【特別リポート】
「自粛規制解除後の新宿」
日比 恆明氏(弁理士)
今年1月から始まった新型コロナウイルス騒動は早くも半年が経過しました。毎日のニュースのトップはウイルスに関するものばかりです。人命に直接かかわるためで、聴取者が一番関心を持つためためでしょう。
テレビ番組では過去に放送した内容を再放送したり、出演者がウエブで遠隔出演したりしています。テレビ局の取材者が感染するを防ぐためであり、外出取材を控えているからでしょう。このため、番組自体が面白くなくなり、視聴者のテレビ離れがさらに加速されていくようです。その反面、テレビゲームの売上げは伸びているようで、娯楽の主体が変わっています。
さて、政府は4月6日夜に緊急事態宣言を発令し、4月9日には飲食店などに営業自粛を要請しました。営業は午後8時まで、酒類の提供は午後7時までとなり、夜の繁華街には人出が少なくなりました。自粛要請の成果で一日の感染者数は5月23日になると2名に落ち込み、6月19日には東京アラートを解除しました。今回は営業自粛要請が解除された後の新宿の様子を報告いたします。
写真1
6月19日に自粛要請が解除され、20日、21日は最初の週末となり、27日、28日は2回目の週末になり、今までの巣籠もりの反動か、繁華街に繰り出す人達が増えていきました。新宿歌舞伎町では、4月最終の週末と比べると6月の週末の人出は3.36倍と急増しました。
夜の街に出かけた顧客が増加した結果、それまで沈静化していたコロナウイルスの感染者が急増することになりました。7月2日に107名、3日は124名、4日は131名と3桁を記録することになり、自粛規制解除の悪影響がそのまま数値になって表れたことになりました。
毎夜のニュースで感染者数の増加が発表されたことから、都民も危険を感じて、酔客の方が「自主的な外出規制」をしたため今度は歌舞伎町への人出が減少しました。
写真1は歌舞伎町のセントラルロードを新宿東宝ビル(旧コマ劇場)の方向を撮影したものです。人通りが多いように見えますが、道路に立っている人達はほぼ全てが客引きであり、飲食客は殆ど見かけられませでした。
写真2
自粛規制が解除されため、歌舞伎町のほぼ全ての飲食店は営業していました。しかし、飲食店に入店している飲食客は極度に落ち込んでいました。どの店舗でも来客数は座席の1割から2割程度ではないかと思われます。
来客率が悪いのは写真2にあるようなパブやスタンド形式の洋風飲み屋であり、一番街通りの左右の店舗はガラガラでした。どの路面店でも、店内の空気を循環させて感染を防止するために窓を開放しているので、店内の様子は道路側から簡単に覗くことができます。こんな状況では飲食店で働いている人達もやる気が出ないでしょう。
写真3
しかし、歌舞伎町の全ての飲食店で来客率が悪いのではなく、少数ですが比較的混んでいる店舗もありました。写真3にあるような居酒屋、焼き鳥屋です。満席とはいいませんが8割くらいの来客率でした。
私は6月から毎晩のように、西新宿付近にある飲み屋(酒を提供する店舗のみ、ラーメン屋、定食屋は含まず)を覗いて店内の様子を観察してきました。どの飲み屋の入店率は1、2割と言ったところでした。しかし、入店率が6割以上の飲み屋がありましたが、それらは大衆酒場といった雰囲気の居酒屋に近い業態の店舗でした。
入店率が高い飲み屋は、客単価が3千円以下の安い居酒屋でした。そして、入店者を観察すると、2つの年代層に別れているように思えました。2つの層は、
(1) 学生風の若者、20代のサラリーマン
(2) 無職のような高齢者、肉体労働者
となります。
若い人達は、「コロナウイルスは若者には感染しない」とか「体力のある若者には感染するはずがない」という先入観で飲み歩いているのではないかと推測されます。しかし、ここ1週間のニュースでは、感染者には20代、30代の年代が多く占めるようになった、と報道しています。先程の先入観で、多くの若者達が夜の街に繰り出した結果でしょう。
また、高齢者や肉体労働者が目立つ居酒屋の形態は、カウンターだけで老夫婦が運営している比較的小さな店舗でした。顧客はその店舗の馴染み客であり、毎晩のように飲み屋に出かけるのが習慣となっているのではないかと推測されます。もしかしたら、独り暮らしで、夜になると馴染みの飲み屋で親父と会話するのが唯一の楽しみ、という人達かもしれません。
このような人達にとっては、コロナに感染する恐れよりも、毎夜の楽しみが優先するのでしょう。小池都知事がいくら「ステイ ホーム」と叫んだところでも、一時の楽しみが生き甲斐となっている人達には通じないでしょう。
写真4
