髭講師の研修日誌(68)
「対面研修だからこその面白さ」
<売上げアップの秘訣マーケティングセミナー実施から>
澤田良雄氏((株)HOPE代表取締役)
アフターコロナ禍、どう新たな流れに乗るか、いやどう新たな流れをつくるか! 新年度に向けて企業戦略を固めている昨今である。
その基本はどう顧客創造するかに他ならない。そのためには市場に向けてどう手を打つか、そこにマーケテイングが重要視される。
今般 地元経済団体の役どころとしてセミナーを企画、実施に携わった。勿論、対面形式セミナーとして「1日で分かる実務に基づくのマーケテイング入門」と銘打っての開催である。このコロナ渦で、ましてや土曜日の1日研修であるから、会員企業からの集客は難しいとの懸念事項を踏まえての実施である。
しかし、研修はタイミングが必要。それはニーズ性が高いからこそ受講マインドも高く、実効性も高まるこのストリー性があるからだ。ちなみに実効とは研修後に言動を変えた活躍ぶりに変わることである。
集客活動には市広報誌に掲載、会員、所属団体への案内などに尽力し、受講者を20人確保できた。関係者からの「良く、集まりましたね」との言葉がは嬉しい。
ご存じの通り、平常でも経済団体主催セミナーの集客は難しい。ましてやこの条件(コロナ禍・休日・1日)での20人の数字は異例である。期待通り、受講者の意気込みは高く、研修態度の見事さで充実した研修となり、しかも余韻の残る講習となった。
今回は、ポストコロナに向けてどういう手を打つか、改めて今、研修の実施から確認できる「顧客創造のマーケテイングの実践」と、併せて人と人が直に影響し合い実効を期す「受講者満足の対面型研修の良さ」について考察してみよう。
◆マーケテイングの基本事項についての確認
担当講師は中小企業診断士・社労士のK氏。マーケテイングを専門分野とし、経営診断、経営改善等の指導実績も高く、現在も企業経営幹部として経営実践者(商品開発・販売等)でもある。だからこそ論理を実証した指導力は抜群である。
K氏は、「マーケティングとは、顧客、依頼人、パートナー、社会全体にとって、価値ある提供物を、創造し、伝達、配達、交換するための活動であり、一連の制度、そしてプロセスである」と定義づけられる。
即ち、お客様の求める価値を提供して対価を頂く企業活動で、売れる仕組み作り、しかも売れ続ける施策を考え抜くことであるとし、その取り組みに向けて、何を売るか?それは、
①商品 ②サービス であり ③トップはじめ社員自身の持つ人間力
の三要素であると説く。
そして、マーケティングについての基本認識として3C・4Pに着目して具体的に取り組むことであるとした。確認してみよう。
①3Cとは
● Company <自社>・商品、技術、サービス、人材、組識、歴史…の強み・弱みを客観的に押さえる!
● Customer <お客様>・常にお客様の立場に立つこと・お客様の要望を自社の商品、サービスで満たす!
● Competitor <ライバル会社>・常に情報収集を怠らず、自分の足で情報収集する、・5感マーケテイング(視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚)を使う!
であり、どのように効果的な具体的取り組む事項を編み出し、実践するか、である。
②4Pとは、意味合いと・具体的な実践策
〇 Product <商品>・他社商品との「差別化」を常に意識する。これには自社ブランドもある。・「切り口」を変えて、差別化を考えよう。これにはパッケージ、サービス、スピード、おまけ、接客などがある。
〇 Price <価格>・「数」たくさんでなく、「粗利」たくさん! ・大企業は、低価格戦略、中小企業は、高価格戦略が基本! ・価格が高くても買って頂けるような「付加価値」や「サービス」をつける! ・値上げは値下げの10倍難しい、このことを心得よ! と提起した。
〇 Place <流通経路> ・どこに売るか、どこで売るか、事の次第で最適な方法を!
〇 Promotion <販売促進> ・チラシ、口コミ、ポイントカード、ホームページ,DM…など ・地域ネットワークからの「口コミ戦略」が鉄板! ・ディズニーランドに行ってみよう、ヒントが必ずある!
