【特別リポート】
「令和3年 元旦の靖国神社」
日比 恆明氏(弁理士)
明けましてお目出とう御座います。
昨年はコロナで始まり、コロナで終わった一年でした。しかし、コロナ騒ぎは昨年で終わったのではなく続いていて、年内に収まるかどうかも問題です。
感染防止のワクチンが開発されているようですが、ワクチンも色々と問題がありそうです。全国民に接種が終わるのが何時になるかどうか、ワクチンがどの程度効力を持つか、副作用はないのだろうか、などと疑問が湧きます。運が良ければ、年内に全国民がワクチン接種できて、感染が終わるかもしれません。しかし、運が悪ければコロナの収束にはあと3年はかかるかもしれません。実際、百年前のスペイン風邪では収束するのに3年かかってました。
また、コロナの感染が終結しても経済再建の問題が待ち構えてます。政府の緊急支援により、雇用調整金、特別給付金などの莫大な費用が支払らわれています。これらは経済が立ち直ったなら、何れかは税金として返済しなければならないものです。すると、収束から10年以上は税の負担により社会が沈滞し、不況となる可能性があります。いずれにせよ、コロナ騒ぎから開放されても次にも大きな山が待ち構えているようです。
12月31日の東京都内ではコロナ感染者数は1300人以上になった、と発表されました。何時、どこでコロナに感染するか判らず、外出するのも決死の覚悟が必要となってきました。そんな騒ぎの中で、今年も正月には靖国神社に初詣をしてきました。当日、現地で見聞したことをお伝えします。
写真1
ニュースによれば、今年の日本海側は久しぶりの豪雪となり、各地で積雪が高くなったようです。関越自動車路では雪のために大渋滞が発生し、多くの自動車が立ち往生しました。しかし、関東地方では12月30日に小雨が降った程度で、穏やかな天気が続いていました。特に、今年の元日は雲一つ無い快晴で、気温は10度でしたが風が無いため暖かい一日でした。
さて、政府は、コロナの感染を防ぐには人との密集を避けるように指導しています。このため、神社などへの初詣は分散して出掛けて欲しい、と申していました。つまり、初詣は正月三が日に限らず、その前後の日などに分散して集中を避けて欲しい、ということでした。
しかし、この指導にはどうも無理があります。今年の暦では、1月3日は日曜日で、翌4日は月曜日となっていて仕事始めになります。4日、5日に分散して初詣をしようにも、会社が始業しているのでかけられないことになります。
新聞、雑誌には、関東地域にある著名な神社、仏閣が初詣の広告を掲示してましたが、分散参拝には何も触れられていません。暦通りであれば、分散して初詣するのが無理であることに気がついていたのでしょう。
しかし、政府の分散参拝の要請によらずとも、参拝者の方も心得ていて今年の初詣には躊躇したようです。靖国神社を観察した範囲では、参拝者数は例年の十分の一、或いは十五分の一ではないかと思われました。
また、高齢者がコロナに感染すると重症化し易いということから、高齢者が初詣を避けたのではないかと思われます。ニュースによれば、関東地区で一番初詣客の多い明治神宮でも、参拝者数は例年の2割に減少したとのことでした。
写真2
写真3
神殿の前で参拝を待つ行列ですが、皆様1メートル程度の間隔を空けていました。石畳には黄色いテープで待機する位置が示されていて、参拝者はこのテープを目印にして順番を待っていました。
黄色いテープの上には、「間隔を空けてお並びください」という文字の印刷されたテープが貼られていました。石畳に黄色いテープを貼っていくだけでも大変なことですが、更に文字テープを貼るのですから大変な作業であったでしょう。
写真4
参拝者もコロナ感染に注意していましたが、神社側でもそれなりの対処をされていました。お守り、記念品などを販売する授与所では、周囲一面に感染防止のビニールが吊り下げられていました。この他にも、社務所の窓口などでは、参拝者からの飛沫を防ぐためにビニールが張られていて、感染対策は万全でした。
写真5
写真6
今年の境内で目立っていたのは、あれこれとウイルスに対する注意書きが書かれた掲示板でした。写真5は、参集殿の参拝入口に設置されたもので、人数制限を告知したものです。今年は参拝者の密集を避けるため、集団での参拝はできず、一団体について参拝者は5名までとなっていました。左側の掲示板では、マスクの着用をお願いするもので、同じ掲示板は境内のあちこちで見かけられました。
写真6は休憩所に掲げられた掲示で、参拝者同士での密着を避けて欲しいという内容と、休憩は短時間で終えて欲しいという内容でした。
神社がここまで注意を払うのは、神社から感染者が発生するのを何としても防ぎたいからでしょう。万一感染者が発生したなら、神社の職員も濃厚接触者と判定され、業務ができなくなります。参拝には来て欲しいのですが、職員には絶対に感染を避けたい、というのが神社の本心でしょう。
写真7
写真8
さて、今年はコロナの影響により、神社では長年の慣習の多くを中止しました。写真7は遊就館を撮影したものなのですが、ここでは例年福引が行われていました。写真8は6年前の同じ場所で、三角籤による福引が開催されていて、参拝者の楽しみの一つでした。コロナの接触感染を避けるため、今年は福引は中止となりました。その他に、振舞い酒や甘酒の無料配付も無くなりました。境内は賑わう場所が無くなり、寂しいものでした。
写真9
写真10
写真9は今年の参道の写真であり、写真10は昨年の同じ場所の写真です。昨年は参道に沿って飲食物を販売する屋台が並んでいましたが、今年はきれいに無くなっています。飲食するとマスクを外すことなり、コロナに感染する恐れがあるからです。
このため、参拝者は拝殿前で参拝した後、御神籤やお守りを購入したなら特に立ち寄る場所も無く、そのまま帰宅することになります。境内や参道で参拝者が集まることなく、例年のような賑やかさは見かけられませんでした。しかし、初詣の本来の目的は、神社に参拝して一年の健康と幸せを祈るのですから、これで良いのかもしれません。
それにしても災難なのは、屋台を出店するテキ屋の方達ではないでしょうか。昨年末の酉の市でも神社への出店は禁止され、正月三が日も出店が禁止され、一年間の稼ぎ時に営業が出来なくなっています。売上が減少したのではなく、売上が無くなったのですから大変なことです。業者の方は誠に御愁傷様なことです。
写真11
写真12
屋台と同じように、参道の南側で営業していたみやげ物屋のコンテナーが無くなっていました。写真12は昨年の元日に撮影したものです。以前、このみやげ物屋は休息所の中で営業していたのですが、休息所の立替えに伴い追い出されるようにしてコンテナーで仮の営業を続けていました。しかし、遂に廃業となってコンテナーは撤去されたようです。このみやげ物屋には、日の丸の鉢巻きとか、菊の紋章を印刷したTシャツなどの街では入手できないレアな商品を販売していて、マニアには人気があったようです。
写真13
現在、神社で営業を続けているみやげ物屋は駐車場側にある建物だけとなりました。この建物の中には、数社のみやげ物屋が入居しているのですが、いつまで続くのか問題となります。建物は老朽化しており、相当危なくなってきています。神社とみやげ物屋との間でどのような契約があるか不明ですが、遅かれ早かれ撤去されるのは目に見えています。
反対側にあった休憩所は建て直され、ガラス張りの近代的な建物に変わっています。そして、建て直された休息所は神社の直営となり、販売しているみやげ物もそれなりのセンスのある商品を選別しています。ここでは旧態依然としたみやげ物の販売を続けていて、あまり好ましい運営ではありません。神社としては、この木造の建物は目障りであり、早く解体して直営にしたいのが本音なのでしょう。