髭講師の研修日誌 (第129回)
現場第一線:要社員での活躍を楽しむ
澤田良雄((株)HOPE代表取締役)
◆活躍ぶりを確認してみましょう
昨今の指導現場では、先輩・中堅クラス社員との学び合いの機会があります。先日は、ありがとうの言葉を社名にしました山九株式会社(物流・機工等の大手)のB・S(新人指導社員)研修をし、政令都市の一般・中堅技能員研修、深掘りポンプメーカーおかもとポンプ(株)の話し方講座のお役立てがあります。
このクラスの活躍は、第一線の要として「任され、責任持って、関わる人の協力を得て目標を達成する」社員です。まさに、企業の評判を100(ここまでの価値)プラス1(新たな価値付け)=無限大にするか、100マイナス1(決定的ミス)=0(取引が終わる)かを左右する肝心要の人です。
ですから、研修での確認は、次の3条件を踏まえた活躍ぶりです。
①当社のトップの考え方を自分のものにしている
②成すべき仕事の技術に自信と誇りを持っている
③社会常識を踏まえた品格を習慣化している
もう少し、具体的な活躍ぶりをアップしてみましょう。それは、仕事上手で実績をしっかりと産み貢献する専門力と、チーム力を高める対人関係力の素晴らしさです。周知の通り、大谷翔平選手像です。山九株式会社の社訓には公言実行・自問自答・感謝があります。そこで、研修では、具体的活躍ぶりを実績形成マンパワー、ヒューマンパワーの二つの柱立てとし、それぞれ10条件を整自問自答(確認・診断)してみました。
1)実績を生み出すマンパワー
①当社の理念、社長の考え方を熟知している人ですか
②誠意・努力・責任感の溢れるねばり強さで、目標達成できる人ですか
③社則、規律、倫理観など絶対に守る人ですか
④基本にもとづく仕事をきちんと出来る人ですか
⑤常に建設的な意見を述べ、業務改善力に冨む人ですか
⑥計画性に富み、先手、先手で動いていける人ですか、
⑦安心、信用の太鼓判を押せる仕事の遂行の出来る人ですか
⑧不測の事態に先々を読んで仕事の出来る人ですか、
⑨多能化の仕事を積極的にものにしていく人ですか
⑩自ら、学習熱が高く自己啓発に取り組む人ですか
2)チーム力を生かすヒューマンパワー
①挨拶人間ですか
②リーダー・上司を信頼し、協力依頼に素直に対応する人ですか
③協力関係をスムースに構築できる人ですか
④ネアカ、前向き、素直等の人間性の良さを太鼓判を押せる人ですか
⑤当社社員らしいマナー上手な品格を持った人ですか
⑥空気が読め、人の気持ちをくみ取れる人ですか
⑦会話上手で人との関係づくりの良い人ですか
⑧報連相を、言わなくてもきちんと実践する人ですか
⑨心身の健康状態を良好にできる人ですか
⑩私生活を自己管理(健康、遊び、家族・友達関係・学び)の出来る人ですか
いかがでしょうか。どうぞ、業界、職種、立ち位置、チーム構成により追加、削除し活用ください。5点法で上司、本人相互でなし、すりあわせすることも良いでしょう。
◆新人・後輩指導を楽しむ
さて、B・Sの委託を受けるとか、新人・後輩の指導を託されは「期待される自分」こんな嬉しいことはありません。なぜなら、職場は力のある人のところに仕事が集まります。それだけ能力と人望が認められた証だからです。この機会を生かした経験は将来に向けて底力を付けていけるとき。自分に誇りを持って、期待に応えた活躍を楽しむ機会です。確認して診ましょう。
- 自分が選ばれ、期待されることは誇りある自分である。そこから更なる成長への新たな実践がある
- 新人・後輩の育みを支援・指導出来るとは、双方の人生の良き思い出づくりであり、「あのときの指導のおかげです」・・と将来の人生のパートナーとなる
- 自己成長できる楽しみ。それは専門能力(仕事の質、量、技術、知識、)・人間性、指導力を磨ける機会である。なぜなら、周囲からの期待で観られる事は自分を磨く機会だからです。では具体的指導・支援の楽しみ方を確認してみましょう。
◆指導・支援の具体的実践法
〇世に言われる若者像でなく●●〇〇さんです
承知の通り、最近の若者は、安定志向、勤務条件が楽、福利厚生が充実している、無理しないこと・・・が大方であり、この仕事をしたいからとの職業観はない人が多いとか、今年の話題には、1日で退社、退職願い代行業の活用などの話題が人気を得たが、現実にそのような事実がどれだけあるのだろうか。単に面白さの情報に、大事に育てよ、パワハラは・・・育成論はいかがであろうか。
