真田幸光氏の経済、東アジア情報
「米韓関係について」
真田幸光氏(愛知淑徳大学教授)
私は、
「日韓関係に関して、米国が介入する」
ことは極めて異例であると考えています。
否、むしろ、これまでは、
「米国との外交同盟を背景にして、米国と連携せよ、と日本と韓国にそれぞれ個別に要求するのであれば、韓国に対しても、日本ともっと連携せよ、と伝えて欲しい」
と日本側が感じていても、米国は、
「いや、日韓の問題は日韓で対応しなさい」
と言わんばかりに、
「不介入」
の立場を取ってきており、日本からすれば、
「日韓関係に関して言えば、米国は頼りにならないな」
との印象を私は持っていました。
しかし、先般、米国のハリス駐韓大使は、
「米国の国益の下」
「即ち、日本を助けるという意味ではなく、米国の為に」
ということが前提となったうえで、
「韓国は日本と連携しなさい」
との主旨の、私からすれば、
「異例の」
韓国に対する対応を示しました。
そこで、韓国の主要紙である朝鮮日報のインタビュー記事の冒頭部分を引用したいと思います。
ファーウェイ問題で、韓国の協調を求めることを主たる背景とし、更に、中国本土を強く意識しながら、インド洋の制海権についても、韓国に協調を求め、また、米朝関係にも言及しつつ、日韓関係について、韓国にとっては、厳しい言及をしています。
引用はじめ
「ハリー・ハリス駐韓米国大使は11日(現地時間)、米ワシントンの国務省庁舎で、
“2019年現在、米国にとって韓国より良い同盟国や友人はいない。”
という言葉で本紙とのインタビューを始めた。
“あまりにも外交的なのでは”
という質問に笑いながら、
“(軍人出身なので)外交的になろうと考え、勉強している。”
と答えた。
しかし、中国のファーウェイ(華為技術、Huawei)社製品使用問題や、韓米日共助問題などに言及する時は全く“外交的”でなかった。
職業外交官出身者とは違い、強い口調で所信を明らかにした。
同大使は、
“韓米日の仲がうまく行かなければ、北朝鮮や中国といった問題で力が分散してしまう”
と、韓日間の確執に懸念を示した。
また、第3回米朝首脳会談の可能性については、
“北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は門戸を開くべきだ”
と言った。
米海軍の元大将で、太平洋司令部(現:インド太平洋司令部)の司令官を務めたハリス大使は昨年7月に韓国に赴任した。」
引用終わり
米国としては、中国本土との関係を意識し、玉虫色の対応を示す韓国に対して、
「態度を明らかにせよ!!」
と警鐘を鳴らしたように見えます。
しかし、これに対して、中国本土は、当然のように反発を示し、同じく、朝鮮日報のインタビューに答えた、中国本土のシンクタンクの総裁のコメントを引用して、下記のように、
「中国の外交・安全保障分野のシンクタンク“国観智庫”の任力波総裁は、ソウルで本紙のインタビューに応じ、“米国の華為制裁は単純な経済問題ではなく、中米両国の覇権争いが重要な時期を迎えたことを示す重大な事件だ”と述べた上で、“中国の改革開放を主導してきた習近平国家主席は米国の華為攻撃に屈することなく、確固たる意志で対抗していくだろう”と指摘した。
任総裁はまた、“韓国は今回、終末高度防衛ミサイル(THAAD)問題の当時のように判断を誤らないでもらいたい”とも呼び掛けた」
と伝えています。
これらを見ると、明らかに、
「米中の股裂状態に置かれている韓国の様子」
が分かります。
一旦、米中が上げた拳を下す姿勢を示す中ではあるが、潜在的な米中対立が残る中、さて、韓国は、今回はどのような態度を示すのでありましょうか?
相変わらず、玉虫色の対応をし、日韓関係にも改善する姿勢を示さないのでありましょうか?
文政権の本性を見極めたいと思います。
真田幸光————————————————————
1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。1984年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支 店等を経て、2002年より、愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション学部教授。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メン バー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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