とわかりやすく解説された。
そして、以上の確認を踏まえて、ハズキルーペの事例、自身の取り組んだマスク事業を4Pで分析し、理解を身近なものとした。更に、受講者各社に落とし込みマーケテイングの<オリジナル企画書>を策定、作成したオリジナル企画書に基づいて<販売シュミレーション>をシナリオ化して、受講者間での販売場面のロールプレイング(役割演技)で実演演習へと進めた。まさに、対面研修だからこそなせる知行一致の良さである。
◆対面研修だからこその面白さ
企画、実施に際してはK氏と自由意見を交わし、内容、進め方を策定し、小生がサブとして携わった。特例としてランチタイムを利用して、受講者のグループ編成による触れ合いミーテイングを催した。
想い近く、楽しく雑談を交えた他社の情報収集や自社PRは互いに見識を広め、地域での人脈形成の一助となったことは言うまでもない。従って、会場に一段の安心感と醸し出されるほのぼの感は以後の研修条件をより良くすることは察しの通りである。
改めて、今般の研修から掴み出した対面研修の利点を確認してみるとつぎの7点である。まさに、顧客満足を生み出すマーケテイング理論が少なからず実践され、より豊かな研修づくりに生きていることが確認できる。
①講義の効果性の向上
受講者との親和感を抱いての対話型講義を生かして、語りかけ、問いかけ、応答対応が最適に施せ、講師、受講者が一体となった状況が形成される。まさにライブ的環境での学び合いであり、講義を聴く楽しみの気概が乗り、「なぜ、どうして」の訊く心境が次に向けた聴き力を高揚し、「ああそうか」「なるほど」と適切な理解、納得へと深まる。ここから「自分も試してみよう」との行動マインドを喚起することに他ならない。
②五感活用での指導が体得を結ぶ
言葉での伝えに、パワーポイントを活用し、しかも、映像、実物を見せる、聴かせる、触らせる、そして利用体験を加えて体感するいわば五感マーケティングの学習が可能。ここから正しい理解と実感が得られ共感が沸き、行動化に移る。今回はK氏が相当な準備を整え、自社製作のマスクを受講者に提供もした。
③受講者間の異の特性による刺激交換が生きる
異の特性とは、業界、商品、企業規模、職責、地域性、年齢、デジタル化の強み弱い…であり、この条件を生かした機会づくりの組入れに工夫を凝らす。それには、演習時、各自の企業活動への落とし込み、その作成内容を他受講者に紹介、是々非々での感想、アドバイスを頂く演習を織り込んだ。
他受講者は、市場、顧客目線での視点であるから貴重な機会である。だからこそ、各自が日常と違った視点で活躍状態を診断でき、それは、新たな気づきを生み、今後のより良き活動のヒントとなる。
④受講者個々への支援示唆の施し
全体への講義で生じる受講者個々の不足事項については、演習時に見える基本事項の理解不足点の発見即支援、活用ヘの創意の迷いには的確に示唆が可能。勿論、各自から質問、求めに応じた対応も最適に施せるこの利点が貴重である。
このためには、受講者数の配慮は欠かせない。今回は小生が講師サブとして受講者と講師間の繋ぎ役を果たした。
⑤地域での企業活動に人脈が広がる
受講者には、
・個人事業で椎茸生産販売をする人、農産物を生産販売されている人、「ならば今後コラボで販売できますね」、
・部屋を賃貸をされている人、住まいのインテリアデザイナーの人「ならば、新たな方が部屋を借りるときには協力し合いましょう」
・広報をもっとしたいと考えている人、地域で三代にわたって広報に関する企画、印刷、設備の整えを事業としている人「ならば今後相談されたら良いですね」
・薬膳料理を提供するお店の人、玄米食を提供する喫茶店を志す人「ならば共同で店舗展開も良いですね」
・クラウドファンディングで新商品を生み出し販売実績のある人、次はどんな商品が良い?「ならば、今回グループメンバーとなったお仲間が社外企画アイデアマンとして協力したら良いね」
…受講者同士の出会いによる縁づくりが今後の企業パートナーに発展する楽しみがあるのも人同士が直に介するからである。
勿論、引き合わせ役は、小生が買って出る。
⑥講師のキャラクターが直に伝播する
キャラクターとは、実績、指導専門力の広さ、深さに加えて人間力がもたらす影響力である。そこには、研修への真摯な取組みとしての準備、場対応での受講者ヘの寄添いの指導、支援スタンス、そして、行動変化を換気させる知恵力の活きた働きかけである。
K氏の特筆すべき今回の施しでは、修了証書の授与である。それは、各自毎に名を入れ、全ての人が最優秀者として評し、受講者一人一人に読上げ、手渡しする。受領する受講者の表情が思わずほころぶ。すかさず仲間からの大きな拍手。受講前にこの状況を誰が予想しただろうか。サプライズを起こす人間力は見事である。
そして、「今後、関わる人には、セミナーで最優秀賞を取りました、と話すと良い。それだけ自身の評価が高まり自ずと商品評価も高まります」。今、研修内容の確認への結ぶ。K氏の今後へ縁づくりがここでも形成される。
終了後、会場には受講者同士が自然に接し合い、共に学び合った興奮の余韻が良い。是非、新たな流れをつくり、また流れに乗り、企業の進展を肘タッチで祈念し合った。
⑦コロナ感染防止に皆で実践する協力関係が絆をつくる
感染しない、させないは実施の鉄則である。従って、最善の対策を講じる。グループワークでもアクリル板をテーブルに十字に立て、マスクをしての話のやりとである。声は聞き取りにくい、ならばどうする、ゆっくり話す、記入した内容を見せる、しっかりと聞く、聞き返す等々工夫を凝らしての意思疎通ヘの取組みが次第に生まれる。
受講者特性は様々だからこそ、この場面での相当の心配りが必要であり、協力する実践も欠かせない。まさにおもてなしの心が生きた意思疎通の実践といえる。コロナ禍だからこそ自発的に成しうる受講者間の一体感づくりである。
現在、オンライン、リモート、Zoomの活用による敢えて集合しなくても実施できる研修が新たな流れであるとの見識も多い。しかしながら、集合により人と人が直に交わし合うからこそ、実効を生む対面型研修も軽視できない。
どちらが良いかでなく研修実施条件(目的、人数、時間、会場条件受講者の特性…)にきちんと対応させ、ベストマッチングによる実施が望ましいことは周知の通りである。
当記がその確認の一助とし、併せて、ポストコロナ禍の企業活動における実践策のヒントとしてお役立て頂ければ幸いである。
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東京生まれ。中央大学卒業。現セイコーインスツルメンツ㈱に勤務。製造ライン、社員教育、総務マネージャーを歴任後、㈱井浦コミュニケーションセンター専 務理事を経て、ビジネス教育の㈱HOPEを設立。現在、企業教育コンサルタントとして、各企業、官公庁、行政、団体で社員研修講師として広く活躍。指導 キャリアを活かした独自開発の実践的、具体的、効果重視の講義、トレーニング法にて、情熱あふれる温かみと厳しさを兼ね備えた指導力が定評。
http://www.hope-s.com/