真田幸光氏の経済、東アジア情報
「世界情勢に対する認識について」
真田幸光氏(愛知淑徳大学教授)
しばしば申し上げておりますように、私はもう5年ほど前より、
「大局の変化を受けて、国際情勢は混沌(Chaos)のままに推移する、否、この混沌が深まれば、
“混乱(Disorder)”
に陥る危険性すらあるのではないか。
更に、その混乱が深まれば、
“”無政府状態(Anarchy)”
にまで発展する可能性もある」
との認識を持ち続けています。
そして、この5年間の国際情勢の推移を見ていると、
「こうした認識を更に強めると共に、今後、混乱に向かう可能性が更に高まった」
と考えています。
そこで、2019年の年初に当たり、世界情勢を私なりに概観してみます。
私は、
「“現行の世界経済秩序は、国際金融が主導する弱肉強食型の原始資本主義である。”
と考えており、こうした考え方の基盤には更に、
“覇権主義=Hegemonyがあり、力の有る者が人間界の標準を作り、波及させ、その下で世の中を安定させていくほうが世の中は相対的に安定化する。”
という意識があり、現行の世界はこうした意識の下で動いている、つまり、力のある人=強者が弱者をリードするというような世界の構築を選好しているものと思われ、そして、その中で、強者になりたいという欲を持つ人の間で対立が出てくると、その過渡期では世界は大混乱する可能性が高まる、そして現在の世界は正にそうした時期へと突入していこうとしている」
との認識を持っています。
そして、このような「国際金融が主導する弱肉強食型の原始資本主義」を生む背景として覇権主義では、普通、強者となるリーダーたちは、
「人々が生きていく為に必要なものをコントロールしようとする。
つまり、水、食糧、原材料、エネルギー資源のコントロール権拡大に走る。
そして、貨幣経済の下、これらを経済的に支配する通貨によって、更に強く支配する。
ここに国際金融の大きな役割があり、現在、その力が強大化してきている」
と考えられます。
そしてまた、こうした意識の下で、
「強者が、このような世界を守るために作った法と制度・仕組みの下では、平和裏には強者の立場は決して揺るがない。
即ち、これに逆らおうとする者が、強者の作った法や制度、仕組みによって違法や不法などと判断されれば、法令遵守の違反ともなる(現行のビジネス社会がComplianceを殊更に強調するのもこうしたことが背景にあると私は見ています)、しかし、弱者の中に本能がふつふつと芽生え、強者に対して反発してこようとすると、究極は、
“自らが強者となるしかない。”
と、
“究極の力である武力を以って立ち上がる”
これをまた、既存の強者は、
“武力を以って押さえようとする”
従って、既存の強者は、自らが強者であるうちに、万一の際に備えて、
“軍事力”
を強化、その結果として、上述したような国際金融によって束ねられた、水、食糧、原材料、エネルギーの世界を、軍によってコントロールされる軍事力によって、護衛できれば世界は安定するとの意識の中で現行の世界を運営していこうとする。
しかしまた現行の世界では、それに対する反発の動きもまた、顕在化してきている、我々は今、そうした世界の中で生きてきている」
のではないかという認識を私は持っています。
そして、こうした世界情勢を最近になり、更に深めている背景には、2017年、アメリカ合衆国に、トランプ大統領率いるトランプ政権が登場したことから、昨年は米中の対立が本格化、顕在化しました。
2019年は、この、
「米中対立の行方」
に加えて、
「BREXITをはじめとする、ドイツやフランス、イタリアの不安に見られる欧州情勢の先行き」
「イランやシリア問題を背景とする中東情勢の不安定」
などが既に懸念されており、国際金融市場も昨年末より不穏なスタートとなっています。
しかし、こうした時だからこそ、我々は、
「真理を求めて考え、すべきことを粛々としていかなければならない!!」
と私は考えています。
真田幸光————————————————————
1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。1984年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支 店等を経て、2002年より、愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション学部教授。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メン バー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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