真田幸光の経済、東アジア情報
「日本の地域観光について」
真田幸光氏(愛知淑徳大学教授)
日本のGDPに占める観光サービス業の比率は大雑把に言うと、10%前後です。
その10%前後の産業を支える為に、GO TOキャンペーンなどを政策展開もされていきました。
当然関係者とその周辺の方々には大変有効な政策であり、私もそれをもちろん認めています。
しかし、内外の一部からは、
「2021年の東京五輪開催ありき、の視点から、外国人関係者、観光客に対する旅行サービスを提供できるホテルなどの旅行関係施設を倒産させてはならないと言う視点からも、GDPの10%しかない分野に国費を重点配分している」
といった見方もあります。
政策展開とは本当に難しいものであり、
「国民を100%満足させる政策などない」
という視点からすれば、こうした批判などを気にしていては政策遂行などできません。
従って、この点についての議論をここで申しあげるつもりはありません。
こうした中、私が今日、一言申しあげたいのは、そうした観光業界にあって、
「自力再生で頑張ろう」
と立ち上がる地域・地方の観光振興の動きが出てきていることを、
「良いお話」
としてご紹介したいと思います。
大手研究機関や観光業界関係者の生の声などを総合すると、
1.旅行の質は量から質へと大きく変化している
2.新型コロナウイルス感染拡大を受けて、好むと好まざるとにかかわらず、暮らし方・働き方が変化している
3.地域を軸にした地域振興の動きが地方発で、自力で出てきている
4.リアル観光の再開までの間、オンライン旅行などが広がり、これを基にした地域と旅行者のつながりが見られ、リアル観光に繋がっている
といった報告がなされ、例えば、愛知県知多半島から渡る小島となる日間賀島などは、
「新型コロナウイルス対策を万全に行っている」
という実績を基に、地域の高価な食材など使い、客室も豪華にしながら、接客も丁寧にして、おもてなしをするということを前面に出し、他地域に観光に行こうとしていた、しかし、新型コロナウイルスでなかなか観光に行けない、でも、
「旅行をとにかくしたい。」
と熱望する観光客たちを上手に取り込んで、今、頑張っていらっしゃいます。
時代の変化を先読みし、その延長線上で、現存の経営資源を使い、なるべく追加コストをかけずに顧客ニーズを掴むと言う、よいモデルがこうした事例にも見られると思います。
国や地方政府などを期待せずに、
「先ずは自力再生で頑張る」
と言うスタンスが大切であり、そうした上で、行政の支援がくれば、
「みっけもんだ!!」
といったスタンスで生き残ることが私たち庶民の再生可能なサステイナビリティのモデルと感じます。
如何でしょうか?
真田幸光————————————————————
1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。1984年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支 店等を経て、2002年より、愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション学部教授。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メン バー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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