働き方改革時代の生産性向上策-(3)
「シリコンバレー流目標達成術、OKRとは」
神田靖美氏(リザルト(株) 代表取締役)
グーグルやリンクトインなど、シリコンバレーの企業で使われているOKRという目標達成術があります。Objectives & Key Resultsの頭文字をとった言葉で、定性的な目標と、それに基づいて数値化された結果指標を立てて、それに基づいて日々の活動を進めて行くことです。
■目標は定性的なものをひとつ
目標達成術と言えば、目標を数値化することや、複数の目標をバランス良く配置することが強調されますが、OKRではあえて、定性的な目標を設定します。
「○○地区の○○市場を勝ち取る」とか「○○地区の○○の使い方を変える」という具合です。
また、目標はあれこれ立てるのではなく、一つに絞ります。
■結果指標は数値化して3つ
その代わり、目標が達成できたかどうかを測る結果指標を数値化します。これは通常3つに絞ります。ただしバランスト・スコアカード説のように、「財務の視点でひとつ、顧客の視点でひとつ、…」というように、領域を限定しません。売上高、NPS(顧客が自社の製品を家族や友人に勧めたいと答える割合)など、何でも大丈夫です。
従来の目標達成術が、特に長期の目標を重視していたというわけではありませんが、OKRでは、3か月程度で結果が出る目標を選ぶことが強調されます。スピードが要求される、シリコンバレーならではの発想です。全社OKRを立てたら、各部門がそれに貢献できる部門OKRを立てます。部門OKRが決まったら、それを受けて各社員が個人OKRを立てます。
■月曜日はチェックイン・ミーティング
OKRでは、毎週月曜日にチェックイン・ミーティングを行います。ビジネスユニット(部や課、チームなど)のメンバーが集まって、Key Resultsの進捗状況を発表し、今週の優先事項を確認します。
こういうことがあるとメンバーは、目標達成に向けての様々な活動に締め切りがあることを意識します。
■金曜日はウィン・セッション
金曜日にはウィン・セッション(勝者の集会)を開きます。ここではその週の収穫を見せ合います。見せるためには何かを収穫しなければならず、収穫を意識することは自信につながります。
■OKRの良さは手軽なこと
OKRは既存の目標管理に比べて、特に目新しいことはないようにも感じられます。まず定性的な目標を立て、定量的な目標に展開する。達成までの道標を設定する。いずれも、すでにどこかで聞いた話のような気がします。しかし目標管理よりは容易に手を付けられます。
「財務」「顧客」「社内ビジネスプロセス」「学習と成長」の各視点で目標祖設定する。「全社目標に含まれていることは必ずどこかの部門が引き受け、部門目標に含まれていることは必ず誰か個人が引き受ける」という「目標の連鎖」。目標管理シートを使う。面接で目標を決めるなどの、目標管理の原則的な事項は、やや壮大だと思われる経営者の方もおられるかもしれません。
OKRにももちろん、これらに類する原則はあります。しかし目標管理ほど厳格ではありません。必須の条件は「3か月で追求すべき定性的な目標と3つの結果指標を立てる」ということだけです。目標管理の前段階として、まずOKRから始めてみるというのはいかがでしょうか。
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■神田靖美氏(リザルト(株) 代表取締役)
1961年生まれ。上智大学経済学部卒業後、賃金管理研究所を経て2006年に独立。
著書に『スリーステップ式だから成果主義賃金を正しく導入する本』(あさ出版)『社長・役員の報酬・賞与・退職金』(共著、日本実業出版社)など。日本賃金学会会員。早稲田大学大学院商学研究科MBAコース修了。
「毎日新聞経済プレミア」にて、連載中。
http://bit.ly/2fHlO42