政府若しくは地方自治体は、コロナウイルスの感染の原因は「夜の街」にあり、しかも、「接客を伴う飲食店」にある、と断定したようです。このため、歌舞伎町にあるホストクラブの従業員を対象にしてPCR検査をしたところ、ホストから多数の陽性感染者が発見されました。それ以来、毎日のようにホストクラブの従業員の患者数がニュースで流れるようになりました。次いで、池袋、横浜のホストクラブの従業員からも感染者が続出していると報道されるようになりました。
ホストクラブは来店者と濃厚な接触をする接客業であるため、コロナ感染し易いということになります。しかし、どうも、このニュースは政府などによる「官製のヤラセ」ではないかと疑りたくなります。そもそも、浮き草稼業のホスト連中にとって、PCR検査などというややこしい手続きなどはしたくもないでしょう。また、ホストとホストクラブは雇用契約を結んだ社員でもなく、ホストクラブ側では店内にいるホストの住所、氏名などを正確に把握しているとは思われません。どのようにして保健所はホストを検査したのかが疑問となります。
「歌舞伎町のホストから多数の陽性患者が確認された」というのは公権力による世論操作ではないかと推測されます。ホストクラブは接客業であることから、風俗営業法による許認可業の対象であり、管轄警察署の許可が無ければ営業できません。このため、警察署から目ぼしいホストクラブに連絡があり、「店内のホストのPCR検査に協力しないと営業許可を取り消す」と脅しが入ったのではないでしょうか。
営業許可を取り消されると、ホストクラブは経営できなくなります。警察官と保健所職員に乗り込まれたホストクラブでは、しかたなくホストを差し出してPCR検査をさせた、というのが本当のところではないでしょうか。昔からお上には逆らえないのが庶民の立場なのです。
そもそも、ホストに感染者が増加したのは事実なのですが、同じ接客業であるバーやスナックがPCR検査の対象となっていないのが不思議です。バー、スナックではカウンター越しにホステスと客が会話するのでコロナ感染があっても奇怪しくないはずです。
ホストクラブが公権力のやり玉に上がったのはバー、スナックに比べて店舗数が少なく、目立つ存在だからでしょう。女性客を相手にしたホストクラブを叩けば、女性が歌舞伎町に足を運ばなくなるのでは、という想定をしたのかもしれません。もしかすると、小池都知事が以前にホストクラブでぼられた体験があり、小池都知事にとってホストクラブがトラウマとなっているのかもしれません。東京都がホストクラブを目の敵にするのは、このような裏の原因があるのでしょう。何れにせよホストクラブ業界にとっては災難なことであり、倒産する店舗もでてくるでしょう。
写真5
歌舞伎町の飲食店にとって、来店者が減少すると経営が成り立ちません。このため、将来に早々と見切りをつけ、店舗の運営を止めるところも出てきました。写真5は5階建てビルで、以前はパチンコ屋が入店していました。ビル1棟が空室となっていました。
写真6
写真7
写真8
写真7は一番街通りにある牛丼の「松屋」で、こちらの店舗も閉店していました。一番街通りは賑やかで、通行人数も多いため滅多に空き室が出ることはありません。一等地から撤退するのですから大変な決断をしたのでしょう。
これら以外でも複数の店舗で閉店の貼り紙が出ているところを見かけました。私が観察したのは路面店だけなので、閉店した店舗はそれほど目立つ数ではありませんでした。しかし、ビルの中にあるバーやスナックなどの小規模の店舗では既に撤退したところも多いのではないかと思われます。
なお、これらの店舗が撤退したのはコロナ騒動が原因なのか、以前から撤退を計画していたが撤退する時期がコロナ騒ぎと偶然に重なったのかは不明です。しかし、歌舞伎町に出掛ける人が減少していることから、どの店舗も経営が苦しいことには変わりないでしょう。
写真9
あるパチンコ店の入口では、店員が体温計を持って接客していました。入店者の体温を一人ずつ検温していました。しかし、体温が高いからといって入店を断るのかどうかは不明です。「当店では感染防止を行っています」という、パチンコ店の対外的なアッピールかもしれません。
写真10
場所は変わって、歌舞伎町の裏側にある怪しげな路地ではイラン人がマスクを販売していました。50枚入り1箱が9百円となっていて、2か月前は3千円で販売していたものです。店主は大儲けしようと大量に輸入したのでしょうが、マスクの不足時期が過ぎてしまい売れ残ったのです。店舗の裏側にはマスクが入った段ボール箱がうず高く積まれているのが見えました。
翌日にこの店の前を通ったら、1箱850円に値下げされていました。なお、このマスクは3層となったサージカルマスクではなく、2層の薄いマスクであるため、感染予防には効力がありません。このため、売価を安くしても誰も買う人はいませんでした。