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「韓国経済について」(真田幸光)

真田幸光氏の経済、東アジア情報
「韓国経済について」

真田幸光氏(愛知淑徳大学教授)

新年から、韓国経済に関するコメントで恐縮です。

「韓国経済が50年ぶりとなる最悪の状況に直面した。」
とする内容の記事を英国のフィナンシャル・タイムズが昨年末に報じています。

米中貿易紛争に伴う輸出低迷と半導体不況などが重なり、
「輸出立国・韓国」
が直撃を受けた結果、韓国は、2019年、2020年の経済成長率が連続で2%台に留まると予想されています。

そして、これは中央銀行である韓国銀行が、関連統計を取り始めて以降初めてのことなる悪い事態で韓国国民の不安を募らせ、その結果として、内需の冷え込みにも繋がる可能性があります。

こうした中、韓国銀行は2019年11月29日に2019年の経済成長率見通しを2.0%に下方修正し、2019年1月時点の予想値であった2.6%を0.6%も下方修正しました。

また、こうした予測を踏まえ、韓国銀行は2020年の成長率見通しも2.5%から2.3%に引き下げています。韓国が2年連続で2.5%以下の経済成長率を記録するのは韓国銀行の記録がある1954年以降で初めてとなることになります。

世界的な金融危機となったリーマンショック直後の2009年には、韓国経済の成長率は0.8%に低下しましたが、翌年には6.8%の成長で急速にV字回復を遂げています。

また、アジア通貨危機を経験した翌年の1998年にはマイナス5.5%まで落ち込みましたが、1999年に11.3%、2000年に8.9%成長するなど、やはり力強い回復力を示してきました。

金融危機で、実体経済の痛みが少なかった韓国は韓国ウォンの調整なども背景となり、回復が早かったとも言えましょう。しかし、輸出がGDP全体の45%、特に中国本土からの輸出が輸出全体の約4分の1をそれぞれ占め、対中輸出への依存度が高い韓国は、最近の米中貿易紛争による中国本土の成長鈍化の影響は避けられない、即ち、実体経済の痛みから、今回の回復には一定程度の時間が掛かると思われます。

そして、更に、
「米中双方からは、米国を取るのか、中国本土を取るのか?」
と外交的圧力も受けています。

また、産業面では、日本に追いつけぬ中、中国本土の急激な追い上げに会い、今現在は韓国企業の生きる道が狭められています。

これに対して、現在の韓国は、韓国銀行が過去最低水準の1.25%という政策金利を維持し、韓国政府も金融危機以降で最も拡張的な財政政策を取って経済の防衛を図る対応をしていますが、その効果は今のところ、あまり示されていません。

韓国経済はやはりこの50年で最悪の状況にあると見ておくべきではないでしょうか。

 

真田幸光————————————————————
清話会1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。1984年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支 店等を経て、2002年より、愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション学部教授。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メン バー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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