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「国際金融市場の潮目の変化?」(真田幸光)

真田幸光の経済、東アジア情報
「国際金融市場の潮目の変化?」

真田幸光氏(愛知淑徳大学教授)

国際金融市場の潮目が変わってきているかと思います。

そして、トレンドとしては、
「不穏な方向」
にあると思います。

基本的には、
「先行き不透明感」
が漂い、
「方向感のない市場動向」
であり、
「変動の大きい、ボラティリティの高い市場動向」
にあることに変わりがないとは思いますが、
「不安感」
が募り、
「不穏な方向」
に向かい始めたと思われます。

このように、
「潮目の変化」
が見られ始めた背景には、世界的に見られる、
(1) 新型コロナウイルスの先行き不透明感
をベースとして、
(2)半導体不足による世界的な自動車産業などの低迷
(3)SDG’s推進を背景としているにも拘らずLNG価格高騰、不足とそれによる原油価格の高騰と言う矛盾、景気回復と原油需要の回復、それに対する原油生産増加見込みが弱いことによる原油価格の高騰
(4)原油を中心とする化石エネルギー不足、化石エネルギー価格の高騰とそれに伴う中国本土の電力不足
(5)そもそもは新型コロナウイルスの感染拡大を背景として、米国での荷役労働者の感染拡大、荷役業務の停滞から始まったコンテナの滞留とコンテナ不足、コンテナ価格の上昇による物流コストの増加傾向
(6)先進国を中心とする製造業分野などの人手不足
(7)新型コロナウイルス感染拡大対策として出された財政出動を伴う景気対策を背景とした財政不安の拡大と先進国を中心とする長期市場金利の上昇傾向の兆候
(8)同じく財政出動を伴う景気対策により市場に流された大量の資金により、通貨の価値の下落リスクが背後にありながらも、先進国通貨が相対的には安定しており、過剰資金が金融市場に流れ出し、その資金が株式市場、債券市場、一部不動産市場、更に仮想通貨市場などにも流れ込み、金融市場を支えてきたが、先進国通貨を中心に通貨そのものに対する不信感が芽生えはじめたことによる金融市場の動揺傾向
(9)中国本土恒大集団の債務不履行リスクの高まりと米国債に対する不安などを背景とした金融市場に対する不信感の拡大
(10)米国のBNPLに代表される、借金をして消費をする、更には借金をして投資をする動きもある中、金利上昇傾向が見られはじめ、それに伴う、各国国内の債務不履行リスクが高まり、各国国内金融市場に対する不信感の拡大
などがここにきて一気に顕在化しつつあり、これに食料価格の高騰も加わり、これらを象徴的に表現する、
「インフレリスク」
更には、最近では、不況下での物価上昇と言う、
「スタグフレーションリスク」
まで指摘され、国際金融市場には潮目の変化が見られようとしています。

そして、
「不安定の中の安定状態」
から転じ、
(1)株式市場では、良い材料は買い、悪い材料は売り、と言う動きが強まり、更に株価は乱高下する可能性が出てきている。
(2)市場不安が強まる中、為替市場では相対的に強い基軸通貨、そして米国金利の上昇を背景に米ドル買いの傾向が見られ、他通貨に対する米ドル高傾向が見られ始めており、先進国通貨同士の通貨安定が崩れる可能性が出てきている。
日本にとっては円安が起こり、輸入インフレや国際金融社会の日本に対する信頼の低下に繋がる危険性も出てきている。
(3)原油市場では、価格変動はあってもWTI基準で1バーレル60~70米ドル水準に収束してくると見られてきたものが、当面は原油高の90~100米ドルに向かうのではないかと見られはじめている。
(4)国債の不安などを背景として、各国の長期市場金利が上昇傾向を示し、また、インフレ懸念を背景として、短期市場金利も上昇する可能性が出てきている。
(5)究極の投資先とも言われる金GOLDの価格は、市場が落ち着けばもう一段の下落傾向には転じると見られているが、金融市場の不安によって再び更に上昇する可能性が出てきている。
と言ったことになりましょうか。

年末に向けて、
「国際金融市場の潮目の変化」
に留意していきたいと思います。

 

真田幸光————————————————————
清話会1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。1984年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支 店等を経て、2002年より、愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション学部教授。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メン バー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している。
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