筆者が指導現場での学びは、成長したい成長欲求も高いし、認めてほしい承認の欲求も結構高い。従って、頑張りもあるし。信じて欲しい、自己主張は苦手なほうなので、そこは少しは察して欲しい、時にはミスがあるがその原因を探り、再発なきよう努力する、もちろん、時々褒めてもらうと自信がつき、やる気が高まる。ましてや、同期の仲間には、私も負けていられない・・・。このような現実なのです。是非、個別の正しい理解に準じた指導支援を楽しむことです。でなければ、指導無精を「最近の新人、若者は、こう言われている通り、難しい・・」と都合良いいいわけに巧みに利用することになります。ならば、
「私のところの新人は良い。寄り添っての指導は楽しい」この指導上手の実践はいかようにするのか確認してみましょう。
〇指導の実践10の極意
- まずやってみせ、次にそれはどうしてそうするのかと言って聞かせて、それからさせてみる。そして、よいところを褒め、うまくいかない点は、どうしてそうなるか説明し、どうすべきか指導する
- 単に動きを指導するのでなく、「なぜ」「どうして」の説明は丁寧にする
- その概念や仕組みが、いかにして決められたのか、そのいきさつをきちんと教える
- 何を意識して行うのか。何のための方法、仕組みであるのか、十分な説明をする
- マニュアル整備、標準書を元に丁寧に説明する。必ず質問を受け、疑問点を残さない。
- 安全作業手順書の教育時は、トラブル事例を活用し、点検ポイントを指導する。
- 「決まりは守らせる」そのためにも、その必要性を教育すると同時に、自分が示範で示す。
- 過去のトラブル、災害などについて、機会を作って語り部として言い伝えていく。
- 質問を受けられる雰囲気を日ごろから作っておく。 そして、
⑩ 愛情ある叱り方を施す。きちんと指導しての叱りは例え多少の厳しい言葉であっても「パワハラです」でなく、むしろきちんと叱ってくれる」との信頼度があります。なぜなら、叱るとは、教えたことが双方の善し悪しの評価軸になっています。ですから、相手には、出来ていないことの自覚があり、いつか言われるとの受け入れ感はあるものです。従って、きちんと叱ってくれるから安心し、真剣に育てくれる指導者として受け止めるのです。
◆心をくみ取るコミュニケーションの実践
発信、仕掛けるコミュニケーションも大事ですが、関心を寄せ、目に映る行動から言葉なき雄叫びをつかみ、しっかりと心を受け止めることです。その実践は、
〇察するコミュニケーション
動揺、悩み的心中は行動によりシグナルをおくっている事が多いのです。気にかけて観れば、挨拶、出勤時刻、歩きの後ろ姿、事への取り組み時の活力等の変化が一例です。その変化は相手から「気づいて欲しいとのシグナル」です。大事なことは、本人の状態(兆候)に早期に気づき、尋ね、聴き、小さい芽を摘みとっていくと良いのです。そこには「関心を寄せる」「気づく」「察する」「静かなる雄叫びの心を聴く」この実践です。これができるならば、メンタル不全を未然に防ぎ、ましてや「急にやめます」現象はありません。
〇話しかけてくる、その聴き方の極意
「聴く」とは、単に声や内容を聞いているだけでなく、話しに耳を傾け、話の内容の奥にある心をくみ取ることまで意識を持って対応することです。必ず、「真剣に聴いてくれている」「気持ちよく聴いて貰えている」「共感して貰っている」と感じます。従って、親しく話しかけ、質問にも来るようになります。逆に、面倒くささが観える、目をあわせない、ながら聞く、反応を示さない、横柄な態度で聞く、攻めの内容を考えながら聞く、こんな人には話したい気が起こるわけがありません。
◆さらなる貢献の楽しみをつくる
企業活動は常に変化します。従って単なる維持型社員では企業の発展に貢献出来ません。自らの能力を最高に発揮すると共に、自ら新たなことに挑戦する積極型社員が、会社の評判を更に高める楽しみを得ることができます。ですから、
現在、誇りと自信を持って活躍している自身が、重ねてきたキャリアを生かしてさすがの実績形成を楽しむ事が当社で働く喜びです。そこには第一線で活躍する真の実力型社員としての存在があり、当社だからこそ得る活躍(キャリア)のランクアップさせる機会があります。こんな楽しいことはありません。そして、その貢献ぶりがネクストステージの基となるのです。
〇乗り越える気概、創意工夫の実践
よく苦労を乗り越えたと言います。しかし、これは結果論です。多分にその渦中にいるときは、ただ目の前に出くわす厳しい、辛さ、悲しさ、苦しさへの対応そのものです。何ごとも、新たな想いに取り組めば順風満帆にすべてが行くわけではないのです。時には壁にぶつかる、躓くこともあります。
従って、これを乗り越える気概や創意工夫の実践が想いの実現ヘの近づきとなります。
