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【会社の成長軌道 年商10・30・50の壁を突破する方法 全4回】-④「年商50億を突破させる方法」

小池浩二氏の [継栄の軸足] シリーズ (33)

【会社の成長軌道 年商10・30・50の壁を突破する方法 全4回】
第4回目「年商50億を突破させる方法」

小池浩二氏(マイスター・コンサルタンツ(株)代表取締役)

50億までの成長軌道は 

業種・業態、企業特性により、違いはあれど企業の規模別で捉えると以下のようになる。

区分   年商規模   従業員規模              克服体質                     経営スタイル
中企業     50億     100人~200人    核依存ぶら下がり体質    多機能的展開経営
中堅企業  100億      200人~             外面良好ふらふら体質    バランス重視経営

膨張成長期を越え、50億を目指す段階は2つに分かれる。
◎衰退、倒産期:中身が伴わず、成長性が失速すると非常に危険な状態になり、最悪の事態を迎えることが多い。
◎拡大成長期 :多面的展開に多機能導入(複数事業部制、本部制導入)により拡大成長し、グロスとしては50億企業になり外面は中規模企業であるが多面的、多機能の一つひとつの中身は中小企業のままでギャップの塊現象になる。

・多面的展開の拡大で核になる人・事業はあるが、それにぶら下がる人・事業も多くなる
・つまり、やりっ放し体質を持っていることになる
・全社の戦略展開ができないために核になる部分へのぶら下がり現象が起きる。人財でいうと、部門長はいるが、部門経営者がいないために起こる現象
・会社全体の図体は大きくなったが、一つひとつの中味が未成熟のためにアンバランスになって起こる現象が50億を突破できない要因である。

■50億の壁を突破できない企業の特徴

《1.50億未満企業の特徴》
・中小企業までの時代には、社員の1人3役兼任主義、ガンバリズムで戦ってきたが、中企業になると経営ベースも高まる。
・組織的に専任化体制を導入し始め、その陣容も拡大するので一人だけのガンバリズムだけでは会社全体の業績に影響はしなくなる。

① 年商50億手前で、従業員規模100~200人の会社は多面的展開経営でやり放なし体質を持っている。
② 経営スタイルは多機能的展開経営で、規模拡大を推進させる活動面と内部を円滑に動かす管理面の両輪に力を入れ始める段階。
③ 組織運営を苦手とする層と推進する層のぶつかり合いで、組織機能の細分化が進みにくい。
④ 商品構成・特徴が狙うべき市場・顧客特性に対応する深堀ができずに、また商品開発・開拓も後手になっている。
⑤ 組織機能を細分化するための業務分担、オペレーションマニュアル、諸規定の整備などの組織運営への対応が後手になっている。
⑥ 価値観の違う「旧人材」と「新人材」がぶつかり合うので、うまく融合化しなければ、風土破壊が起こる 。
⑦ 規模拡大に対応する管理基盤ができていないために各種回転性(売上債権・棚卸資産)が悪化する。実質資産の流動性が鈍るが、その要因を掴めない会社が多く、後手対応になっている。

(1)必要機能
第2弾専任化機能が必要になる。その特徴は本部機能である。

前線の戦いが拡大すると戦うための全体調整と細部の調整機能を入れないとバラバラになる。部隊は動くがチグハグさが目立ち、思うように効果が上がらない。

そこで必要になるのが、全体調整機能の⑨ 経営本部機能、拡大した前線を調整する各部署の本部機能である。これは⑩ 営業本部機能、⑪ 生産本部機能、⑫ 管理本部機能であり、必要性に応じ、その機能を入れていく。

① 各部門の機能・役割の展開を調整する機能が必要な組織形態。
② 全体調整を図るのが経営本部であり、部門内を調整するのが各部門本部である。しかし、この段階ではキチンと区分ができずに兼任主義で本部を稼動させることが多い。
③ 一事業部のみではなく、複数事業部の立ち上げも始まる。

●組織機能

●組織形態

■50億の壁を突破できない企業の実例

《必要機能が会社の成長に追いつけないイケイケ集団の事例C社》
(1)会社概要
① 創業15年で6営業所・3工場で年商25億―35億-46億と急成長をした環境関連業種の会社である。
② 若い集団で関連分野に積極的に進出し、多角的な展開を図っていた。
③ 全体をコントロールする本部機能が弱く、組織の運営方法が未熟で各部門ごとでの相乗効果が発揮されていない状態であった。

《2.突破できずに苦しんでいた状況》  ( )数値は全国平均
・経営方針に関し、不明確とする社員が51%(26%)と高く、方針が浸透しているとする社員は10%と多い
会社の方針、理念などを書面で発行して、社員全員に伝えて欲しいとの要望があったが、現状の会社の考え、方針などを知る方法がなくて、社員は戸惑っていた。

急激な成長と社員増加により管理体制が整っていないために不満が出ていた。その対策としてエリア開拓を推進していたNO2の専務を本社に呼び戻し、本部機能の強化に乗り出そうとするが、その方法を知らなかった。

