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「ローウィー研究所のアジアパワー指数報告について」(真田幸光)

真田幸光氏の経済、東アジア情報
「ローウィー研究所のアジアパワー指数報告について」

真田幸光氏(愛知淑徳大学教授)

ブルムバーグなどの報道によると、オーストラリアのシンクタンクであるローウィー研究所は、
「アジア太平洋地域への影響力で米国に勝る国はないが、米国のトランプ大統領の保護主義的な貿易政策を背景に中国本土の力が増している」
との総括コメントをしています。

このローウィー研究所は、オーストラリアのシドニーを本拠とする研究所であり、その公表した2回目の年次「アジアパワー指数」によれば、米中に続く3位が日本となっており、また、歴史的な米朝首脳会談の効果もあり、北朝鮮は順位を上げているとも報告しています。

そして、注目すべきコメントは、
「米中間の力の差縮小を米国が止める可能性は低い。
トランプ政権の貿易戦争重視は経済関係における米国の顕著な影響力低下の反転にほとんど寄与していない」
と厳しい見解を示しています。

この、ローウィー研究所は、軍事力や防衛ネットワーク、経済資源・関係、外交・文化的影響力などの指標に基づき25カ国・地域のランク付けを行い指数化したとしており、大半の指標で米中が首位争いをしているともコメントしています。

こうしたことからすると、米中によるアジア二強とも言え、これは、事実上、世界二強にも等しいとも言えます。
そして、今回は中国本土と北朝鮮が最も大きく躍進、一方、アジアに於けるリベラルな秩序のリーダーになったのが日本であるともコメントしています。

更にこのレポートによれば、
「中国本土が急速に米国に迫っているが、中国本土政府は政治・構造的な課題に直面している為、地域で紛れもない優位性を確立するのは困難かもしれない」
との見方も示しています。

尚、米中日に続く4位はインド、そして、ロシア、韓国、豪州、シンガポール、マレーシア、タイの順でトップ10入りを果たしているともコメントしています。

これをまた、採点点数で見ると、米国は昨年と同じ84.5点で2年連続1位、2位の中国本土は昨年よりも1.4点高い75.9点で、米国との差が1桁台となっています。

これに大きな差をつけられながら、日本が42.5点で3位、インドが41点で4位となり、いずれも強大国に分類されました。

5位のロシア(35.4点)から17位のフィリピン(13.7点)までは中間国で、最も低い4.7点のネパールなど10点未満の8カ国は弱小国とされ、北朝鮮は14点で全体の16位でしたが、昨年に比べて1ランク上がっています。

そして、ローウィー研究所は、
「日本は果敢な海外投資によって影響力を拡大し、自由陣営のリーダーに浮上している。
インドは政府の統制力が弱い」
ともコメントしており、これが米中との差をつけられながらも3位、4位となった日本とインドに関してのコメントとなっています。

アジア二強、世界二強時代の中で、何とか日本も特徴を活かしながら、世界に良い意味で影響力を持つ国にしていかなくてはならないですが、ローウィー研究所は、そうした意味で、日本が良い傾向にあると評価してくれているように思います。

真田幸光————————————————————
清話会1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。1984年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支 店等を経て、2002年より、愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション学部教授。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メン バー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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