辛さの漢字の上部に一本線を入れると幸せの文字になります。辛さに逃げることなく一工夫の施しを加える実践を楽しむことが良いのです。
〇念ずれば花開く
視点を変えてみれば、苦労は自己成長も楽しめます。筆者がお役立てするベテラン社員研修では「現在のキャリアは、諸々の苦労体験があったからです」。と紹介されます。それは、現象を表面で捉えることでなく、なぜ、なぜと追求する経験値(回数)による経験智(新たな知恵)による自身の財産となるからです。
仏教詩人板村真民さんの言葉に「念ずれば花開く」との言葉があります。難しい事だけどもやろうじゃないかと新たな苦労をつくり、実際にやる努力を続けていれば必ず事は達成感の喜びがそこに待っています。若き一応の力を有した社員だからこそ成せることです。
〇人の力を借りる働き掛け
自己力での限界があれば人の力を借りる働きかけをなせばよいのです。すなわち、想いに向けて、PDCAサイクルをスパイラルに回すうえで、Cの検討結果ヘの対応時、良ければ更にもっとやってみようと楽しみ、悪しき状態には、じゃどうすると本気で立ち向かいます。それは他の力を活用する働きかけによる相談、意見を聞く、手を借りて乗り切りも一策です。よく耳にする「挫折しかけましたが、思いなおして、人の知恵も借りて継続した結果です 」拍手です。
「おかげさまで」」との感謝の言葉をかけ合うことも関わる人との共に寄り添うパートナーシップのすばらしさだからです。他の人の力を生かす、それは、質を高め、スピードを早めます。実は、リーダーシップの発揮がここにあります。
◆任された活躍には、話す力を磨くこと
任されて・責任もって仕事をする上で欠かせない能力は話力です。しかしながら、「話す事が苦手」「話してもうまく伝わらない」という人もいます。当然、心配事となる、イライラ感が募る、しょうがないから自分でやってしまうとの声を良く聴きます。困る現象は、次第に話す機会を回避することになります。「必要なことを」「必要なときに」「必要な人に」「必要なだけ」「必要な方法で」伝える話力はどうしても欠かせません。でなければ組織力(任された範囲での関わる人との協力関係)を生かした活躍ができないからです。
先日のおかもとポンプ(株)では、先輩、中堅、次期リーダークラスの社員対象の話し方講座でした。岡本社長の「社会人としても、大勢の前でも話せることは大事です」との社員想いに応えた学び合いでした。受講者所感では「今後、話の筋道をきちんとできるようにする。急がず間を取っての話すゆとりを気に掛けます・・」もありました。 それは、活躍の遂行には、関わる人に「発信」し、「理解→納得→共感」を得て、協力を頂く、時には、会議での発言、プレゼンテーションや朝礼でのスピーチにも改善していくヒントになりました。話は苦手、解ってくれているだろうとの無精は禁物です。当社への新たな貢献の楽しみも、人の協力をどれだけ生かし、質とスピードを高めた成果を生み出しには、話す力の磨きが不可欠です。
今、テレビでは、熊本地震の被災状況の速報が続きます。「どうぞ最小の災難であることを念じます」と願い筆を進めています。ふと、10年前の熊本地震の被災地益城町を訪ねたときの美容室のドアーに張られた言葉がよみがえりました。それは「今日の涙を、明日は笑顔に」の言葉でした。周囲の建物が倒壊し、美容室の建屋も惨憺なる状態でした。当然、人とはお会いすることなく、マジックで書かれた文字にしばし釘付けとなりました。そして、「おいでいただきありがとうございます。頑張ります。応援してください。」と微笑みの表情を無理矢理描き、「応援します」と文字に手のひらを重ねた様がよみがえりました。今、どういう状態であろうか・・。
改めて、現在を素直に受け入れ、だからどうする。明るくもの事を捉えて、今できることの最高実践を・・・と言い聞かせました。重ねて、第一線の要で活躍される人へのまさかの出来事の遭遇したときのエールの言葉として送ります。
/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

◇澤田 良雄
東京生まれ。中央大学卒業。現セイコーインスツルメンツ㈱に勤務。製造ライン、社員教育、総務マネージャーを歴任後、㈱井浦コミュニケーションセンター専 務理事を経て、ビジネス教育の(株)HOPEを設立。現在、企業教育コンサルタントとして、各企業、官公庁、行政、団体で社員研修講師として広く活躍。指導 キャリアを活かした独自開発の実践的、具体的、効果重視の講義、トレーニング法にて、情熱あふれる温かみと厳しさを兼ね備えた指導力が定評。
http://www.hope-s.com/