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【中小企業の経営理念構築】 第4回「役割を終えた経営理念にはおさらば」(小池浩二)

小池浩二氏の [継栄の軸足] シリーズ (24)

【中小企業の経営理念構築 全4回】
第4回目「役割を終えた経営理念にはおさらば」

小池浩二氏(マイスター・コンサルタンツ(株)代表取締役)

■経営理念の本質
 
経営理念とは、「この会社は何のために存在しているのか、この経営をどういう目的で、またどのようなやり方で行っていくのか、という点についてしっかりした基本の考え方を持つことである」、と松下幸之助氏は説明している。
 
松下氏は日本における「使命感経営」の第一人者で、事業経営の一番根本になるのは「正しい経営理念」であり、会社の存在理由・経営目的・経営方法についての「正しい経営理念」が根底にあってこそ、事業経営において大事な技術力・販売力・資金力・そして人が初めて真に生かされてくるものだと確信していた。
 
つまり、会社の上層部から現場に至るまでその精神を浸透させることが重要である。経営者として事業経営をうまくさせようと思うなら、まずしっかりした使命感・経営理念を持つことが先決であり、社員に対し、常にそのことを訴え続け、それを浸透させていくことが大事、と説いている。
 
経営理念が成分化されている会社、されていない会社あると思う。経営理念は、紙に書かれた文章だけでは、何にもならないのであって、それが一人ひとりの血肉になり、初めて活かされる。そのためにあらゆる機会に繰り返し、繰り返し、訴えなければいけない。この繰り返しが 経営理念をベースにした経営である。
 
この経営理念も、時代の環境変化と共に役割を終えるケースがあり、役割を終えた経営理念にはおさらばをして、新しく経営理念を見つめなおす必要性がある。
 
■価値密着型経営への転換                                                                                                               
中小企業は別名「地域密着型企業」ともいわれる。これはある特定の限定された地域内(市・県・地区)においての商売スタイルを意味するもの 。われわれミクロ経済における中小企業の生きる術である「密着型企業 スタイル」は過去も今日も将来も変わらない。それは「人なし・ものなし・金なし」のナイナイ尽くしの戦い方で生き抜く最大突破の戦術は「密着型」であるからだ。
 
では今後、何に「密着」 するかだが、それは「価値への密着」である。価値への密着とは、自社が生き抜く価値を明確に絞ることであり、その価値への密着が価値密着型経営の推進となる。
 
中小企業の成長軌道は、顧客に合わせて成長することが多かったし、それが中小企業の生き残る道でもあった。しかしこの常道に変化がでている。市場の構造変化は企業にどのような価値に密着するのかを明確にすることを求めており、顧客に合わせすぎる密着では、売上高や利益率の確保できない。 
      
つまり、「既存顧客合わせすぎ現象」は、確実に会社の体力・魅力そして将来を蝕んでいく。
 
よく理解していただきたいのが、顧客というマーケットは存在しないということだ。顧客をセグメント・カテゴリー化するから、そこにマーケットという視点が生まれる。
「自社の真の飯の種は何なのか?」
「自社にとって真にお付き合いしたいお客様とは誰なのか?」
「そのお客様は一体わが社に何を要求しているのか」
を深考し、具体的な展開を図ることが、自社の生存につながる。
 
戦略とは勝てる土俵を見つけることから始まる。自社の価値を認めてくれる顧客がいるマーケットを探し、選ぶことであり、そして、そのマーケットから選ばれる存在になることだ。
 
ターゲットを絞ることは、すなわち、「顧客を選ぶ」ということであり、自社の価値を「最も高く」買ってくれる先に自社の商品・サービスを提供すべきで、そこに合わせて更に価値を高めていかなければならない。
 
マーケテイングは、顧客を選ぶことであり、その選んだ顧客に「選ばれる存在」になることだ。その選ぶ基準は、自社の商品(製品・サービス)の付加価値を 理解し評価してくれる先である。
                        
会社を継続繁栄させるために「自分は、自分たちはこれで戦う、この道を進む」という道標、軸足を持つことだ。
 
■経営理念の見直し
 
経営理念の見直しを求められている会社が増えている。なぜなら、会社の構造を変えなければ生き残れない会社が増加しているためだ。理念を変える必然性は、会社が大きく変化するときにある。
 
【安ければ何でもよい市場からは撤退せよ】
パナソニックの津賀社長が社内に宣言した言葉。
 
ある分野やある地域などの様々な切り口で、それぞれの顧客に密着して、そこでトップシェアを目指すとしている。誰に何を売るのか、焦点を絞って事業構造を組み替える必要性が出ており、活力を取り戻すには、賢い経営に変わるしかない。
 
つまり、規模の拡大から中味の勝負への転換である。

(この項、了)


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         筆者 小池浩二氏が
  【中小企業に必要な経営の技術】の概論を
      YouTubeで説明しています

      http://www.m-a-n.biz/3-3.html

         是非、ご覧ください
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