小池浩二氏の [継栄の軸足] シリーズ (28)
【明日の種づくり 全4回】
第3回目「第4次産業革命にシフトする会社・人が生き残る」
小池浩二氏(マイスター・コンサルタンツ(株)代表取締役)
■産業革命とは
「トヨタが80年間続けてきたビジネスモデルだけでは、もはや通用しない時代に突入しつつある」
2016年12月、オープンイノベーションプログラム「トヨタネクスト」の発表会で村上秀一常務役員は、こう強調された。
この言葉の背景には、第4次産業革命の存在がある。産業革命とはキーテクノロジーの変化により産業の構造が大きく変革していくことだ。
第1次産業革命は19世紀のイギリスで蒸気機関の登場により生まれ、人の手に頼った仕事のやり方が機械化、そして工業化へと発展した。そして、それまでに存在した多くの作業がこれらの機械化によって代替・失われ、そして新しい産業が生まれた。ポイントは「機械化」。
第2次産業革命は20世紀のアメリカで誕生。電力の活用により機械がさまざまな場所で使えるようになり、大量の機械で大量の製品を作れるようになった。ポイントは「大量生産」。
第3次産業革命は20世紀中盤から後半。コンピューターの活用により情報を扱うことが可能になり、人の知能に関連する作業も代替することが可能になり、指示通りに機械が自動的に動くようになった。ポイントは「自動化」。
そして第4次産業革命は21世紀。データ収集・解析技術で、 機械が自ら考えて動くようになっている。
ポイントは「自律化」。(出典;ものづくりより)
単純に考えると、人間が行っていた作業を機械やシステムが代替し、新しい仕事や業務が生み出され、生産性が向上していく。第4次産業革命はIoTをキーテクノロジーとし、従来あった仕事が失われ、新たな仕事が生まれている。
■第4次産業革命がもたらす変化
2013年に、オックスフォード大学が発表した論文「既存の職業(702業種)に対するコンピューターによる自動化の影響」によると、これから20年以内に、いまの労働者が就いている職業の47%が消滅すると算定している。 20年以内に消滅する可能性が高い職種例として次の仕事を挙げている。
電話営業、不動産ブローカー、保険会社の従業員、クレジットカード会社の従業員、会計税務処理に関わる仕事、銀行の窓口業務、融資業務・証券会社の従業員、工作機械のオペレーター、印刷技術者、レストランの店員、図書館司書、スーパーのレジ係、ホテルのフロント業務、弁護士アシスタント……。
この傾向は小売業で、自動レジが加速度的に導入されている現実をみればわかる。
このレポートで未来の労働市場は、
①高度人材、②コンピューター(ロボット)、③単純作業者
という3階層に分かれ、デスクワークの大半が、コンピューターに置き換えられるので、多くのホワイトカラーが失職するとしている。
第4次産業革命を象徴するキーワードはIoT、ビッグデータ、ロボット、人工知能(AI)等による技術革新。
この技術革新を活用して21世紀の新しい社会インフラが構築され始めている。その一つが自動運転車だ。
共有のプラットフオームが自動運転システムならば、その主体は車ではなくIoT、ビッグデータになる。
そうなると、売上高20兆円・営業利益2兆円のトヨタがグ―グル・アップルの下請け企業になる日が来るかもしれないのが21世紀だ。
■第4次産業革命に対応していく創業25年の神奈川県IT企業の実例
25年前に創業されたA社は、Y社長が創業され、年商6億・社員50名の企業に成長された。IT業界は第3次産業革命のキーテクノロジーとして、社会インフラの基盤となり発展したが、ITの中小企業は下請体質が強く、プログラマーの派遣やシステム業務請負の主要業務は大手企業の二次・三次・四次下請けの構造になっている。
中小IT企業の収益構造は、社員100名・売上高10億企業でも、経常利益率は0.01%の1000万、一人当たりの経常利益は10万と収益は低く、外部環境や顧客動向が変化すると赤字に陥る企業が多い業界でもある。Y社長はこの状況に危機感を持ち、中小IT企業の生き残る道は自社商品を持たないといけないと確信し、自社商品開発を5年前から挑戦。
元来A社は地図情報、映像を取扱う技術に優れ、Googleより早くストリートビューを開発するような技術力を持っており、その固有技術をベースに動画配信システムを開発した。
■生き残るキーワードは自社商品
A社が開発した動画配信システムは、非常に好評で日本の超大手企業から直接問合せがあり、採用・導入している企業も誰が知っている大企業が多い。ある自動車メーカーは、動画配信システムだけではなく、自動車メーカーのホームページの一部作成を依頼するほど、技術的評価をしている。
また、ある公共〇〇放送の動画配信システム採用コンペではビル・〇〇ツ氏の〇〇〇〇ソフトと一騎打ちで戦い、A社が受注を勝ち取っている。このA社の特徴は、地図情報、映像を取扱うキーテクノロジーが優れている点にあるが、真に優れている点は、【キーテクノロジー ✕ コンセプトマーケテイング力】にある。
つまり、「自社の持つ地図情報、映像を取扱うキーテクノロジー」と「何か」を組合せする技術が優れているわけだ。
開発当初は商品の価格設定、売り先、売り方もわからず、右往左往していたが、ユーザーに教えられながら、この動画配信システムは成長。
この新商品がもたらした効果は
・年商の3割を稼ぐ第2の柱ができ上がる
・5分の一の社員(10名)で年商の3割を稼ぐ生産性の高いビジネスの構築
・価格決定権を持てる商品を持てた
・安定して売上が上がる収益構造の構築
・次世代に向けて、夢が語れる企業になった
・大手企業との直接取引口座が持てた
・優秀な社員の確保ができる条件ができた
・下請体質からの抜け出す
等が出ている。
ぜひ、ご参考にしていただきたい。
■21世紀に生きるパスポート
2020年まで、今のままで何も手を打たないと会社はどうなるか?
ある会社は「現存のままなら、ビジネスとして成立しない」と結論づけた。
この会社は売上昨年対比110%と伸びている企業。ある特殊な製品を販売しており、その売上全体の70%が東北エリアでの売上。東北エリアは2013年対2025年比でみると、人口が10%減少し、 高齢化比率が高まる。しかも、この統計には労働人口問題の一つである首都圏への労働者移動はカウントされていない。当然、この会社はこれを見越したうえで、新たなビジネスの展開はスタートしている。
恐らく、大半の企業がこの会社のように「現存のままなら、ビジネスとして成立しない」と考えるだろう。
ポイントは、この問題意識を誰が考え・持つかであり、この会社は「現存のままなら、ビジネスとして成立しない」と結論付けたのが中堅社員とリーダーだ。
この中堅社員の皆さんは、慣れない外部環境変化・業界変化・主要顧客の業界変化の資料を自分達で集め、分析し、結論付けました。文字通り、21世紀に生きる社員が結論付けたことに意味がある。
21世紀に生きる社員とは、現在30歳の社員さんは、70歳まで働くとして今後40年間は働くことになります。この40年間の変化を考えながら働く社員と目の前の事しか考えない社員では、当然のように差が広がり、仕事そのものをコンピューター(ロボット)に奪われることになる。
経営者・役員が考えるのは当たり前。中堅社員が考えることで、この会社の当たり前のレベルが変わり、そして上がる。
「現存のままなら、ビジネスとして成立しない」から生まれるのは危機感。危機感は人間を成長させてくれるエンジンになる。この意識を持つ事が21世紀に生きるパスポートを手にしたことになる。
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筆者 小池浩二氏が
【中小企業に必要な経営の技術】の概論を
YouTubeで説明しています
是非、ご覧ください
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