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「とてつもない楽観論が正しい」~①人生100年、日経平均10万円(武者陵司)

武者陵司の「ストラテジーブレティン」vol.1
「とてつもない楽観論が正しい」
 (1) 人生100年、日経平均10万円
〔第 8 回 東日本大震災復興支援 (5/12)、投資と未来を語る義援金セミナー講演録より〕
 
武者陵司氏((株)武者リサーチ代表、ドイツ証券(株)アドバイザー、ドイツ銀行東京支店アドバイザー)
 
人生100年、いわゆる「余生」が人生の盛りになる、資産形成が決定的に重要に人生100年は今や多くの人のコンセンサスである。5月9日にマレーシアでは92歳のマハティール氏が首相に就任した。この会場に集まられた多くの皆様の華々しい人生の盛りはこれからである。
 
人生60歳から80歳の時代は三つのライフステージがあった。一つ目は学ぶ時代、二つ目は稼ぐ時代、三つ目は余生を送る時代。しかし、60歳から余生を送るというのは、今では全く当てはまらなくなって、60歳からが人生の本番だという時代に入っていく。
そうなると先立つもの、一定の資産が大事になる。一定の資産がなければ、十分に社会的な貢献ができなく、満足な人生を送れない。では、どうすればいいかというと、我田引水だが、株を買えばいい。
 
■2031年日経平均10万円の可能性は高い
 
今100万円あれば、15年後には4倍の400万円になる。株を買って寝かせていればいいというほど、株の投資チャンスは明るい。
近代日本の株価推移をみると、昭和の後半の時代1950年から1990年の40年間で日経平均は約400倍上がった。平成天皇が即位された1989年1月には日経平均は3万円。現在はまだ3万円には達していないが、平成天皇が退位される時には日経平均3万円になっているであろう。
 
しかし、30年で横ばいである。しかしそれから約12年後、年率10%でたどっていけば、2031年には日経平均10万円になる。これは十分にあり得る。世界的な株価上昇はここ40年間、年率10%である。そのペースでいけば、日経平均10万円になる。従って、超長期には、財産を可能な限り株価投資に振り向けるのが重要である。
図表1:近代日本の株価推移・・・天皇在位期間と株価
 
■超短期、目先も好投資場面
 
超短期にも絶好な投資タイミングとみる。2月、3月の株価急落は端的にテクニカル・需給要因によってもたらされ、ファンダメンタルズによる原因では全くなかった。東証の空売り比率が大きく上昇した直後は、例外なく株価が急騰している。3月に東証の空売り比率が50%と過去最高を超えた。そこから空売り比率が急低下した
現局面では株価上昇の条件が整っている。
図表2:TOPIXと空売り比率推移
 

図表3:外国人株式売買金額 (ネット, 週間, 先物+現物)
 
■ファンダメンタルズ好調、投機売りの買い戻しが続く
 
また外国人が2月、3月、空前の先物主体の日本株売りをした。この買戻しがいよいよ始まるであろう。為替でも、105円を底にドル安が終わったようである。この先、ファンダメンタルズ或いは地政学という点では問題全くないと思われるのであり、大幅な株価上昇の入り口であろう。
 
■ドル悲観論の誤り、むしろ長期ドル高が始まる
ドルは多くの人の最大関心事であるが、ドルは長期的に下落トレンドに入った、これからはドル安だという専門家が多い。しかし、これは間違いであると考える。ファンダメンタルズからみるとドル安になる要因はない。金利差、景気の強さ、中央銀行の金融政策に対するスタンスなどをみるとどれもドル高要因である。なぜドル安と考える人が多いかというと、それはひとえに循環論に基づくからであろう。
 
図表4に見るように、ドルの実質実効為替レートを振り返ると、サイクルつまり6年のドル高と10年のドル安というのが繰り返されていることがわかる。現在は2011年から始まったドル高が2017年で終わり、いよいよドル安が始まったという議論が多い。但し、注視しなければならないのは、本当にドル高が始まったのは2011年ではなく、2014年からということである。
 
2011年から2014年の間は、米国の空前の金融緩和(QE,量的金融緩和政策)のもとでドルは歴史的低水準で低迷していた時期であった。つまり、ドル高になってからまだ数年しか経っていない。テクニカル的にも大きなトレンドをみても、まだドル安に転換する状況ではない。
 
何と言っても、今のトランプ大統領の政策は金融引き締めと著しい財政拡大というポリシーミックスであるから、ドル高環境である。
この状況で昨今、新興国通貨不安がおこった。恐らくこれから世界は、一番大事な経済資源の一つがドルという時代に入っていくであろう。国際決済手段のドル調達が極めて大事になっていく、という大きな時代に入ってきたということである。
 
中国、北朝鮮など様々な問題があるが、これを締め上げるアメリカの最後の切り札は、ドル資産凍結である。そうすれば全ての国はアメリカに服従せざるを得ないほど、今はドルに圧倒的に威力がある。
 
確かに世界経済におけるアメリカの地位は相対的に低下している。かつて5割あったものが22%まで低下している。しかしながら、ここ数年、国際決済に使われるドルのウエート、または資金運用の上でのドル資産は高まっている。
 
WSJ紙によると、2009年40%強であったクロスボーダー借入に占めるドル比率は2016年には60%を超えてきた。ドルの時代が始まりつつある予感がする。そしてトランプ大統領の威圧的な、世界に対して力によって覇権を強化するスタンスはドル高と整合的である。
 
加えて、アメリカのハイテク産業の競争力は著しく強いため、経常収支は大きく改善する途上にある。経常収支の赤字が減少すれば、世界的なドル供給が減る時代にここ数年で入っていくであろう。つまり、ドル不足の時代になる。昨年のドル安は、この先のドル高のだまし、或いはスプリングボードであったのではないか。
 
以上より、人生100年、日経平均10万円、長期的も短期にもポジティブで楽観できるし、するべきである。
図表4:ドルの長期循環(実質実効レート推移)
 

図表5:通貨別クロスボーダー借入比率
 
(続く)
 
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■武者 陵司
1949年9月長野県生まれ。1973年横浜国立大学経済学部卒業。大和証券(株)入社、企業調査アナリスト、繊維、建築、不動産、自動車、電機、エレクトロニクスを担当。大和総研アメリカでチーフアナリスト、大和総研企業調査第二部長を経て、1997年ドイツ証券入社、調査部長兼チーフストラテジスト。2005年副会長就任。2009年7月(株)武者リサーチを設立。
 
■(株)武者リサーチ http://bit.ly/2x5owtl