真田幸光氏の経済、東アジア情報
「南北融和と終戦宣言について」
真田幸光氏(愛知淑徳大学教授)
朝鮮半島問題に対しては、今年に入ってから一転、
「南北融和」
に向かって動いています。
昨年末までは、
「金正恩斬首作戦実行」
などという声もあり、緊張していましたし、その傾向は、本年1月までは続いていたものと思いますが、平昌五輪が終了する頃には、
「南北融和」
のムードが韓国国内に拡散、これを追いかけるように、欧州を軸に、国際社会にも、
「南北融和支持」
のムードが醸成される中、今や、米国も軍事的に朝鮮半島に介入できる余地はないと見られています。
但し、米国政府は今も、
「軍事的に朝鮮半島問題に介入する」
というオプションを捨てていないと見られ、その可能性は一応頭に置いておく必要がありそうですが~
こうした中、一つの注目は、南北融和に向かい、体制維持の保証を受けたいとする北朝鮮のみはらず、かつてのノ元大統領を崇敬すると言われる韓国の文大統領も、
「南北融和」
に積極的であり、南北首脳会談では、
「南北融和」
を更に決定的とする上からも、韓国政府は、朝鮮戦争に関して、
「終戦宣言」
を推進していると言われています。
そして、韓国国内でも、こうした文大統領の言動を容認する声が強まっています。
同一民族の関係融和を否定はしにくいでありましょう。
しかし、こうした中、韓国の主要紙の一つである朝鮮日報に、この終戦宣言に関して、
「どのような意味なのかよく分からない」
とした上で、
「言葉だけで読み取ると朝鮮半島で戦争の状況が終わったという公式発表であると聞こえるが、そういうものではなくて政治的宣言であると韓国政府は説明している。
事実、戦争は国際法上、ほぼ全てが言葉ではなく平和協定、または条約で終わるものである。
そのまま終わりにすることも出来るという専門家もいるが、これも議会の同意や国際社会保証などの法的追加措置がなければならないことから、事実上の平和協定だと言える。
この為、言葉だけでする終戦宣言は前例がないという。
2007年の南北首脳会談の時も、ノ大統領=当時=が今と全く同じ終戦宣言を全く同じ方式で推進した。
当時の外交部も世界各国の事例を必死に探してみたが、前例がないと言った。
終戦宣言は通常、平和協定の一部に盛り込まれる。
比較的最近で言えば、1995年のボスニア内戦の末に結ばれたデイトン合意も冒頭に、悲劇的な確執を終息させ、平和と安定を図る云々と宣言している。
しかし、その後の本文11条、具体的な行動内容などを盛り込んだ付属合意書12件がある。
そのような具体的な合意なしに、言葉だけでする宣言には意味がないからである」
とコメントしています。
私も全く同感であり、北朝鮮の出自である文大統領が、
「終戦宣言」
のアナウンスメント効果の意味を知り、国際世論を一気に南北融和に向け、朝鮮半島問題に関して、米国に簡単には軍事介入させないように、
「ロシアと北朝鮮と連携している」
とも見られます。
韓国の立ち位置はどうなるのか、こうした中、米韓関係はどうなるのかを大いに注目したいと思います。
真田幸光————————————————————
1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。1984年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支 店等を経て、2002年より、愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション学部教授。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メン バー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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