・会社の経営状態は安定している45%(25%)
・この会社に入社してよかったとする人が48%(27%)

従業員、営業所、工場が増え、会社が成長している実感はあった。地域でも会社名が知られるようになると、社員のモチベーションは上がり、より一層働くようになった。
・社内の規律が守られていないとする人が31%(21%)
・上司の指示・命令がはっきりしない人が68%(45%)

部門長の層はそれなりの人数はいるが、マネージメントスキルが弱いために、組織として機能しにくくなっている。これはこの規模ではよくあることであり、典型的な管理者の力量不足及び人不足。

つまり、部門長はいるが、部門経営者がいないために起こる現象である。全社戦略展開を推進しなければならない人が部門内の業務に追われていることが原因である。

≪本部機能が脆弱なために発生した問題点≫
急成長し始めて入社した層が推進する本部機能強化施策に対し、会社の急成長を支えた層がついて来れない場面が多くなり、ぶつかり合っていた。

関連分野へ積極的に進出し、拡大した事業所体制で赤字事業所が次から次へ発生した。個別事業所と全体での相乗効果を展開していく本部機能ではなく、社長と社員の個別キャッチボール運営を脱皮できていなかった。結果、一人当たり生産性は下がっていった。

・規模からくる意識は地域の大企業だが、「やっていることは中小企業」で社員同士の触れ合いが少なく、中小企業の良さも消えた人間マシーン化した職場になりやすい。

・会社の形態をシステム化し、組織運営力で問題点をカバーする事が必要である。全体調整を図るのが経営本部であり、部門内を調整するのが各部門本部である。本部機能を強化しないと組織は適正に動かず、業績は傾いていく。

■50億の壁を突破する方法(思計画経営から利益創出経営への脱皮)
50億突破のために必要な施策としての経営態のスタイル、経営技術、人財、商品・顧客、財務・経理は以下の通りである。

◆経営態のスタイル
① 組織的コントロールシステムを確立
② 分社化政策・部門別経営を推進する
③ 同族経営の鉄則は十二分すぎるぐらい守る
④ 創業の精神、経営哲学を浸透させる
⑤ 多角化による分散化を図る
⑥ 独裁型ワンマンではなく、グループマネージメント体制をとる
⑦ 本部機能の充実を図る
⑧ 利益の出やすく、危険性の少ない会社形態をつくる

◆経営技術
① 経営企画、内部統制の組織体制確立
② 3ヶ月経営の推進を行う
③ 管理会計における利益安全確保の軌道修正策を講じる
④ 報告制度は確立し、機能させる
⑤ リスクの早期発見・対策を行える措置をとる
⑥ 経営方針・目標の進捗管理を徹底させる
⑦ 経営者の方針を常に現場に伝え、徹底させる
⑧ 縦・横のコミュニケーションパイプを常に流れさせる

◆人財
① 分社・部門経営管理が必要になり、部門経営者の存在が重要
② 組織運営におけるライン・スタッフを明確にする
③ 企画・生産・販売を統括するマネージャーが必要
④ 後継者づくりに取り組む
⑤ 業績責任者としての経営陣を正常に機能させる
⑥ 人づくりの環境作りを見直し、手を打つ
⑦ 人財の発掘に力を注ぐ
⑧ 教育計画・予算を組んで人財教育を行う

◆商品・顧客
① 差別化戦略の徹底
② 商品サイクルの点検
③ 第2、第3の主力商品作り
④ エリアマーケテイングの積み上げでエリア拡大
⑤ 潜在需要の発掘によるニッチ分野の開拓
⑥ 技術・商品に独自性を持たせる
⑦ 自主技術の開発・開拓体制をつくる
⑧ 専門業者としての地位を確立する

◆財務・経理
① 自己資本の充実
② 成長と中身のバランスを常にチェックする
③ 内部統制システムを充実させる
④ 多様な方法で資金を調達する
⑤ フローを意識した効率のよいストック対策を打つ
⑥ 効率性・採算性を常にチェックする
⑦ 資本政策を意識する(安定株式の保有と分散化)
⑧ 節税対策に手を打つ

~最後に~
自分の会社は、「50億を突破したい」と夢、ビジョンがあるでしょう。
しかし反面、「うちの会社は40億で十分である」も一つの考えである。
要は、経営者御自身のキャラクターに合う「身の丈に合った経営態」を創るのが1番大切なことである。
自分の、会社の身の丈に合ったやり方を考え、実践し、そして結果として、50億を超えることを考えねばならない。

【身の丈合わずの経営】は会社を崩壊させます。
売上50億突破のポイントは多機能導入(複数事業部制、本部制導入)により会社の中味の充実化を図っていく組織運営への脱皮が鍵となります。
ぜひ、身の丈に合ったやり方で50億突破をチャレンジしてみてはいかがですか?

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筆者 小池浩二氏が【30億までの成長軌道】を動画で説明しています。
こちらからどうぞ  → http://bit.ly/2p4qAef

また、【中小企業に必要な経営の技術】の概論を動画で説明しています。

こちらからどうぞ → http://bit.ly/2NFrWHm

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