選挙は民主主義の要。歪められれば、国の根幹が揺らいでしまう。一昨年の参院選で、河合克行元法相(控訴中)と妻の案里元参議院議員(有罪確定)が広島選挙区の地方政治家などに2900万円をばらまいた買収事件で、東京地検特捜部はカネを受け取った100人全員を不起訴とし、捜査を終結させた。「罪に問うかどうか、金額や回数で選別することは困難」という理屈だが、元国会議員秘書は300万円、県議は200万円、元首長も150万円を受け取り、50万円以上を受領した者は10数人にのぼっていたという。問題は、買収金額の大きさだけではない。民主主義と法を守るべき立場の地方政治家40人が現金を受け取ったという事実は重い。資金の流れも不透明であり、特捜部の結論は到底納得できるものではない。
思い出すのは、志布志事件である。平成15年の鹿児島県議選で、志布志町(当時)の選挙区は定数3。無投票のはずだったが、地元の会社社長が4人目として立候補し、激しい選挙戦に突入した。初挑戦の社長は当選したものの、鹿児島県警は投開票後、社長夫妻が住民11人に総額191万円を渡したとされる買収事件の捜査に着手し、夫妻を含めて13人が公職選挙法違反で起訴された。だが、朝日新聞の記者が疑念を抱き、警察の虚構、でっち上げが次々に明るみになった。
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