【チームリーダーは動かす技術を身につけよう-(2) 全4回】
第4回目「OJTとは」
小池浩二氏(マイスター・コンサルタンツ(株)代表取締役)
■OJTの場面
OJTとは、「オン・ザジョッブ・トレーニング」の略語で、現場での教育をさします。
教育には、外部研修もありますが、いちばん効果を上げるのがこのOJTです。
このOJTは、日常の職場において、メンバーに対して仕事への与え方やその仕事のやり方を具体的、実践的に理解させ、習得させることがポイントになります。
OJTの場面は、ごく自然に行われる場を基本的に想定したほうがうまくいきます。メンバーは日常業務の中で仕事を覚える機会が多く、その機会に対して常に人から見られている環境を作り出すほうが、牽制機能が働いて人は成長できます。
■日常の場面とは
逆に特別な場面は社内研修会、勉強会です。その理由は、1年間で社内研修会や勉強会はよく行っている会社でも30回前後だと思います。そうすると年間220日前後の稼働日で30回しかないわけですから、特別な場面になります。
この特別の場面は、その仕事を知る、理解する場であり、その仕事をできるようにする機会ではありません。仕事をできるようにする機会は、やはり日常業務の中にしかありません。
■説明することと教えることは違う
説明することと教えることは違います。 OJTの目的は教えることが目的ではありません。メンバーができるようになって、はじめて仕事を教えたことになります。
ひと通り教えたから、できるとは限りません。 説明とは仕事を分かるように説明すること、それに対し教えるとは仕事ができるようにすること。教えられる側には、「知る・わかる・できる」のプロセスがあり、教える側のプロセスは「伝える・理解させる・実務指導」となります。
「相手が覚えていないのは、自分が教えていないから」という視点が大切になります。
●自分はどのようにして、その仕事ができるようになったのか?
●そのときの自分のレベルはどのくらいだったのか?
●そして、いま教えている人のレベルはどうか? 何が理解できていないのか?
●何がやりにくいのか?
等々の配慮が必要となります。
■「気づかせる・引き出す」という観点の指導方法
自分で気づき、引き出した答えは、納得性や理解度が高くなります。そのためには、メンバーに「気づかせる・引き出す」という観点の指導方法を用いると効果を上げやすくなります。
その代表格が指示の仕方で、相手の能力に応じて、指示の方法も「言い渡す」「頼む」「相談する」といった違いがあります。
●言い渡す……指導を受けながら、その業務ができるケース
●頼む……自分一人でその業務ができるケース
●相談する……状況変化でも自分で判断して、対応できるケース
これは相手にとっては、リーダーが自分の力量をどう評価しているかを知る機会にもなります。指示をするときに重要なポイントがメンバーの理解を確認することです。
指導を受けながら、その業務ができるケースでは、その仕事の手順を確認することが重要です。自分一人でその業務ができるケースでは、状況変化のときに、自分で判断して、対応できるように、「もし、~の場合はどうする?」「こういう事態のときはどうする?」等を考えさせることです。
考えさせる指示命令にはリーダーの質問の仕方がカギになります。メンバーの気づいていない点、問題点を気づかせる狙いもあり、またリーダーの求めているレベルを伝える場にもなります。
このときに、メンバーが助言・援助を求めてきた場合には、その原因と解決に必要な能力を見極め、現在の能力レベルでの協力方法を考えます。
・こうしてはどうかと、解決策を教える
・こういう考え方をしてみてはどうかと、ヒントを与える
・こうしないからいけない、と原因を教える
・こういうことを調べてはどうか、と情報のヒントを与える
・そのやり方をもう少し突っ込んでみてはどうか、と自信を与える
・必要知識・視点のヒントを与える
相手に考えさせるために色々と質問することで、リーダーの指示命令の意図が分かり、ピント(価値判断基準)が合う仕事につながります。
■ 小池浩二氏 (マイスター・コンサルタンツ(株)代表取締役)
実践に基づいた「中小企業の基礎打ち屋」として、中小企業成長戦略のシステムづくりを研究。これまで500社以上の中小企業経営に関わり、経営診断、経営顧問、研修等を実践。多くの経営者から「中小企業の特性と痛みをよく理解した内容」と熱烈な支持を得ている。
http://www.m-a-n.biz/
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