【小島正憲の「読後雑感」】
『愛することば あなたへ』
瀬戸内寂聴著
光文社 2018年5月30日
帯の言葉 : 「この本があなたのいきてゆく道しるべになってくれると幸いです」
本書は瀬戸内寂聴氏が、自らの過去の著作の中から、「愛することば」を選び出し、加筆・再構成したもの。その中から、私の気に入ったものを抜き出し、以下に記しておく。
・人は愛するために生まれてきたのです。愛とは自分以外の人の心を想像し、その願いを叶えてあげたいと思うやさしさです。96歳も長生きして、今、わかったことは、愛は許すことだということです。
・90歳まで生きてつくづく思うことは、「生きるということは行動することだ」ということです。どうか皆さん、行動を起こしてください。頑張って恋をして、そして革命を起こしてください。青春とは何か? 恋と革命です!
・人はいかに生きるべきか。仏教は生命の哲学である。人間の弱さ、醜さ、愚かさもすべて受け入れて尚、人間をいとおしいものとされる釈尊の慈悲の大きさに触れることが信の発心である。
・ひとりでいいじゃないですか。人権というのは、個人の権利を守ることだから、自分が人といるのが嫌なら、その嫌を通せばいいじゃないですか。そのかわり寂しいかもしれませんけれども、それは強さです。だから、お釈迦様は「犀の角のようにただ独り歩め」と言われた、群れをなして、つまらない群れとごちゃごちゃするよりも、自分に信念があればそれでいいと説いたのです。
・人間は死に向かって生きている。別れるために会う。死ぬために生きる。老いるために若さがあるのです。
・男との辛い別れを恐れるなら、凡庸で優しいだけの無害な男を選び、慰めだけをわけあっていればいい。少しでも男を育てたいなどという野心を持つなら、別れの日の覚悟を決めて、その瞬間までの充実した歳月の喜びをとることにすればいい。
・生まれる時はあなたまかせだけれど、死に方は選べると思ってきましたが、今となっては死もまたままならぬのが人間だと思い知らされた気がします。
・欲望は人を幸せにしません。むしろ、人を苦しい思いにさせるだけ。ですから、「足を知る」、満足を知って、「ああ、もうこれで結構です」という気持ちになって、余ったら本当に足りない人に回すという、ゆとりのある心を持っていただきたいと思います。物欲を捨てる分、心が豊かになるのです。
・美女は50を過ぎると、がくっと老けて、「元美女」になってしまう。おかめは年を取ってもおかめで、むしろ、年齢をますごとに人間的魅力が浮かんできていい顔になる。仏様は決して不公平ではないなと思う。美女よおごるなかれ、醜女よ嘆くことなかれ。
・何かを得ようと思ったら、平坦な道を歩いていてはだめなのです。
・恋に落ちるのは、突然雷に打たれるようなもの。雷を避けられないのと同じで、自分ではどうしようもないことなのです。ですから、周りがとやかく言ってもしかたがありません。みんなが裁判官のように人を裁こうとする世の中は、とても窮屈で不自由だと思います。自分が不倫に走るかもしれない。自分の子どもがするかもしれない。雷に打たれた人のことを非難しているけれど、あなた自身が打たれた時、どうするのか、それを考えてみてはどうでしょうか。
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評者: 小島正憲氏 (㈱小島衣料オーナー )
1947年生まれ。 同志社大学卒業後、小島衣料入社。 80年小島衣料代表取締役就任。2003年中小企業家同友会上海倶楽部副代表に就任。現代兵法経営研究会主宰。06年 中国吉林省琿春市・敦化 市「経済顧問」に就任。香港美朋有限公司董事長、中小企業家同友会上海倶楽部代表、中国黒龍江省牡丹江市「経済顧問」等を経ながら現職。中国政府 外国人専門家賞「友誼賞」、中部ニュービジネス協議会「アントレプレナー賞」受賞等国内外の表彰多数。