事を通してお役に立てることは「何をどうするか」の実践を楽しみ、「ありがとうございました」との互いの喜び合いの現実づくりを愉しみましょう。

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澤田 良雄

東京生まれ。中央大学卒業。現セイコーインスツルメンツ㈱に勤務。製造ライン、社員教育、総務マネージャーを歴任後、㈱井浦コミュニケーションセンター専 務理事を経て、ビジネス教育の(株)HOPEを設立。現在、企業教育コンサルタントとして、各企業、官公庁、行政、団体で社員研修講師として広く活躍。指導 キャリアを活かした独自開発の実践的、具体的、効果重視の講義、トレーニング法にて、情熱あふれる温かみと厳しさを兼ね備えた指導力が定評。
http://www.hope-s.com/