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【経営基盤の視点 全4回】-①「身の丈を伸ばす経営」(小池浩二)

小池浩二氏の [継栄の軸足] シリーズ (63)
【経営基盤の視点 全4回】
第1回目「身の丈を伸ばす経営」

小池浩二氏(マイスター・コンサルタンツ(株)代表取締役)

●我が身の丈

多くの中小企業は会社の土壌が整備されていないのに、成長ばかり志向するから身の丈合わずの経営になる。

「身の丈」と表現すると、後ろ向きな印象を受け止められがちだが、そうではない。私が考える身の丈とは、まず「我が身の丈」を自分が考えることである。

生まれてきた背景、育った環境、人との出会い等で経営者の事業観・企業観・労働観が決まる。そして企業の目指す姿もこの経営者観で形成させる。この経営者観から会社の将来構想が決められる。

会社の将来構想は意志であり、魂である。その中身は当然会社によって違う。肝心なことは経営者が法人という生き物に意志や魂を吹き込んでいるかである。

吹き込まないと身の丈は縮む。規模的成長を望むならそれに見合う経営方法を実践すればよい。小さくとも利益率の高い会社を目指すならそれに見合う経営技術を構築すればよい。つまり「身の丈経営」とは経営者の企業観を形にすることである。

言い換えれば、他人は、他社は関係ない。自分が、自社が何をしたいのかである。比較基準が常に「自分・自社軸」である。この自分・自社軸がなく、身の丈経営といっても、衰退するだけである。身の丈は伸びもするし、縮みもする。会社の将来構想を考え、主張・展開するから道が開ける。そして倒産しない条件を如何につくり上げるかである。

●守れば天国の「目標原則」と崩すと地獄の「現実原則」

経営には守れば天国の「目標原則」と崩すと地獄の「現実原則」がある。

目標原則とは「これができれば経営は楽になる」原則で、現実原則とは「絶対に外してはいけない」原則である。借入金には短期と長期がある。「運転資金を短期借入金で賄う」ことは目標原則である。

資金繰りの円滑な会社は、「短く借りる短期」のがほうが良い。反面、資金繰りに問題のある会社は「長く借りる長期」のほうが良い。毎月の返済金額を削減することにより、資金のバランス化を第一に考える。人間の体と同じで会社にも守らねばバランスを崩す計数指標はある。

借入金に関する目標原則は、
①支払利息は営業利益の1/3以内に押えること
②借入金は月商の3カ月以内に押えること
③借入金は総資産の30%以下に押えること
である。

会社によっては無借金経営の会社もあるし、借入金が総資産の50%を超えている会社もある。会社に急激な変化があるときは必ず「激痛を伴う副作用」が来る。
特にメーカーで工場建設等の設備投資をすると「体のバランス」が崩れる。

要は借入金の目標原則を押え、入る資金の目測を間違えないことである。その確信がなければ借入金の目標原則を守ることである。これは経営者の決断である。経営のバランスをみる現実原則として固定長期適合比率がある。

経営の原則として自己資本で固定資産を賄うとされている。しかしこの原則は非常に厳しい。その補助指標として固定長期適合比率があり、固定資産が自己資本と固定負債の合計により賄われているかをみる指標で、長期の支払能力があるかもみる。100%以内が目安である。これが崩れると会社は必ず傾く。

つまり、固定資産の資金を運転資金から賄うから、当然ランニング資金が詰まり、おかしくなる。この現実原則は絶対に超えてはならない。

かつて、トヨタは何度も潰れかけた。その教訓から生まれたのがカンバン方式、ジャストインタイムである。資金がないから、他人資金を入れる。入れるのはある意味、条件が合えば簡単だろう。しかし、この感覚は麻薬になるし、続けると金融機関・金融会社・知人友人・消費者金融とだんだん他人資金の色が悪くなるし、私的紙幣の手形に依存するようになる。

現実原則として死守していただきたい指標は、
①年商80%以上の長短借入金
②売上に対する金利負担率が10%以上
③支払手形の決済は売上高の40%以内
④手元資金の翌月繰越残は20%以上
⑤1回の投資基準は月商の2ヶ月以内
である。

現実原則のモノサシを持って、自助努力で解決しないと地獄が待っている。

●身の丈合わずの経営

前述の現実原則は重要であるが、倒産しない条件とは、
①私的紙幣の手形を切らない、もしくは発行比率を下げる
②貢献する商品・顧客の構成を集中させない
③経営者・特定社員に依存しすぎない
④メインバンクを持ち、常にコミュニケーションを図る
⑤社会モラル・基準から逸脱した致命的事故を起こさない
⑥金を借りすぎない
⑦設備投資を急激にしない
⑧常に羅針盤を持ち、数値を確認する
⑨経営者は致命的な公私混同はしない
⑩経営者はあきらめない
である。
このような条件づくりをしながら、どのような会社をつくりたいかである。

安定性があるから、成長性があると前述している。安定性も条件作りもないのに、伸ばそうとするから「身の丈合わずの経営」になる。

昨今、夢を語る社長がすっかり減ってしまい、それと共に社員の欲がなくなり、会社の成長がストップしている。安定性を高める条件をつくり、身の丈を伸ばす経営をすすめましょう。

 

継栄の軸足

継栄の軸足

 
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■ 小池浩二氏 (マイスター・コンサルタンツ(株)代表取締役)
実践に基づいた「中小企業の基礎打ち屋」として、中小企業成長戦略のシステムづくりを研究。これまで500社以上の中小企業経営に関わり、経営診断、経営顧問、研修等を実践。多くの経営者から「中小企業の特性と痛みをよく理解した内容」と熱烈な支持を得ている。
  http://www.m-a-n.biz/ 
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