小池浩二氏の [継栄の軸足] シリーズ (58)
【経営の技術 全4回】
第4回目「規律重視経営」
小池浩二氏(マイスター・コンサルタンツ(株)代表取締役)
■2種類のルール
規律とは仕事をやりやすくするための共通したルールと基準である。
これを企業活動で考えてみると、社員の考え方・意識を形成させる一部であり、会社の判断・行動の在り方を左右する要因ものである。
ルールには大きく2種類ある。
その一つはスタンダードルールであり、もう一つはローカルルールである。
スタンダードルールは関係する全てが遵守しなければならないルールであり、代表的ものは法令である。
ローカルルールは関係する中でも、ある特定者が遵守しなければならないルールであり、代表的なものは決まり事であり、暗黙の了解である。
ルールの中でもスタンダードルールを遵守しないモラル破りが横行しているから厄介である。
昨今は「多様化、高度化した内容がスタンダードルール」になっている。
この点が中小企業に及ぼしている影響は非常に大きい。しかも厄介なことに大手企業だろうが、中小企業だろうが、「多様化、高度化のスタンダードルール」で求められる必要機能・レベルは同等になってきている点が悩ましい。代表的なものが個人情報保護、環境対応問題である。
いかに業績を上げるか、資金繰りをどうするか、人の確保をどうするか等の現実テーマに加え、多様化、高度化のスタンダードルール対応もある。
経営レベルを益々上げざるを得ないことばかりである。この状況下でもモラルの維持は必要である。そのためには自浄作用しかないと考える。
■規律遵守のためには
職場の規律は集団活動に秩序と統一性をもたらすためにある。
わかりやすく、はっきりした規律・規定・基準を設定し、誰にでもわかるようにしないといけない。
そして、まず、職場規律を大事とする考え・姿勢がないといけない。つまり、経営者・幹部が常に規律に従った態度・行動をしなければならない。
次に職場規律を社員に周知徹底させることである。規律の存在は知っているが、なぜこのような規律になったのか? その背景・理由を知らないと規律は風化しやすい。
質問されたとき・規律が乱れ始めたときは、必ずその背景・理由から説明しないと「できていないからダメ」だけでは、意味がない。そして違反行動に対してはその場で、厳しく注意をすることである。
その場で指摘するから、効果がある。これを叱るという。これができる会社は規律ある職場ができる。例えば遅刻しても何も言われなければ、遅刻してもよいと周りの人間も思う。そうすると職場の規律はすぐに乱れる。
幾年か前にモラル破りで叩かれたある会社が策定した従業員モラルに関する基本方針の一部をご紹介する。
・従業員心構え
「○○の従業員は、企業人である前に一人の人間として道徳に反し、人を傷つけたり、騙したり、迷惑をかけるような行為は行いません。弱者を保護し、困っている人を援助し、自分だけよければ良いという考え方ではなく、他人様の幸せも視野に入れ行動致します」
・法律、法令遵守
「○○の従業員は、○○の従業員だという前に、法治国家である集団社会の一員だという自覚を持ち、例えプライベートな時間帯であっても、法律遵守は絶対であり、○○従業員として、法律・法令に背くような行為は絶対に行わないように致します」
世界のホテルでサービス内容のトップとして君臨するのがザ・リッツ・カールトン・カンパニーである。このホテルは1983年、米国アトランタで誕生した新しい会社であるが、世界37の「ザ・リッツ・カールトン」は、多くの利用者を魅了している。
そのためには、様々な工夫がなされているが、やっていることの本質は非常に中小企業向けの施策である。
クレドと呼ばれる理念、実現のための具体的な行動指針をラミネート加工のカードに印刷し、全世界に37あるリッツ・カールトンの全社員が携行している。折りたたむと名刺サイズである。具体的な行動指針は何種類かあるが、全社で共有する”ゴールデン・スタンダード”と位置付けられている。
ゴールデン・スタンダードを実践するためのザ・リッツ・カールトン・ベーシックが20項目ある。日本風にいうなら、「考え方・行動の基準」である。
幾つかご紹介する。
「妥協のない清潔さを保つのは、従業員一人一人の役目です」
「職場にいる時も出た時もホテルの大使であるという意識を持ちましょう。いつも肯定的な話し方をするよう、心がけます。何か気になることがあれば、それを解決できる人に伝えましょう」
とある。
具体的なわかりやすい言葉で述べられている。そして泥臭いのが毎朝世界中のリッツ・カールトンでこれを唱和していることである。
昨今の中小企業はこの泥臭さが少なくなっている。前述している経営理念による組織の軸足づくりで説明しているが、作成する経営理念・行動の原点を名刺サイズに印刷し、毎朝朝礼で唱和すればよい。
唱和とは「声を出すだけ」ではない。「声に出しながら、確認し、考える」ことである。確認とは声に出した内容を自分自身がどのように取り組んだのかを考えることである。この行動を1年200日繰り返せば、強い集団になる。
ご参考にしてください。
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筆者 小池浩二氏が【中小企業に必要な経営の技術】の概論を動画で説明しています。
こちらからどうぞ → http://bit.ly/2NFrWHm
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