【真田幸光の経済、東アジア情報】
円・米ドル相場と為替介入
真田幸光(嘉悦大学学長)
米国・連邦準備制度理事会(FRB)は、米国の政策金利を3.75%水準で凍結し、市場にインフレ対応が遅れるのではないかとの懸念が広がっている。
これに対して、米国の金融市場では株式と債券価格が同時に急落し、国際金価格は上昇するという事態が発生した。
一方、日本の金融政策決定会合でも政策金利は1.0%で凍結された。
こうしたことを前後して、一層の円安になることを懸念した日本政府は為替相場の介入に踏み切ったと見られる円高の動きが見られたが、国際金融筋の見立てでは、米国は日本の更なる為替相場介入には、
「日本を為替操作国の監視国から為替操作国そのものに指定するのではないか。
即ち、米国金融当局は、日本に対して円安是正は、円の基準金利を引き上げて為替相場の適正化を図るべしと考えている。
こうしたことから、日本の為替介入には厳しい目を光らせている」
との見方を示し、この結果、外為市場は、日本政府が一回目の為替介入をした直後、直ぐに円安に押し戻す動きを一度は示した。
こうした中、現状での日本の単独為替介入は時間稼ぎの効果も薄く、外貨準備高の無駄使いとなっているとの見方も強まる。
日本国内には、米ドルを売って、円を買ったことから、日本政府には円資金が入り、これが政府の運用資金の増加に繋がったとし、外貨準備高の無駄使いには当たらないとする声もあるが、外貨準備高の減少は日本国の対外支払い能力の低下という見方に繋がり、むしろディメリットは大きい、更に、政府の運用資金の増加に繋がったと言う見方を取ったとしても、これまで、日本政府が米ドル売り・円買いの為替介入をした結果、政府運用資金が増え、これによって、財政資金の運用を拡大した事例を聞いたこともなく、やはり、外貨準備高の無駄使いとなっているとの見方をしておくことが妥当であろうとの見方が高まった。
そして、日本政府が、リフレ派の考え方などを捨てて、いち早く、米欧との国際金融政策の協調姿勢に入り、インフレ対策のいの一番として教科書に謳われている、
「政策金利の引き上げ」
に転じ、円安による輸入インフレにストップをかけることが国民生活には望ましい政策姿勢であると筆者は考えていた。
但し、ここでまた、円安・ウォン安に悩む、日本と韓国の為替当局がタイミングを合わせるかのように、為替安定化措置を取るような形で、再度の為替介入に出た。
そして、これに米国も協調した可能性があるという見方が今回の二度目の協調介入のタイミングの中で出た。
ほぼ同じタイミングで米ドルを売って自国通貨を買うことで、円とウォンの価値を同時に高める方法として、日韓金融当局の協力がなされ、更に米国までもが参加した初の、
「三カ国為替協調」
というシナリオはなくはないとは思われる。
そして、韓国のマスコミは、
「イ・ジェミョン・高市蜜月関係」
の中で、
「日本と韓国の当局が外為市場で自国通貨を買う形で介入し、複数の消息筋は米国も動いた極めて異例の協調介入であると説明した」
と報じており、筆者も、
「米国が日韓の為替介入を事実上容認した。
更に、もし米国自身も円安、ウォン安阻止の為に為替操作国の監視国対象としている日韓を助けることとなれば見方は変わる。」
との声が国際金融市場の一部からは出ているとは聞いていた。
即ち、一定程度の円高、ウォン高を米国政府が容認すると言うことになるので、この場合には、上述したこととは逆に、
「一定程度円高、ウォン高に戻した後、安定する」
との見方に変えていかなくてはならない。
ところがここで、FTの報道などを基にすると、米国金融当局が、米ドル売り・円買いではなくではなく、ユーロを売って円を買う「間接的な円高誘導の援護射撃」を為替介入という形で行ったとの見方が広がり、その後、米国のベッセント財務長官も円買い介入を示唆(ウォン買い、或いはウォンに関しては、コメントは全くなく、やはり三カ国協調介入ではないと思われる。)、トランプ大統領の「日本は同盟国」とのコメントまで出て、
「円買いの市場介入」
が事実であるとの見方が確定した。
そしてこの次は、市場が、これを、米国政府の、
「円高誘導に向けた協調介入である」
と認識するのか否かが注目されるのである。
実際に、
「円高に向けた潮目の変化を容認するような考え方を米国が持っているのか?」
をタッピングしながら、市場は確認するような動きに出ている。
そして、もしも、円高誘導の協調介入「容認」との見方となれば、市場の更なる注目点は、
「米国政府がいくらの米ドル・円レート、米ドル・ウォンレート水準を望んでいるのか。」
という視点に移るであろう。
但し、今のところ、市場は、米国が、
「介入による円高誘導ではなく、日本の政策金利引き上げによる円高誘導を志向している。」
との見方が強い点は付記しておく。
今後の国際金融市場の反応、動向を注目したい。
※真田氏より8/7に配信された記事より。
真田幸光————————————————————
1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。84年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支店等を経て、1998年から愛知淑徳大学学部にて教鞭を執った。2024年10月より嘉悦大学副学長、2026年4月より現職。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メンバー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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